表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/158

4)王妃パメラ陛下のお仕事

 貴族の女性方が着飾ってチヤホヤされるだけのお人形やと思ったら間違いや。というのをうちはフィデリア様のお側におって学んだ。


 お孫様のエスメラルダ様と阿呆ぼん第三王子ペドロ殿下との婚約が解消されて、辺境伯爵家は今、色々と政治的に難しいお立場になってはる。当主である御子息の辺境伯イサンドロ様が国境地帯から離れられない今、フィデリア様は王都で色々な貴族の方々をお茶会に招き、招かれ、お手紙をやり取りしてはった。


 具体的に何をしてはるかは知らんよ。お茶会でのお話で聞いたことは、絶対に誰にも言うたらあかんお約束やから。お屋敷で働いている人もうちに教えることはない。お屋敷で働いとる人が、フィデリア様を尊敬するのは、当然やと思う。


 人と人を比べてあれこれ言うのは、あまりお行儀の良いことではないんやろうけど。そもそも旅芸人のうちは、誰かに何か言えるようなご立派な人とは違うし。


 それでも色々言いたくなるわけよ。うちみたいな旅芸人でも、王妃パメラ陛下は。いつまでたっても阿婆擦れ王妃と言われるのは、本人のせいやと思う。他人の悪口言うよりも、やることあるやん。


 書庫には色々な書類がある。先代国王陛下のお妃様はもう亡くなられたけれど、各地の慰問とか、災害があったらそこに支援を募ったりとか、人を派遣したりとか、いろいろしてはった。


 一時期、亡くなられた黒真珠の君フロレンティナ様と並んで書類に署名してはって、そのあとにまた、署名はお一人に戻って、そのうちに書類から署名は消える。先代国王妃陛下の最後の署名はほんとうに掠れるような薄い文字で、最期の最期までお仕事をなさっておられたんやと思うと、うちはなんとも言えない気持ちになった。


 うちは孤児や。孤児院におったから知らん間に助けてもらっとったはずや。せめてもの感謝の気持ちをと思って、大地母神様に先代国王陛下だけやなくてお妃様のことをお祈りした。


 今は、誰の署名もない書類が孤児院を支えとる。結構な金額で、あちこちに割り振られて、それがどう使われたか孤児院からも報告書が届いとる。きちんと管理されとる。それなのに誰が決めたかの署名がない。これは誰がやっとるんやろう。署名がないから阿婆擦れ王妃パメラ陛下は関わっとらん。国王プリニオ陛下でもないし、阿呆ぼんペドロ殿下でもないし。


 署名をせぇへん誰かと、署名のない書類を通用させてくれている誰かのおかげで、昔のうちと同じ孤児が餓死せんとおれるんや。うちは誰かわからん人たちへの感謝の気持ちもこめて、大地母神様にお祈りをした。


 今日も今日とて、何のためにやっとるんかわからんお茶会や。暑くなってきとるから敵わんわ。そりゃあ、阿婆擦れ王妃パメラ陛下と、お客様方は、大きな日傘の影におるからえぇよ。うちらは無駄にお日様に照らされて暑いわ。


 早く終われとうちが念じとったときや。

「母上、お茶会でしたか」

聞き覚えのある声の聞こえてきた方向をうちは盗み見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ