表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/158

3)うちのお仕事

 王妃パメラ陛下は、思っていたのと違う小娘が来て面倒くさかったんやろうね。うちの扱いを丸投げした。丸投げされた人も、困ったんやろうなと思う。


 うちは書庫の掃除係や。毎日張り切ってお仕事しとるよ。王妃パメラ陛下付きの上級侍女ではない。まぁ、うちも王妃パメラ陛下をチヤホヤなんてしたくないからちょうどえぇわ。


 洗濯みたいな下女の仕事をさせられることもない。金髪やからね。かつらやけど。


 書庫には感動したわ。とんでもなく広い建物で、三階建てで地下もある。大きな本棚にぎっしり本や資料が詰まってる。王国の歴史が詰まっている場所や。埃だらけで大変やけど、うち一人やから、気ままにできて楽ちんや。


 沢山の本や資料があって勉強にもなる。掃除はちゃんとしてるから、少々勉強してもえぇんよ。といっても誰も確認にもおへんから、掃除しとらんでも、誰にもわからんけど。今までの人は、手を抜いとったんやろうねぇ。あちこちに、伝統やなくて埃が積もり積もっとったわ。


 好き勝手に出来て楽しいわ。そやけど王国としてはえぇんやろうか。書庫って大切なものと違うんかな。国の記録とか沢山あるのに。監視とかいらんのかな。誰が管理しとるんやろうか。人がおらんと適当にしとったら、どこになにがあるかもわからんくなるやろうに。


 書庫は静寂が支配しとる。うちの息遣いすら音になる静かな場所で、沢山の文字が眠ってる。このままずっと眠ったままは可哀想や。うちは皇国と王国との交渉の記録を見つけたから少しずつ読むことにした。難しいから本当に少しずつやけど。丁寧に保管してくれはった過去の人たちへの感謝を、うちは大地母神様にお祈りした。生きてはる人には幸せを、もう亡くなってはる人には魂の安らぎを。生きとるうちに出来るのはそれくらいや。


 先王陛下も先の辺境伯様も亡くなられた方々やけど、記録の中であれこれと活躍してはるのを見とると、今もそこに居はる気がする。色々苦労して皇国との関係改善を成し遂げていかはる過程を、うちは記録を読みながら追体験した。国と国との間で取り決めをしていくって、本当に凄いことや。歴史の先生が教えてくれはった過去の出来事が、目の前の紙の上で繰り広げられとるのは感動やった。手に汗握る事件も色々合った。


 これを芝居にしたら、きっと面白いと思うねん。


 王宮の中がどうなっとるかってのを覗き見するつもりで王宮にきたけど、うちはそんなことはすっかり忘れとった。掃除をして、書庫の隅っこで書類を読む毎日や。書類の中だけでうちは昔の王国を旅した。皇国にも行った。隣国との折衝では頭を悩ませた。うちが生まれる前の出来事が今のうちが生きる今日に繋がっとると思うと不思議や。


 残念ながら阿呆ぼんペドロ殿下の母親、王妃パメラ陛下はうちのことをしっかり覚えとって、時々呼び出された。お茶会とかお茶会とかお茶会の手伝いよ。


 辺境伯様のお屋敷で、フィデリア様のお茶会のお手伝いを、ちょっとだけさせてもろうたけど。あれやね、王宮のお茶会は金はかかっとるんやろうけど、品性があれや。フィデリア様はさすが生まれながら王族でいらっしゃったんやと思う。


 王宮で開催されとるお茶会の会話の内容が、惚れた腫れたと人の悪口ばかりって、みっともないと思うねんけど。旅の途中であちこちの村で泊めてもらうねんけど。夕涼みしながら喋っとる村の人たちのほうが、もうちょっと考えとるで。


 おまけに毎回来るのは同じ人ばかりや。お気に入りだけ呼んどるんやろうね。国全体とか考えとらんのやろな。自分だけが楽しかったらえぇと思っとるんやろうけど。王家に嫁いだ以上、国と一蓮托生いちれんたくしょうやのに。


 まぁ、茶会の最中に、黙って突っ立っとる侍女が考えても仕方ないわ。うちはただただ時が過ぎるのを待っとった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ