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6)舞台2

 空から舞い降りたばかりの雪のような純白の装束に、同じ色の布を頭から被って顔を覆った神官様たちがいらっしゃった。世俗を離れた神殿にお住まいの神官様たちが、世俗に降りてこられるときの出で立ちや。地縁血縁関係ないということの証として、顔を隠しはる。顔見たら、知り合いってわかることあるから、隠すんよ。


 フィデリア様が神官様たちに恭しくお辞儀をなさった。うちもフィデリア様を真似てお辞儀をした。


 神官様の正式な装束に身を包んではる大地母神様の神殿の神官様たちのお言葉や。神官様が、大地母神様の御許に届いたとおっしゃったということは、もう(くつがえ)らへんということや。すごいわ。これが権謀術数なんかな。フィデリア様、格好えぇわ。うちが貴族なら、絶対にフィデリア様のお仲間になるわ。いうてもこれは、阿呆ぼんペドロ殿下が、権謀術数で負ける以前に、自分の失言で墓穴にまりはっただけか。あっちとのお仲間は嫌やな。


「やはり婚約をしてくれなどと、泣きついてくるなよ」

阿呆ぼんペドロ殿下が喚いてはるけど、絶対ないわ。エスメラルダ様の思い通りにせっかくなってんから。あんたもそうやろ。煩い口はそろそろ閉じて。


「エスメラルダ、貴様、あとで後悔するなよ」

あとからするから後悔や。先にできるか。座長やったら言うやろな。そもそも人違いや。まだわからんのか。


 婚約の解消は、誰かさんが嫌がってはったから、フィデリア様が受け入れはっただけやんか。そもそも辺境伯様御一家は全員、エスメラルダ様と第三ペドロ殿下との婚約は嫌やと言うてはった。そやけど、立場上、相手は王家やからな。断れんかっただけや。王家の誰かから断ってもらわんとどうにもならんかったんよ。今日解決したわ。よかった。婚約解消は、辺境伯様ご一家にお世話になったお礼の贈り物になりそうや。


 この会場で、エスメルダ様との婚約が嫌やというたのは、阿呆ぼんペドロ殿下や。今日の夜会を主催しはった伯爵様の顔に泥を塗るようなことしはったのも阿呆ぼんペドロ殿下や。婚約も王家の一員である阿呆ぼんペドロ殿下の責任で解消となるってことで決まりや。この場にいはらへんエスメラルダ様は関係ないし、うちは何もしとらんし。フィデリア様は、先方のお願いを受け入れただけやし。


 うちが何か出来るとしたら、婚約の解消を決定的にすることかな。学がない孤児やけど、芝居の台本は頭に入ってる。こういう時は、より多くの人に共感してもらったほうの勝ちや。座長、沢山稽古をしといてくれてありがとう。今がその成果の見せ時や。


 うちは役者や。やってやる。


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