遅刻の謎
最近、村尾が遅刻気味である。
やつは時間厳守を誇りにしていた。以前までは「遅刻はせ死刑だ」とまで豪語していたくらいで、遅刻したやつには一日中話しかけないどころか、あちらから来てもしかとするレベルでたちが悪かった。
そんなやつがまさか始業のチャイムと格闘する日が来るとは。俺もジョニーも今では、本物の村尾は監禁されていて、偽物が登校していると勘ぐっている。メガネと態度がデカイ寺尾の意見に関してはあまりにつまらないので割愛するとして、いったい何があったと言うのか。
今日も例に漏れず遅刻しやがった。なあ、いい加減理由教えてくれ。もやもやして仕方がないんだ。
「この秘密は墓場まで持っていくって前にも言っただろうが」
とこんな具合である。あとはガン無視される。俺だけでなくクラスのみんなに対してもこれだからなあ。どうしたものか。
そんなあるのこと、いつものようにつまらない、遅い、声が大きくてうるさいの三拍子の揃った糞授業の最中だった。俺は退屈のあまり、エロいことを考えていた時のことだ。突然寺尾と目が合った。
今までに感じたことのない情熱的な目をしていた。ここだけの話、俺はそっち系に最近目覚めかけている。心臓の鼓動が強く脈打つのを感じる。まさか、お前もなのか、寺尾。
でもなあ、よりにもよって寺尾かと思いにふけそうになりかけた時、寺尾は村尾を一瞥し大きく口を開いて
わ か っ た ぞ 松 尾
と口パクするのを見た。歓喜以上に偏差値20の男に負けた悔しさにしばらく囚われた。せめてなんとか俺も理由を当てなければ…!
………結局放課後まで俺はわからなかった。参ったぜ寺尾。で、どういうのなんだ?
「お前とジョニーの力がいる。あいつを引っ張っていかないといけないからな」
女子のリコーダーをペロペロ舐めていた頃が懐かしいほどシャキッとして村尾が鞄を持ち、教室を出ようとするところを三つの柱で妨げる。当然村尾は迷惑がり、
「答えないから」
と立ち去ろうとする。だがそこは動かざること山の如し。俺たち三本柱(物理)がそうはさせない。さて、ケンカか?と思ったら、寺尾が
「ついてきてもらうぞ」
と言い放った。場所がどうやら関係しているらしい。
………バカだった俺は寺尾を過信していた。あいつがわかったのは「村尾の遅刻理由」ではなく「村尾を吐かせる方法」
だった。それも絶対失敗するのを、だ。
ここで問題。俺たち四人は今どこにいるでしょう?
ん?分からない?ならヒントだ。線香を上げるとこだ…。
「何でここに連れてきた」
村尾がそう聞くのももっともである。寺尾は平然と
「墓場まで持っていくのだろう?ここなら問題ないだろう。さあ、出してもらおうか」
はい、バカー。とんでもないヘマー。縁起でもないことをやろうとしている。もうヤダー。
「あほくさ」
というジョニーの気持ちとここまでシンクロしたのは今後ないだろうと思った。
しかし、寺尾は運を引き寄せる男だった。
場所を移し、軽く寺尾をリンチにしたあとの帰り道のことだった。
「あ、おじちゃん」
と呼ぶ声。その方を向くと幼稚園児くらいの女の子とその母親の姿があった。
そこで俺は思い出した。やつの通り名は「ロリコンの村尾」だったことを。
観念したようで詳しく話してくれた。時々、女の子を仕事で忙しい親に代わって、幼稚園に送っていたらしい。それはしばらく続くみたい。あいつの心は大丈夫か少し心配だ。
もっとも、遅刻王の俺からすれば仲間ができてちょっぴり嬉しかったりするのだが。
最後までお読みいただきありがとうございました。




