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1)王妃パメラ陛下

 さぁ、どうなるやろ。うちは王妃パメラ陛下の前におった。


 今日のうちは、うちと辺境伯様にお仕えしている侍女仲間の力作よ。性悪女しょうわるおんながエスメラルダ様をいじめてやろうって計画しとったのを、ぶち壊すってみんな張り切っとったわ。阿婆擦あばずれ王妃パメラ陛下をがっかりさせてやったと思うと痛快やわ。


「あなたがエスメラルダですか。よく来てくれました」

阿婆擦あばずれ王妃パメラ陛下。うちが嫌いな呼び方やと幼馴染の君。第一王子が行方不明となり、第二王子が神官となり、第三王子でありながら実質上の王太子と言われるペドロ殿下の母親。


 いずれ国母となる王妃様が、阿婆擦あばずれと陰口を叩かれる王家ってあまり外聞良くないわ。


 まぁ、阿呆ぼんペドロ殿下も可哀想といえば可哀想な人か。親は選ばれへん。お父ちゃんは皇国から嫁いでこられた王妃様の喪中に再婚した不実な男と陰口を叩かれる人で。お母ちゃんは結婚早々に腹が目立つようになり、半年くらいで息子を産んだ阿婆擦あばずれ女と嘲笑われる人で。両親のただれた関係の証拠として生まれるってどんな気持ちやろ。


 親がおっても羨ましいとは、うちは思わへんな。


 喪が開けてから結婚して子作りしたら、誰にも何も言われへんかったのに。国王プリニオ陛下も、当時はまだ若かったはずや。若いのに、そういうことを誰にも教えてもらえへんかったか、せっかく教えてもらっても無視したんか、どっちかやろうけど。ライが言うとおり、王宮は色々とあかんのちゃうか。


 うちは頭に浮かんできた真剣なライの顔を頭から追い出した。あかん。今は、この眼の前の女をなんとかせんとならんねん。


 うちは目の前の王妃パメラ陛下を失礼にならん程度に観察した。


 化粧が濃いんかな。ある程度は美人なはずなんよ。それやのに何かいびつというか、不自然や。


 第一に、偽乳にせちちや。阿呆ぼんペドロ殿下の好みは、この母親の影響なんかな。胸元が大きく開いて谷間を見せつけるようなドレスやけど。寄せてあげて詰め物しとる。偽乳にせちちの前にある手が握っとるのは、フィデリア様からの紹介状や。握り潰してないのは、大したもんやな。うちが来たことは想定外やったはずやけど。


 エスメラルダという名前になったうちは、トニアの髪の毛でつくったかつらを被って金髪や。頬には雀斑そばかすが散ってる。侍女仲間があれこれ考えた力作や。


 女同士の情報網って凄いわ。うちら旅芸人も、時々他の一座のこととか噂にするけど。辺境伯様のお屋敷の侍女は、情報通やった。

「黒髪だったら意地悪されるわよ」

「可愛いのもだめよ」

「でも不細工だと、それはそれで厄介よ。性格悪いから、あれこれ難癖つけてくるらしいわ。ほどほどがいいのよ」

「体と顔だけで王妃になった人間の末路って哀れよねぇ」

うちをどういうエスメラルダにするかという話し合いのなかで、聞かされた話にうちは呆れたし、ライはほとんど白目になっとった。


 情報通たちの会話を、うちの目の前のにおる王宮の女主おんなあるじを見ながら思い出しとった。


 王妃の周りは全員金髪の巻き毛や。王国に金髪の巻き毛が多いのは事実やけど。ここまで揃うと異様や。皇国の黒髪だけやなくて、栗毛色が多い国もあるから、金髪以外もこの国には沢山おるのに。


 この人らも、あれこれ難癖つけられへんように気を使ってるんやろうか。大変そうやな。


 じっと静かにしとったら、王妃パメラ陛下はつまらなそうに溜息を吐いた。そうやんね。虐めてやろうと思っとったら違うのが来たんやから。いい気味や。王妃パメラ陛下の手にあるうちの紹介状には、ありきたりなことが書いてあるだけや。


 どういう意地悪を用意しとったか知らんのやけど。あてが外れたからな。がっかりやろ。本当ほんまにいい気味や。フィデリア様に何回も書状を送って、無理やりうちを呼びつけた手前、そう簡単に送り帰すことも出来へんやろうし。どうするんやろ。

「適当に仕事でもさせておきなさい」

「畏まりました」

王妃パメラ陛下の横で、落ち着いた雰囲気の女性がお辞儀をした。賢そうな人やな。丸投げされて大変そうやな。仕えとってしんどくないんかな。上手く立ち回って、色々手にしてはるんかな。


 芝居では、王宮は欲望が渦巻き有象無象がひしめく伏魔殿ふくまでんやけど。王国の王宮はどうなんやろうか。はてさて、この先、うちは何を見せてもらえるんかな。


 怖いのは嫌やけど、他では出来ない体験をさせて下さい。うちは、大地母神様に無茶苦茶なお願いをした。


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