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2)祖父と婚約者2

 ハビエル様とライに挟まれたうちを見ても、屋敷の使用人たちは平然としとった。皇国の皇宮から派遣されとる使用人ともなると、やっぱりすごいもんやな。


 執務室まで、うち、二人に挟まれたままやってんけど。誰も笑わへん。うちやったら笑ってしまうのに。


 意地の張り合いをしとった男二人は、執務室で腰掛けるなり、真剣になった。

「で、今後やな」

ハビエル様の言葉にライが頷いた。

『死んだことにしていますから。自由に動けたのが幸いでした』

「それで手っ取り早く片付けが出来たわけやな」

『はい。そろそろ生き返りたいのです』

ライの群青の瞳がうちに向いた。


 ハビエル様の目は書類に向いとって、ライの言葉に気づいてない素振りや。大人気ない。ハビエル様はうちを孫娘にしてくれはったから、お祖父ちゃんになったのに。


 大人気ないお祖父ちゃんハビエル様が眺めてはるのは、ライが持ってきた書類や。

「コンスタンサに見せてもえぇな」

ハビエル様の言葉に、ライが頷いた。


 ライが王国から持ってきた書類の中身はなかなかに凄まじかった。先の王妃フロレンティナ陛下の殺害、第一王子シルベストレ殿下の殺害未遂、第二王子ライムンド殿下の殺害あるいは殺害疑い、辺境伯嫡男アキレス様の殺害未遂に関わった人たちが軒並み処分されていた。

「こんなにも、おりはったんやね」

こんなにもとは言うたけど、うちにはこの人数が多いんか少ないんかよくわからんかった。あの初めて参加した夜会で、阿呆ぼんペドロ殿下の側に立っとった人たちの名前も、この一覧の中にあるんやろうか。誰がというのを知るのが怖くて、うちは一人一人の名前をよう確認出来んかった。文字が目の前を流れていくんよ。


 それでも、筆頭にあった名前は見たらわかる。地位を奪われたためやろう。プリニオ、パメラと名が記された夫婦はすでに処刑されとった。あとは怖くてよう見れんかった。

『また後で、順に確認したらいい』

ライは、凍りついてしまったうちの手から、書類を抜き取った。


 王国のまつりごとは、流れを変えた。違う、戻した。スレイが国王シルベストレ陛下となり、先々代の国王陛下が目指した王国と皇国の融和が実現する。両国の融和のために嫁いできはった皇国の黒真珠フロレンティナ様が産んだスレイとライが、先々代の国王陛下の思いを実現すると思うと、うちの気持ちも落ち着いた。世代を越えた融和がようやく実現する。


 王国に送ってもらう約束の肖像画の中で、微笑むフロレンティナ様の膝でお座りするライと隣に立つスレイが大人になったんやと思うと、うちフロレンティナ様でも何でもないのに、胸が熱くなった。


「ある意味、それがお前の釣書やな」

ハビエル様は、ライがうちの手から抜き取った書類を睨みつけてはる。

「仕事が出来るっつうのは大切なことやけどな」

ぶつぶつとまだなにか言いたそうなハビエル様に、ライが微笑んだ。


『我が愛する王弟妃コンスタンサのために、王弟の私が最高の舞台を用意します』

「そんなもん当たり前や」

尊大に振る舞うハビエル様に、ライが仰々しく頭を下げた。意地の張り合いをしながらも、何処かおどけて、振る舞って二人ともうちの気持ちをほぐそうとしてくれてはるんかな。ありがたいことや。うちは幸せ者やな。


 うちは心の中で大地母神様に感謝のお祈りをした。うちが今、幸せなことを報告して、心からの感謝の気持ちをお伝えした。


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