6)座長の心の姫君
座長は、阿婆擦れ王妃パメラ陛下が大嫌いや。ついでにいうと国王プリニオ陛下も嫌いや。
座長が愛する心の姫君は、皇国の黒真珠の君フロレンティナ様ただお一人や。
「まぁ、あれはあれでえぇんちゃうか」
クレト爺ちゃんの言うとおりやと思う。座長の心の姫君は、身分も違うし、大地母神様の御許にお還りなった魂や。永遠に叶わぬ片思いをしとる座長やけど。本人の心の中のことは、本人が決めたらえぇ。というわけで、座長は永遠に独り者や。座長に惚れてくれる人はおるんやけどね。座長の心の姫君は黒真珠の君やと聞くと、みんな諦めはるねん。
黒真珠の君に叶わぬ恋をして愛を捧げる座長に率いられとる一座は、全員皇国の黒真珠の君贔屓や。当然うちもその一人や。阿婆擦れ王妃パメラ陛下を、幼馴染の君とかいうてちやほやしとる連中とは違うんよ。
うちが化けとった侍女エスメラルダだけやなくて、こんだけ殺人が揃ったんや。お若くして亡くなられた皇国の黒真珠の君、スレイとライのお母様のフロレンティナ様はもしかして、もしかしてやけど、殺されたんちゃうかと思っとる人は多い。うちも含めた皇国の黒真珠の君贔屓の考え方は偏っとるけど。
スレイが言った以上、証拠はあるんやろう。
王宮で侍女をしていた子爵家の令嬢パメラと王太子プリニオ殿下の再会は、幼馴染の君を称える芝居で見せ場の一つや。うちの一座は絶対にせえへん芝居や。
「奥方の旦那を寝取った侍女が、奥方が若くして死んだ後、旦那と結婚して幸せになりましたなんて、胸糞悪い。大地母神様の教えを何やと思っとるの」
トニアの言う通りや。
子爵家の令嬢パメラが、侍女としてお仕えしとったのは、当時王太子妃殿下やった皇国の黒真珠の君フロレンティナ様や。だから噂は絶対に消えへん。先の国王陛下が無くなって、王太子プリニオ殿下が国王になった頃を見計らって、子爵家の令嬢パメラは、自分が王妃になるために、黒真珠の君を殺した。阿婆擦れ王妃は人殺し。常に何処かで囁かれとったことやけど。
スレイが、第一王子シルベストレ殿下のお言葉となると噂では済まされへん。
「証拠はあるのですか」
うちの言葉にスレイが肩を竦めた。
「それはこれから。ウーゴが証拠の在り処の心当たりを調べに行った。最近来ないだろう」
あらあら。これからか。スレイが言う通りウーゴ様を、うちはここ暫くお見かけしとらんのは、そういう訳やったんや。
「お若くないのに」
御老体に無理させて、若者三人なにやっとるんや。もうほとんど冬やで。
『兄も私も顔が顔だ。アスも、辺境伯殿に顔がよく似ている』
「確かにお三方とも顔が顔ですから。変な人に捕まったら、高く売れそうですしね」
うちの言葉に、三人が固まった。尊いお生まれでも、意味がわかることに、うちはちょっと驚いた。
「そっちじゃない。身許が知れるという意味だ!」
真っ赤になって怒るスレイが面白くて、うちは笑ってしまった。
「冗談です」
ライと目があった。
『もしかして、今更初対面の復讐かい』
「今更そんな初対面の復讐なんてしませんよ。あれから随分になりますし」
はぐらかしたうちに、ライとアスが笑う。
スレイは恐れ多くも第一王子殿下や。阿呆なこと言うて誂えるのは今だけや。有効活用せんとね。
第一王子シルベストレ殿下が、国王シルベストレ陛下になったら、今みたいなことは絶対に口に出来へんやろう。ライもなにか要職について、アスも辺境伯様を継いだら、三人は今のように仲良くできるやろうか。
でっかい子供みたいな三人も、エスメラルダ様とアスのお嫁さんも、ずっと仲良くあって欲しい。うちは大地母神様にお祈りをした。今は全員が仲良くても。それぞれ背負うものが出来たら変わってしまう。沢山ある悲しい芝居みたいになりませんように。ずっと仲良く一緒でありますように。うちはうちのお祈りが大地母神様に届くように一生懸命お祈りした。




