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6)本物の証明と嘘の証明

 品定めのお客様が帰ったあと、緊張感をほぐすためのお茶の時間はどんどん長くなっとる。本当ほんまに疲れるねん。たぁっぷり休憩せんと、動かれへんのよ。


 寛ぐときに何やけど、うちには気になる大問題があった。目の前におられる方々ご自身に関わることや。

「実は生きてました。ただいま。私が第一王子シルベストレですと、王宮に帰っても、偽者だと言われませんか」

「まぁな」

単刀直入なうちの質問に、スレイは顔を顰めた。

「白々しいが、王国で私は行方不明だか死亡したかと言われていたことなど知らなかったことにして、堂々と王宮に戻るのが一番手っ取り早いはずだ。とは思うが、こればかりはな」


 スレイの眉間の皺は深い。

「それこそ、罪人どもが私を偽物だと糾弾するかもしれん。母に似ている私だが、皇国の同年代の皇子たちも私と似ている。皇国が私を殺し、皇子が私に成り代わったなどと言いかねん。あの罪人どもは、王権を手に入れるためならば、殺人も厭わない。性根が腐った連中だ。皇国も、私の偽物を使ってでも王国を手に入れたいはずだなどと、愚かなことを考えかねない。その必要などないのに」

スレイの言う通りや。皇国はそんな面倒なことせんでも、王国を呑み込める。


 子爵家の令嬢パメラが、王妃パメラ陛下になった経緯を考えると、まぁ、そういうことを言いそうやな。そのどさくさで、子爵家から伯爵家の当主になって、宰相に収まっとる王妃パメラ陛下の父親もうるさそうや。仕事せぇへんくせに。


「色々と証拠が足りない」

証拠を探しにどこかに行きはったウーゴ様は、まだお戻りでない。


「今手元にあるものは限られます。仕立ての記録からは、パメラの腹は、プリニオと結婚する前から育っていたことがわかります。ペドロが二人が婚前にむつみ合ったことで生まれた不義の子であることはわかりますが、その程度では。パメラとプリニオとそれぞれの不倫相手の身許も分かっておりますから、互いの不貞を問うこともできますけれど。不十分です」

関係者全員を死罪にするには、というフィデリア様のお声が聞こえた気がした。


 スレイとライが一番欲しい、二人のお母様である皇国の黒真珠の君を殺害したという証拠もない。


「金髪のかつらはあるが、これではな。髪色をごまかしていたことを、国王を欺いた罪と出来ないこともないが、言いがかりだ」

スレイがかつらをつつく。

「他にもかつらを使っている者はいるでしょうしね」

アスの言う通りや。


『金髪をやたらと持て囃すのは、自らが金髪でないことを隠すためでしょうか』

ライの手が、肩口にまだ届いていないうちの黒髪に触れる。ライめ。まだうちが髪の毛切ったのを恨めしく思っとるんか。しつこい男は嫌われるで。


「金髪を持て囃して、金髪の鬘で隠せば、自分の髪色を誤魔化せると考えておられるということ? 」

変な話やけど、ライはそうちゃうかと思ってるらしい。

「金髪を褒めそやしていた王妃が、金髪ではないと知れただけで、大騒ぎになりそうなものだが」

スレイが人の悪い顔になった。

「部屋に忍びこんで、かつらを盗むか」

『出来ますが、危険です』

即座にライが、お兄さんの暴走を止めた。


「出来るの」

うちはそれが気になった。

『通路はいろいろある』

自慢げに笑うライは、やっぱり王族で、王様にはならへんけど、特別な立場の人なんや。

「通路がいろいろって」

ライの言葉を引き取って続けようとしたうちに、スレイの笑顔が飛び込んできた。アスも笑っとる。

「よかったな」

スレイがライの頭を乱暴に撫でた。アスも何故かそれに加わっとる。何やろうか。ライも別に嫌そうではない。


 仲が良いね。でっかい子どもたちは。そんな場合ではないけど、この三人とエスメラルダ様がお小さい頃ってきっと可愛かったはずや。おもわずうちは想像してしまった。


『どうしたの』

ライに気付かれてしまった。

「三人とも、よく似ていらっしゃいますね」

無難なことを言っとくほうがえぇよね。立派かどうかはおいといて、成人しとるこの三人に、お小さい頃は可愛かったでしょうねなんて言うたら、面倒くさそうや。


「そうか」

「そうでしょうか」

スレイとアスの声が重なる。ライは無言やけど。眉間の皺とか、話し方とか身振り手振りとか、色々似ていて、仲がえぇんやなって思う。


「あら、コンスタンサの言う通りね」

楽しそうなフィデリア様に、三人が揃ってお互いに顔を見合わせた。


「どうかお三方とも、今後何があろうともこの王国のため、今を忘れずにお過ごしくださいませ」

「承知した」

「無論です」

『約束しよう』

旅芸人のうちの何処か芝居がかった台詞に、三人がそれぞれ応じてくれた。


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