表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/158

3)知らせ

 若いお人やない。冬の旅、それも二度目や。うちは心配しとった。梢に並んでいた硬い冬芽から、わずかに淡い緑がのぞき始める頃、ウーゴ様が、戻ってきはった。


「お帰りなさいませ」

お元気そうなお姿に、うちは安心した。

「コンスタンサのお出迎えか。ありがたいねぇ」


ウーゴ様は、うちに沢山の勉強を教えてくれはった先生や。

「お寒かったでしょう。執務室でフィデリア様がお待ちです」

少し待てば春になるのに、急ぐからと冬の間に出発しはったから心配やった。


「ライも」

小さく続けたうちの言葉に、ウーゴ様が微笑んだ。

「コンスタンサ、君は、すっかり立派な辺境伯家の侍女になったねぇ」

「ありがとうございます。お出迎えですから」

うちは、ウーゴ様の前では、ライを相手にまぁまぁお転婆を披露しとったからね。

「そうか。今すぐにでもどこかの御令嬢になれそうだね」

フィデリア様は、そのためにうちに沢山のことを教えてくれはったし、うちもそのために頑張った。


「まぁ、使い分けてくれたほうが、私もうれしいね。ずっと今のままでは、私も寂しい気がするよ」

「まぁ、ほな、今からでも」

二人で笑っとったら、ライがやってきた。


『お元気にお戻りで何よりです』

「君も元気なようで安心した」

ウーゴ様のことは、ライも大好きやもんね。

『フィデリア様がお待ちです』

「では急ごう。お待たせするわけにはいかないからね」


 三人で歩くと、あの王宮の書庫で管理官やったウーゴ様に勉強を教えてもらった時のようや。

『どうした』

「ちょっと懐かしい」

ライが首を傾げる。


「ほら、夏になる前、書庫で一緒に」

うちの言葉にライが頷く。

「そう。一緒に勉強しとったときみたいでしょ」

あの頃、座学も沢山あったけど、書庫にある資料を色々探してあるきまわったりもした。せっかくだからと、保管されている沢山の肖像画から、歴史に登場してくる人たちを探して回った。


 ライがうちのまだ短い黒髪に触れる。

「しつこいねぇもう」

やっと肩を越えるところまで伸びたけど、未だにライは気に入らんらしい。

「伸びてきてるからえぇやないの」

うちの言葉にライが鼻を鳴らした。本当にしつこい。


 うちは肩に届いてもいないライの髪を引っ張った。仕返しや。王宮の書庫に管理官様の付き人としてやってきとったとき、ライも金髪のかつらを被るために髪を切った。

『伸びるからいいだろう』

何やろう。うちが言ってるのと同じことを言われただけやのに、妙に腹が立った。


 人払いされた執務室やのに。ウーゴ様は声を潜めた。

「私が思っていたよりも、長く練られた犯罪でした」

うちは思わず身を乗り出した。

「君のおかげだ。コンスタンサ」

うち、何をしたやろうか。首を傾げたうちに、ウーゴ様が微笑んだ。

「君の言葉で、ちょっと思いついたことがあってね」

うち何か言うたやろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ