表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日、君を殺した暁には  作者: 九六式
欲望の海
1/14

突然の死



 放課後、一緒に帰ろうという幼馴染の誘いを断り、街中でぶらぶらしている時だ。


 目に移ったコミック本に懐かしさを感じ、立ち読みしているとなにやら言い争うような男女の声が。


「離してください……」

「う、うるせぇ……とっとと来い!」


 見れば今まさに男が女子高生を路地裏へと連れ込もうとしている最中だった。


「………はぁ」


 目の前で起こった事を見て見ぬ振りして帰るのは流石に後味が悪い。なにより女子高生の方は同じクラスメイトだから尚更だ。


 別に正義感とかじゃ無い、ただそう思った。


 すでに2人の姿は無くなってしまったが向かった先は分かる。彼女は抵抗していたし、たいした遠くには行っていない。走れば追いつける筈だ。


 ちょっと名残惜しいがコミック本を置いて鞄を肩にかけ、走り出す。こういう時って蹴ったり殴ったりして大丈夫なのだろうか。


 生まれてこのかた喧嘩なんかしてこなかったが、見た感じ相手は運動できるような体型ではなかった。殴り合いになったら負けないだろうが、とか考えていると2人の姿が見えた。


 しかし、何かがおかしい。

 

 男が怯え、彼女の方が覆いかぶさっている。その右手には鋭利なナイフが。


「や、やめ……」

「さようなら」


 振り下ろされるナイフ。それを咄嗟に止める。


「っ、誰」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」

「あ、待ちなさい!………チッ」


 殺す気だった。止めなければ、確実に。それに彼女の殺意はまだ収まっていない。


「君、やってくれたね」

「お、おい待て……何をするつもりだ」

「何をって」


 ズブリ


「こうするつもりよ」


 抵抗する間も無くナイフは腹部に突き刺される。


「あ、ああ………」


 一歩、二歩、後退りし、崩れ落ちる。力が入らない。刺された箇所からはドクドクと生暖かいものが絶え間なく流れ出る。


「か、かひゅ……」


 熱い、痛い、熱い。あまりの苦痛に声すら出てこない。


「…………さようなら」


 小学校の入学式で親と撮った写真、中学校での修学旅行、数々の思い出が走馬灯のように浮かんでは消えていく。


 そんな混濁した記憶の海に、ゆっくりと沈むように意識は途絶えた。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ