2)美貌の侍女エスメラルダの悲劇2
侍女仲間が面白がってくれるのはえぇねんけどな。
「美貌の侍女よ。美貌の侍女。どんな美女かしら」
「雀斑も消し飛ぶくらいの美人だったのよ」
ほどほどの顔立ちの侍女エスメラルダをつくりだした侍女仲間は、今度は絶世の美女エスメラルダを作り出すことにしたんよ。
お使いとかお休みで町にいったとき、私は辺境伯様のお屋敷で働いているのだけれど、突然おらんようになってしまった侍女エスメラルダが美人で可愛くてとか、言いふらして回っているそうや。
「薄幸の美人のお話っていいわ。吟遊詩人の歌を聞いて、私、おもわず貰い泣きしてしまったの」
侍女エスメラルダに化けとったうちは、今元気であなたの目の前におりますけど。
「まぁ、そうだったの。私も聞いてみたいわ。今どのあたりで歌っているのかしら」
それ、やり過ぎやとうちが言う隙はなかった。
こうなってくると、金髪の鬘をかぶった雀斑のエスメラルダの話ではなくなってくる。金髪の美しい娘エスメラルダの話や。絶世の美女として話が広がってくれたら、万が一にもうちを連想する人がおらんくなるやろうから、ありがたいけど。
うちは自分の顔くらい知っとる。美貌のなんて口が避けても言わへんわ。カンデラリア様とエスメラルダ様の顔を拝見してから、うちは自分の顔貌に謙虚に生きることにしてん。胸もなぁ。大きいほうやけど、エスメラルダ様のほうが立派やったし。
結局うちは人並みや。残念ながら。若いうちに分かってよかったわ。自惚れは身を滅ぼすからね。阿婆擦れから殺人とか血塗れ王妃と呼び名が変わった人がえぇ見本や。
噂があまりに広まると、だんだんとどうでも良くなってくる。物事は楽しまんと損や。
「美貌の侍女エスメラルダって聞いて、みんなどんな美女想像するんやろう」
ライは声もなく大笑いして、なにも言うてくれへんかった。ちょっと失礼や。




