表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/158

3)祖父と婚約者3

『伯父上には、もう一度、王国にいらしていただきたいのです』

ライは王弟殿下らしいことを言うた。


「孫娘の結婚式の招待か」

ハビエル様は一生懸命不機嫌そうな雰囲気を作っとるけど。明らかに嬉しそうや。ライもわかったらしくて微笑んどる。


『他にもお願いしたいことがあるのですが』

「何や。引退した年寄りに仕事させる気か。若造が」

ハビエル様は口では怒っとるけど。ライに頼ってもらって嬉しいんとちゃうんかな。緩む口元をなんとかしようとしてはるけど。緩んどるのが丸わかりやで。そんなハビエル様を見るライの目は優しい。

仕方しゃあないやっちゃな」

言うてはるハビエル様も、立派に仕方しゃあないのにね。


「婚約式はこっちでするぞ」

『皇国で生き延びていた説明がつきません』

「生きとったもんは生きとったんや、華々しく帰ればえぇ」

ハビエルが、適当なことを言わはった。ビクトリアノ陛下を、適当な兄貴と言うてはったのに。兄弟は本当ほんまに似るんやな。


「どうせまだ、どうやって生き延びとったことにするんか決めとらんのやろ」

ライが頷いた。


「儂が考えたる。どうや。近々エステバンもこっちにくるからな。こき使ってやるわ」

それは、ハビエルお祖父様が座長に命令するってことやよね。ライが実は生き延びていたという話を、芝居の台本みたいに作れとか何とか。座長が話を作ったら、ハビエル様が考えたとは言われへんと思うんやけど。


 どう言うたもんかと迷ったら、ライがうちの手をそっと握って目を合わせてきた。


 黙っとったほうがえぇってことよね。やっぱり。


 ハビエル様と座長の問題やから、うちが考えても仕方ないな。それにしても久しぶりに聞く座長の名前や。一座のみんなはどうしとるやろうか。


 一座が皇都にくるのがそろそろなんて、うち聞いとらんねんけど。うちの視線に、ハビエル様は全く気づいてはる様子はない。


 ハビエル様の御口元の笑みが、怖いんやけど。目が真剣やねんもん。芝居に出てくる悪役みたいになっとるハビエル様に、ライとうちは顔を見合わせた。流石は皇国皇帝ビクトリアノ陛下の弟君ハビエル殿下、って思えたらえぇけど。目の前で何かを企んどる顔を見せられると、うちらに向けられた顔でないとわかっとっても怖いで。


 うちは別のことを考えることにした。

「一座のみんなは元気かな」

『変わりはないだろう』

「クレト爺ちゃん、きっとお屋敷に泊めてくれって言うやろね」

『クレトが何故』

「クレト爺ちゃんね、ハビエル様を隠して旅しとる間に、ハビエル様の手料理に胃袋掴まれてしもたんよ」

ライが笑う。声のないライの笑い声に、うちも慣れてきた。

「多分やけど、座長も大して文句言わんとハビエル様と旅をするって決めたから。きっと座長もやとおもうねん」


 苦笑したライがかるくうちの唇をつついた。

「なに」

『お祖父様だ』

ライが優しく微笑んでいた。そうや。うち、今朝、ハビエル様の孫になったんや。


「お祖父様」

「そや」

うち、ちょっと恥ずかしかったけど。ハビエルお祖父様が本当に嬉しそうに笑ってくれはって、嬉しかった。


『コンスタンサ、君は今朝、自分が皇族になったことをわかっているかい』

ライの言葉に、うちは驚いた。

「え、だってハビエル様、お祖父様は神官様やから世俗の地位は関係ないって」

「還俗したから、関係あるんや」

『君も皇族になると言ったはずだけど』

「うちが皇族になる言うても、ライと結婚するからと違うの」


 ライが苦笑した。

『大神官ハビエル様は、大神官様を引退と同時に還俗されて、ハビエル皇弟殿下となられた。君は、ハビエル皇帝殿下の孫、コンスタンサ殿下だ』

大神官様を引退しはるだけやと思っとったから。皇族のお血筋でも、俗世の権力とは関わりないままやと思っとったけど。


「この離宮はコンスタンサの家でもあるんや。部屋もちゃんと用意しとる」

いろいろ驚くことばかりやけど、ハビエルお祖父様に御礼を言おうとしたときや。


「お前の部屋はないぞ。ライムンド」

スレイの要らんこと言いは、ハビエルお祖父様に似たんかな。

『客間で結構です』

スレイに鍛えられとるライが、平然と返すから、うち笑ってしまって、御礼を言いそびれたわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ