3)知らせ
若いお人やない。冬の旅、それも二度目や。うちは心配しとった。梢に並んでいた硬い冬芽から、わずかに淡い緑がのぞき始める頃、ウーゴ様が、戻ってきはった。
「お帰りなさいませ」
お元気そうなお姿に、うちは安心した。
「コンスタンサのお出迎えか。ありがたいねぇ」
ウーゴ様は、うちに沢山の勉強を教えてくれはった先生や。
「お寒かったでしょう。執務室でフィデリア様がお待ちです」
少し待てば春になるのに、急ぐからと冬の間に出発しはったから心配やった。
「ライも」
小さく続けたうちの言葉に、ウーゴ様が微笑んだ。
「コンスタンサ、君は、すっかり立派な辺境伯家の侍女になったねぇ」
「ありがとうございます。お出迎えですから」
うちは、ウーゴ様の前では、ライを相手にまぁまぁお転婆を披露しとったからね。
「そうか。今すぐにでもどこかの御令嬢になれそうだね」
フィデリア様は、そのためにうちに沢山のことを教えてくれはったし、うちもそのために頑張った。
「まぁ、使い分けてくれたほうが、私もうれしいね。ずっと今のままでは、私も寂しい気がするよ」
「まぁ、ほな、今からでも」
二人で笑っとったら、ライがやってきた。
『お元気にお戻りで何よりです』
「君も元気なようで安心した」
ウーゴ様のことは、ライも大好きやもんね。
『フィデリア様がお待ちです』
「では急ごう。お待たせするわけにはいかないからね」
三人で歩くと、あの王宮の書庫で管理官やったウーゴ様に勉強を教えてもらった時のようや。
『どうした』
「ちょっと懐かしい」
ライが首を傾げる。
「ほら、夏になる前、書庫で一緒に」
うちの言葉にライが頷く。
「そう。一緒に勉強しとったときみたいでしょ」
あの頃、座学も沢山あったけど、書庫にある資料を色々探してあるきまわったりもした。せっかくだからと、保管されている沢山の肖像画から、歴史に登場してくる人たちを探して回った。
ライがうちのまだ短い黒髪に触れる。
「しつこいねぇもう」
やっと肩を越えるところまで伸びたけど、未だにライは気に入らんらしい。
「伸びてきてるからえぇやないの」
うちの言葉にライが鼻を鳴らした。本当にしつこい。
うちは肩に届いてもいないライの髪を引っ張った。仕返しや。王宮の書庫に管理官様の付き人としてやってきとったとき、ライも金髪の鬘を被るために髪を切った。
『伸びるからいいだろう』
何やろう。うちが言ってるのと同じことを言われただけやのに、妙に腹が立った。
人払いされた執務室やのに。ウーゴ様は声を潜めた。
「私が思っていたよりも、長く練られた犯罪でした」
うちは思わず身を乗り出した。
「君のおかげだ。コンスタンサ」
うち、何をしたやろうか。首を傾げたうちに、ウーゴ様が微笑んだ。
「君の言葉で、ちょっと思いついたことがあってね」
うち何か言うたやろうか。




