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1)ライ 

 王国の神官様たちがお部屋に消えた後。うちの後ろを護衛の格好をしたライが当然のようについてくる。


 うちが王国におったときのように隣に並んだライをうちは見上げた。

「なんで」

『君が私を置いて行ってしまうから』

王国におらんのと、全部言い切る前に、うちの目の前にライの石板が突きつけられた。ライはうちの手紙を読んでへんのかな。

『私が生き返るのに、君が必要だ』


 思いがけないライの言葉に、うちは首を傾げた。

「なんで」

『神殿で、私の死体が見つかっている』

あの日のことを、うちは思い出した。穴蔵にいたのは、神官だった頃のライの装束を着せられた、誰かわからん人や。

『ハビエル伯父上にお会いしたい』


 確かにライの言う通りやった。あのままやと、あの誰かわからん人は、ライということになってしまう。そやったら、ライはどうやって生き返るんやろうか。

『準備は整っている。ビクトリアノ伯父上の許可もいただいた。あと必要なのは、ハビエル伯父上の許可だけだ』

色々と大袈裟な気もするけど、ライは王国の王弟殿下やし。今の王国の王家は、血縁である皇国の皇族が後ろ盾やから、生き返る時に断りいれるのは、当然といえば当然やな。


『あとで時間をくれ』

「えぇけど」

手紙一つで出ていったことを文句いわれるんかと思ったけど、そうでもなさそうや。うちの返事にライは嬉しそうに笑っとる。久しぶりにみるライの笑顔に、うち安心した。


 なんでここにおるのとか。死んだままになってるなら、今まで何しとったんとか、聞くことは沢山あるけど。なんか色々、どうでも良くなってしまった。ライが元気で、笑顔でよかった。


「来よったか」

ライを見たハビエル様は、面倒くさそうに人払いを命じた。うらめしそうなハビエル様にもライは動じとらんかった。

『また後で』

ライが小脇に抱えていた書類を、意気揚々とハビエル様の机の上に積み上げたのが見えた。


 何のお仕事やろうか。ハビエル様も可哀想に。


 久しぶりに会ったライが、元気で、結局いつも通りのちょこっと飄々としたライのままで、うちは安心した。後でとライに言われたけれど、どんな話なんやろうか。手紙を置いていったけど、黙ってでてきたことをなんて言おう。そもそもライはうちの手紙を読んでくれたんやろうか。いろんなことが気になったけど。


 ハビエル様が来客のお相手をしている間に仕事をまとめて、後で全部ハビエル様に押し付けようと張り切る秘書官様たちをお手伝いしている間に、細かいことは全部どっかに行ってしもうたわ。


 明日到着予定の人たちのご挨拶も練習せんとならんし。難しいんよ。ご挨拶って。

「よーくござったない」

明日到着予定の国から来てはる神官様が、今日のうちの先生や。

「似とるけど、ちょっと違いますなぁ。よーぐござったないですわ」

「よーぐござったない」

「そうそう。それですわ」

本当ほんまに言葉が沢山あることにうちは驚いた。各国から来はった神官様たちが、全員皇国語を喋ってはるのもすごいと思う。


 やっぱり国を代表してはる人たちは違うわ。

「挨拶だけやったら、君が一番知っとるんですよ」

秘書官長様の言葉に、みんなそうやと言うてくれはって、うちはちょっと嬉しかった。


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