約束
私は女子高生の、「立花 圭」よくいる普通の……いや、少し普通じゃない女の子。
まぁ、理由は全部お兄ちゃんが悪いんだけどさ。
お兄ちゃんはゲーマー中のゲーマーでFPSっていう銃を使ったソフトを昔っからやってるの。そのせいで日や銃撃の音が家でなってて、お母さんも注意したけど最近は何にも言わないようになった。
私はその影響を少なからず受けていて、友達には内緒でモデルガンとかを集めてる。だから家に呼ぶ時はいっつも隠しています。
だからたまにグループで反りが合わない時があったりするけど私は友人を尊重してしまうから、自分に嘘をつくことが多かった。
だから趣味を隠して、アクセサリーショップとかスイーツ探しとか、あんまり興味無かったけどついていってた。
お出かけ先にホビーショップがよくあって行きたかったけど我慢してたなぁ。
でも…。
そんな日常は一気に崩れ去った。
水面下で行われていた争いが露見したからだ。
ニュースでは連日同じ内容を放送して、これが世界的危機であると報じていた。
大人たちは理解していた者がいたけど、私たち学生はそんなこと理解できなかった。
いつもどうり学校に行って、ワイワイはしゃいで、放課後はカラオケに行ったり街を回ったり。
そんなふうに楽しんでいる人達の数は減っていく。
みんな自宅待機になって、会う機会も家族だけで、国の報を待っていた。
私やグループのみんなはSNSを使ってそう遠くない日にまた同じ日常が帰ってくると思っていたから、次に行きたいお店や流行のファッションなんかの話をずっとしていた。
そして、最初のニュースから1ヶ月がたったころ、グループ内のリーダー角の人物がみんなで集まらない?と提案してきて翌日、学校前に行くことになった。
私は家族に止められるとわかっていたけど、普通の日常に戻った時、なにか言われるのが嫌だったから深夜にこっそり家を出ていくことにした。
「圭、出るならコレ持ってけ。」
お兄ちゃんが自室からこっそりと出てきてガスのハンドガンを渡してきた。
夜外出するのは初めてじゃないけど、今は状況が違ってくるから、心配してなのか。
「出来れば、行かない方がいいと思うぞ。知らんけど。」
兄は無愛想に話したあと部屋に戻った。
学校前まで着いた私はスマホを開いて待ち合わせ時間になるまで近くの公園で暇を潰すことにした。
「圭じゃん。やっほ」
声の主は同じグループ内で2番目に仕切っている「水原 夏紀」先輩で、後ろには「緑川 秋」も来ていた。
夏紀は学校でも結構な美人さんでグループの中で一番モテてる。髪は染めない主義で艶のいい黒の長い髪が特徴だ。
秋はなんというか、悪く言ってるのかもしれないけどリスっぽい。茶髪のショートが似合う小柄な女子。
「圭も、親怖系だったんだ。ま、こんな時代だしねー。私だってほらいつものじゃなくて運動靴だし。」
「そっか。みんな何かしら考えてきたんだね。」
「圭ちゃん。みんな集まったらさウチにいったん移動しようよ。ほらウチ、親が陸自だから今居ないんだよね。」
緑川の家は片親しかおらず、兄妹もいない一人っ子だ。
そうだねとうなずいておく。
「けーいー。今3時だよなー。時間が6時だっけぇ?あと3時間も待機かよー。自宅待機で懲り懲りなのにさぁあ。」
「破ってるやつが何言ってんだか。」
私たちは街灯の下、暗闇で見えない周囲に不安を持ちながら雑談をしていた。
「コンビニ行かね?ここで待ってても他にはやくきそーなやついないでしょ。あと、タバコ買いたい。」
「うわっ、また買いに行くんだ。もー、買いだめしとけよ。私たち疑われるんだけどなー。」
「はぁ?秋はまだしも圭は案外大人っぽいじゃん。大学生に見られるから大丈夫だって。」
そう言って夏紀が立ち上がった時、後ろの茂みがガサッと動いた。
それに夏紀はとっさに気づき警戒した。
「夏紀どう…」
「しっ!誰かいる。」
「え?うそ。」
明らかに地面を這いずるようなそんな音がする。
「おい!誰だ出てこい!」
強気な夏紀は音の方へ威嚇した。
「俺だって!俺だってぇぇ!ぁぁぁぁぁぁああああ!」
奇声をあげた男が私たちに向かって駆けてくる。
手にナイフを持って。
「お前!こっちくるな!うっ…ぐぅ……。」
一番近くにいた夏紀は男がもったナイフで首を刺された。
「夏紀!? 秋逃げてはやく!」
男は夏紀を刺したあと、彼女の顔に接吻した。
「気持ち悪いんだよお前!先輩から離れろよ!」
「アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!」
男はゆったりと立ち上がってナイフをクルクルと回した。
ニュースで、各国の暴動が流れて、評論家が新たな戦争の火種だとか言って、自宅待機が増えて、娯楽も制限されて、1ヶ月たった。
おかしな人間が現れても良いくらいの期間が空いたのかもしれない。
「こっちくるなぁ!!」
私はお兄ちゃんが渡してくれたガスガンを弾が無くなるまで撃ち続けた。
それはなんの威嚇にも、攻撃にもならず意味もなかった。
それはせいぜい玩具止まりなのだ。
わかっていた。わかっていたのに、逃げた方が良かったのに。お兄ちゃんだってこんな物、使えないことくらい知っていたはずだ。
でも私はこれを使ってしまった。
こんなもの知らなかったら、使うなんて選択肢はとらなかっただろうか。
じわりと生暖かい感触がする。
体から大切なものが抜け落ちるみたいな。
私……最悪だ。