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7)ウーゴ様のご期待

 いずれ春になる。春は旅の季節や。人が動きものが動き事態が動く。フィデリア様は何を考えておられるんやろうか。ライはどうなるんやろうか。うちはどうしよう。


 うちは旅芸人や。どこの誰とも知れぬ根無し草、風の吹くまま気が向くまま、野に生きて野垂れ死ぬ。大地母神様の御許に魂が還る事ができるように、弔って祈ってくれるのは仲間だけ。だから仲間は家族やというのが座長の口癖やけど。


 フィデリア様は、うちをエスメラルダ様のお傍にとお考えや。うちは派閥もなにも関係ない。エスメラルダ様のお友達として、いつか大地母神様の御許に還るフィデリア様の代わりにエスメラルダ様の傍におってくれたら嬉しいとフィデリア様がおっしゃってくださる。


 うちみたいな、旅芸人にそうまで仰ってくださる方なんてそうそういはらへん。うちはどうしよう。どうしたらえぇのかわからん。


 座長に相談しようにも、何処とも知れぬ旅の空や。


 やることやってから、考えんか。やることやらんと考えても無駄やというのがクレト爺ちゃんの口癖や。うちは出来ることをするしかない。


 座長が王都に戻ってくるより先に、ウーゴ様が戻っていらした。何やら収穫はあったらしい。

『まだ説明できない』

ライはそう言って謝ってくれたけど、うちはそのほうがいい。まつりごとをあまりに知りすぎるのは怖い。


 雪に音が吸い込まれていく静かな部屋で、戻ってきたウーゴ様を先生に、うちはライと机を並べて勉強した。ライはスレイとアスと一緒にフィデリア様のお客様のお相手をすることが増えとるから、うち一人の時も多い。


「私は君に期待している。教えて楽しい生徒というのは、なかなか居ないものだ」

そうおっしゃっていただけるのが嬉しい。

「フィデリア様は、君の人生だから君が決めることだとお考えだ。私もそのとおりだとは思うが。私も若くない。ついつい君のような子が、この先国を治める私の若い教え子たちを支えてくれたらと思うのだよ」

ウーゴ様の言葉に、うちはなにも言えへんかった。どう返事したものか、迷っとる間に、またウーゴ様は旅立ちはった。


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