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5)王妃パメラ陛下と第三王子ペドロ殿下

 阿呆ぼん第三王子ペドロ殿下がおった。あの夜会以来初めてや。先方は今のうちをみても、わからんやろうけど。


 そういえば、フィデリア様は鉱山を取り返しはったんやろうか。


「おや、ペドロ。何の用ですか」

何の用って、母親に会いに来たとちゃうんか。用事がなくても会うやろ。母親と息子やで。それに、阿婆擦あばずれと罵られながら王妃パメラ陛下と言われるのは、王子を産んだからや。


 阿呆ぼん第三王子ペドロ殿下は、未だに指名されとらんけど、事実上の王太子で、一応はこのあと国王陛下になる人や。大切にしたらえぇのに。それに自分の子供やのに。自分の子供って可愛いんとちゃうの。イサンドロ様もカンデラリア様も、エスメラルダ様をそれはそれは大切にしてはった。


 辺境伯様ご一家は本当に仲が良い家族で、ライも家族の一員として愛されとった。

『イサンドロは、兄と私にとっては父にも等しい人だ。常に私たちを気にかけてくれた。イサンドロの妻カンデラリアも、兄と私をアキレスとエスメラルダの兄弟のように扱ってくれた。大叔母のフィデリアは実の祖母のようだった』

ライが懐かしそうに語ってくれた子供時代を思い出す。


 父親の国王プリニオ陛下と後妻の王妃パメラ陛下とは、ほとんど会うこともなかったライが少し可哀想やったけど。


 これはもしかせんでも、阿呆ぼん第三王子ペドロ殿下って可哀想なんと違うか。カンデラリア様とライのほうが、よっぽど仲良かったで。


「母上、私の婚約者を選ぶ舞踏会はいつ開かれるのですか。宰相に聞いても、のらりくらりと言い逃れをするばかり。母上、宰相も実の娘のあなたからのお願いであれば耳も傾けるでしょう。母上から宰相に命じてください」

うちは自分の耳を疑った。


 あの偽乳にせちち女、イレーネ様かエレーヌ様か忘れたけど、あれはどこに行ったんや。まさか綺麗さっぱり始末したんかな。逃げたんならえぇけど。

「なりません」

うちの驚きを他所に、母と息子の会話が進んでいく。

「お前はせいぜい反省しなさい。お前が婚約の解消など愚かなことを仕出かしたお陰で、支払った賠償金の金額を忘れましたか。おまけにあの女、鉱山まで寄越せなどと」


 良かった。阿呆ぼん第三王子ペドロ殿下と辺境伯様の御令嬢エスメラルダ様の婚約はきちんと解消されたんや。賠償は金の話は決着して、鉱山はこれからなんやろうけど。辺境伯様御一家の勝利やな。良かった。流石はフィデリア様や。


「おまけにお前は、どうせその舞踏会にイラーナとか何とか言うあの小娘を連れてきて、婚約者とするくせに。わかっていますよ。母は」

あっそうそう。イラーナ様やったわ、イラーナ様。あの偽乳にせちち女は生きてるんか。良かったわ。それにしても逃げとらんのか。第三王子殿下の婚約解消の原因となった責任とらされて殺されるかもしれへんのに。何で逃げとらんのやろ。ようわからん。


「当然ではないですか。イラーナは美しく優しい娘です」

偽乳にせちちが美しいんか、婚約者がいる男に媚びを売る女が優しい娘なんか、うちは知らん。価値観は人それぞれや。


 下半身がアレやという噂の阿呆ぼんペドロ殿下やけど。女をとっかえひっかえしとるわけやないってことにちょっと感心した。噂はあてにならんもんやね。


「イラーナは伯爵家の娘ですよ。身分としては問題ないでしょう」

「お黙り! 」

実の息子からの嘲笑混じりの発言に、子爵家出身のパメラ陛下が叫んだ。


 うちはフィデリア様に、王妃パメラ陛下の実家は今は伯爵家やけど、もともとは子爵家やと教わった。国王プリニオ陛下と結婚するには身分が足らんということで伯爵家になった家やと言うてはった。実の息子にそこを指摘されるって母親としてはどういう気持なんやろう。指摘しとるのは、そういう無茶の先に生まれた一人息子や。指摘しとる息子は、何を考えとるんやろう。


 うち、これ聞いとってえぇんやろうか。こっそり周りに目をやったら、うちら使用人だけやなくて、お茶会のお客様方も含め、全員が彫刻になっとる。そうやろうね。そうやろうね。消えたいよね。それか他でやってくれと思うよね。


 誰か何とかしてくれへんかなと思っとった時や。うちの隣におった子が倒れた。



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