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最高の空の旅を2人で





今日は派遣先行きの輸送車が到着する日だ。

荷物をまとめた私は宿舎に駆け込む。


入り組んだ倉庫街の一角にD練とペンキで書かれた青いコンテナがあってそこの開きっぱなしの扉の前で、プロチョイという人物を呼んだ。

プロチョイが目を擦りながらヨタヨタと階段を降りてきて、今朝の知らせも聞いてなかったようだ。

服装はだらしなく、ベルトの外れたズボンがずり落ちている。しかも下着もつけずにシャツ1枚。


私は招集日のことを伝えると、どうして?っと驚いた後、察して、階段を転けそうになりながら駆け上がっていった。


数分後、荷物をまとめた彼女が浮かない表情で戻って来る。


プロチョイは尻尾をだらりと垂らし、灰色の縞模様をした耳をペタンと畳んでいた。

これは、落ち込み度90%だ。


私は大丈夫だって~っと軽く肩を叩いて、彼女と輸送車がやってくる所へ行き、待機しておく。



なぜ彼女が派遣団に新たに編成されたかと言うと、全ての元凶は私なのだ。

現在、派遣先に置いてある TEC社製、22式「竜胆」は高い防御性能と所持できる火器の多さとそのバリエーションから、素晴らしい評価を得ているが現在登場している、 藤山重工製、飛行型駆動纏鎧(パワードスーツ)「ティラフィム」によって戦果は減少傾向にあった。


そこで私の22式「竜胆」を現地改修し飛行型と言えるまでは改良できた。

反面、確認する計器の量が多くなり、パイロット1人では操縦が出来なくなったのである。

その問題を解決するため、私は旧知の仲であったプロチョイを副操縦士に指名したのだ。





輸送車がやってくる。

倉庫街のA練からZ練までの部隊で、派遣団に任命されている兵士が徐行している輸送車の後部から降ろされたスロープに登っていく。

我々はD練の前にやってきた時、輸送車に飛び乗った。




輸送車の中では既に集まった兵士が騒いでおり非常にうるさい。26部隊の中では各2名までが呼ばれているので、多くて52名。


A練の2名は実質、部隊長のため基本、50名括りにされている。

と、我々の所へキツネ族のおじさんが話しかけてきた。


「ラクーンを相方に選んだのかい?ラクーンは臆病で使い物にならんだろう。同じ犬でももっと賢いレトリバーかシェパードにしたら良かったのになぁ。俺の副操縦士、ハウンドみたいにさぁ。」


ハウンドと呼ばれたイヌ族の若者は足を震わせていた。

今回が初陣なのかもしれない。


「確かにラクーンは臆病です。だけど繊細、危機管理がしっかりとしているからいいのです。」


私は隣のプロチョイを見る。

プロチョイは、はぁ、と大きなため息をついて項垂れていた。


「ま、それなりの理由があればいいさ。同じ臆病同士頑張れよ。」



うるさいヤツは帰って行った。

帰れ帰れ、お前たちのような賞金稼ぎで作戦に参加しているやつはこっちの気も知らないくせに。



ガッタガタ、ガッタガタと輸送車が大きく揺れ出す。それを合図に全部隊の搭乗が終わったと理解した。

今回の派遣でこの倉庫街に戻れるのはいつになるだろうか。

私は足で鉄板に、タンっと叩いた。


それに気づいたプロチョイは私の手を握ってくれた。


やっぱり2人は安心するなぁ。

今まで1人でやってきたんだもん。プロチョイもプロチョイで別なとこに派遣されていたけど主に後方勤務で出撃数も低かったらしいし、うーん、大丈夫かな。


でもウチのD練で一番マシなのがプロチョイだしなぁ。

ほかの練に頼るなんて規約違反だし…。

仕方ないよなぁ…。お金も返していかなきゃだしさぁ。



車窓を見ると、故郷の倉庫街が遠くなっていた。

段々とあかりが遠くなって、見えなくなってくる。


「あぁ、はやく、昇格したぁぁぁい。」




私の叫びは車内の雑音にかき消されていく。


2人をのせた輸送車は夕暮れのなか進んで行った。

どこまでも遠くへ。




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