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8)舞踏会

 皇国では式典の締めくくりに舞踏会がある。婚約式のあとも、当然のように舞踏会や。音楽隊の人たちが曲を奏でてくれはって、それにあわせてうちはライと踊った。フィデリア様のお屋敷で練習しとったからね。うちもライも完璧よ。


 ちょっと困った人やったのは、ライやわ。皇国では、最初のダンスは配偶者や家族や婚約者と踊る。その後は、誰と踊っても良いねん。複数回一緒に踊ってえぇのは、配偶者と家族と婚約者だけね。王国も同じやけど。


 舞踏会ではライがうちの手を離さんくて。ライとうちは婚約しとるから、二度三度と一緒に踊ってもえぇねんけどね。


 しびれを切らしたハビエルお祖父様が割り込んできはった。

「嫁にはやるけどな。儂の孫やからな。ライムンドと遊びに来てくれ」

「はい。ハビエルお祖父様もお元気で」


 次にビクトリアノ陛下までやってきはった。

「ライムンドのことは頼んだ。ライムンドと二人でシルベストレを支えてやってくれ。あれは若い」

「はい」

ライとスレイのことを、本当に大切に思ってくれてはるんやなと思うと嬉しい。


 皇太子殿下もいらっしゃった。皆様ライが大好きなんやね。よかった。ただ、これだけ次々来はったら、うちなんかが、人気者やって勘違いされてしまうやん。


 皇太子殿下はスレイにどこか似てはる。跡継ぎって似るんやろうか。

「ライムンドのことは頼んだ。あの子には、可哀想なことをしてしもうた。もうちょっと何かしてやれんかったかと思えてなぁ」

「はい。でも、ライは皇太子殿下のせいやとか思っていませんから、気にしはらへんでも」


 皇太子殿下が気にしはる気持ちもわかるけど。本来神殿は世俗とは無縁のはずやから。ライを殺そうとした連中が非常識だっただけや。

「コンスタンサ、未来の王弟妃殿下、君がそう思わんでも、そう思ってしまうもんや。スレイはこっちで育ててやれたからなぁ。来るときは危ないことはわかっとったから、二人同時の移動はできんかったのも事実や。そやけどな、あの子たちと一緒に連れて来とったらとか、考えてしまう。人間はそういうもんや。まぁ、ライムンドが、そう思っとらんのも、思ってほしくないと思っとることも知っとる。これは私の問題や」

「はい」

優しい人なんやなと思う。いずれビクトリアノ陛下の跡をついで皇帝陛下になりはるお人やから、優しいだけやないんやろうけど。

「頼んだで」

「はい」


 次にうちの前に現れたのは、噂のぬしのライやった。

『何の話をしていたの』

手を取って踊る直前に、ライに見せられた一言にうちは笑いそうになった。踊ったら手が塞がるから、ライが何も言えなくなる。それでも何かを言おうと思うと、この方法なのはわかるけど。ずっと気にしとったんかとおもうと、やっぱり甘えたなライが愛おしい。

「ライをよろしくって、お願いされとってんよ」

目を見開いたライが、嬉しそうに笑った。

「伯父さんたちと、従兄弟やね。ライにとっての」

ライが頷く。

「時々でいいから、元気やよって会いにこようね」

ライがまた頷いた。


 ダンスはそろそろ終盤や、ライが悪戯っぽく笑うと少し手に力をいれた。ちょっと悪戯すきなんよね、ライって。うちはライが意図したとおり、二回、ライの手を支えに回った。もう何曲も踊ったあとやけど、うちはクレト爺ちゃんの弟子やからね。体力あるからまだまだ元気。


 うちらを見てはったんやろうね。あちこちで囁いてはるのが微かに聞こえる。ライがまた笑って、また手に力をいれた。本当に仕方ないねぇライは、悪戯好きで。うちはまた、二回くるくると回る。


 さらに大きなざわめきが広がった。疲れてきて、ゆっくり踊ってる人が多いもんね。


 皇太子殿下が、音楽隊の人になにか囁いたのが見えた。曲がいきなり変わる。舞踏会の終盤に、速度が早い曲に代わって会場がまたざわめいた。皇太子殿下も悪戯好きやね。こっちをみて笑ってはるし。悪戯好きは皇族の血やな。こうなると。


 皇太子殿下が仕掛けた悪戯やということに気づいた人たちが、皇太子殿下とうちらを交互にみて、あれこれ囁いてはる。


 仕方ない皇太子殿下やね。せっかくやから、うちは悪戯に付きうて差し上げることにした。

「ライもライの従兄弟も悪戯好きやね」

ライが微笑む。うちの手をとり踊るライもまだまだ元気や。鍛えとらんと、そろそろ疲れるころやから、踊る人は減っていく。


 広い広い舞踏会会場で、ライとうちは二人で踊った。




幸せいっぱいの二人にお付き合いをいただきありがとうございます。

幕間を明日の7時と8時に予約投稿しております。お楽しみいただけましたら幸いです。

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