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1)湖畔

 美しい湖畔にある瀟洒しょうしゃなお屋敷って芝居の舞台にもあって憧れとったけど。湿気と虫が凄まじいわ。風がある時はえぇけど、風がないときは空気がまとわりついてきて重苦しい。朝晩の涼しさがあるから避暑地になるんやろうけど。昼間はとにかく湿っぽくって虫だらけや。


 一座で旅した山地のほうが過ごしやすかった。ヤギ飼いが夏の間暮らす村に泊めてもらったけど、人よりもヤギが沢山おった。こんなところまで芝居を見せにきてくれたお礼やいうて、ヤギのチーズとか沢山くれた。乳搾りもして、チーズ作るのも手伝って、楽しかったし美味しかったなぁ。うち、あぁいう場所を想像しとったのに。


 あまりに湿っぽくて、ちょっと以上にがっかりや。もうちょっと山の上やったら違うんやろうけど。阿婆擦あばずれとののしられようとも、息子に子爵家出身と指摘されて怒鳴る狭量きょうりょうな御方であっても、不貞ふていしとっても王妃パメラ陛下は、恐れ多くも王妃様や。


 山道なんか自分で登るわけがない。逆に変な気を起こされて、もっと山の上まで行きたい言われたら厄介や。自分で山道歩くわけがない尊い御方や。誰かが担ぐんか、輿こしに乗るんか、馬に乗るんか知らんけど。想像するだけで面倒やから、今の場所でもまぁえぇか。うちは朝晩を楽しむことにした。


 うちは朝霧に沈む湖をぼんやり眺めとった。綺麗なとこよ。鳥のさえずりが聞こえる。朝のこの涼しさが一日続いたら過ごしやすいねんけどな。

「ルアナ様、おはようございます」

「おはようございます。エスメラルダ様」

ルアナ様はあの日、お茶会で倒れた子や。誰と同室でもよかったけど、顔見知りの子でうちに親近感を持ってくれとる子やからよかった。


「美しい鳥のさえずりが聞こえたものですから」

さっきまで、うちが口笛で鳥のさえすりを真似しとったのは内緒や。

「そうね。エスメラルダ様。貴方の言う通り本当に綺麗だわ」

ルアナ様は子爵家の四女や。流石に娘が四人ともなると持参金が難しいからって、王宮で働いて身を立てるようにと御両親に言われとるそうや。貴族も本当ほんまに色々やなと思う。子爵家ご出身の化粧が濃い御方に比べて、なんと健気な御令嬢でまともなご両親やろうと思ったけど、黙っとくことにした。


「さぁ、支度をしましょう」

幸いなことに、ルアナはうちと同じく金髪のかつらで地毛の栗毛を隠しとった。

「私の父は、若い頃から髪の毛が薄いの。幸いなことに今はすっかり綺麗な輝く頭よ。だから私の髪色を疑う人はいないわ」

倒れたときの気の弱そうな雰囲気から一転、豪快なルアナ様に、うちも笑ってしまった。朝から一緒に雀斑そばかすを描いて、うちらの支度は出来上がりや。仲良くするのは部屋の中だけと二人で決めた。女の嫉妬は怖いからねぇ。仲良くしとって目つけられたら嫌やし。


 今日も代わり映えのしない船遊びや。うちは川で水遊びするほうが好きや。川が近い村に住んでる子たちは、どこが安全でどこが危ないかよく知っとる。岩場から淵に飛び込んだりして本当に楽しかった。またあの村にも行きたいなぁ。


 座長たちは今頃、どこを旅しとるんやろうか。


 うちは、阿婆擦れ王妃パメラ陛下と一緒に船に乗せられて、ただ無意味に湖に漂っとった。釣りしたいな。随分前に教えてもらって、一匹しか釣れへんかったけど、楽しかった。あの湖にも行きたいなぁ。


 一座のみんなは、今どこにいるんやろうか。


 うちがぼんやり仲間の事を考えとったときや。船が大きく揺れた。


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