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幼なじみとイチャイチャランチタイム!


 授業は進み、お昼休みになった。

 さて、今日の昼飯はなににすべきか……と言っても。


「たろーちゃんっ♪ お昼に行こう~♪」


 まぁ、由芽と一緒に屋上でお弁当なんだがな。


「ぐうう……桃ノ瀬、許すまじ……!」


 背後から猿谷の怨嗟の声が聞こえてくるが、スルーする。


「んじゃ、行くか」


 そのまま俺と由芽は一緒に教室を出て、廊下の突き当たりの階段を登っていく。

 教室は三階なので、屋上はすぐだ。


「わぁ、今日もいいお天気だよ~♪」


 雲ひとつない青空を見て、由芽はのんびりした歓声を上げる。


「ああ、そうだな。いい天気だ」


 どこかに旅に行ってしまいたくなるぐらい、晴れ渡った青空と爽やかな風。

 フェンスの向こうには雪を頂に残した山々が見える。


「はいっ、たろーちゃん。そっち持って」

「んっ」


 いつものように由芽が持ってきたカラフルなビニールシートを、ふたりがかりで敷く。

 これもすっかり慣れた日常だ。入学してから一ヶ月以上、由芽とこうしてご飯を食べている。


 由芽は上履きを脱いでシートの上にちょこんと正座すると、包みを解いてピンク色と青色の弁当箱を取り出した。続いて、銀紙で包んだおにぎりを三つ取り出す。海苔はくっつかないように、別々にしてある。


 俺も上履きを脱いでシートに上がり、胡坐(あぐら)になった。


「今日のお弁当、自信作だよ~♪」


 パカッと蓋を開けて、お弁当の中身が披露される。

 さまざまなおかずが綺麗に並んでいて、芸術的ですらある。

 卵焼きに、肉巻き(中は緑鮮やかなアスパラ)に、唐揚げに、プチトマト。

 どれも非常においしそうだ。


「たろーちゃん、どれから食べる?」

「そうだな。卵焼きかな……」


 由芽は箸で卵焼きを掴むと、こちらの口元に運んでくる。


「たろーちゃんっ♪ はい、あ~ん♪」

「あーん……。んむっ、もぐもぐ……」


 ちょっと甘めの卵焼き。由芽は俺の好みを熟知している。

 それはそうだ。子供の頃から試食係として色々と食べさせられてきたわけだから。


「ど、どうかな……?」


 じっとこちらの口元を見て表情をうかがう由芽。


「うん、美味い。さすが由芽だな」


 そう応えると、


「えへへっ♪」


 由芽はくすぐったそうに、目を細めた。この笑顔がまたかわいい。

 何度見ても、ドキッとしてしまう。


「次は、なににしましょう~♪」


 由芽はご機嫌で次に食べるおかずを訊ねてくる。


「おにぎり」

「かしこまりました~♪ ……んしょ、んしょっ」


 由芽はビニールで包まれたおにぎりをとって、かいがいしく海苔を巻きつけていく。

 そして、「はいっ♪」と、こちらの口元に差し出してくれる。

 その美味しそうなおにぎりに、かぶりついた。


「あむっ……もぐ、もぐ」


 そして、由芽はまた瞳をこちらに向けて、こちらをうかがってくる。


「うん……うまいぞ」

「えへへへっ♪」


 俺の言葉に頬を緩ませて心から楽しそうに笑う由芽。

 ここまで喜んでもらえると、もっと褒めてやりたい気持ちになる。


「由芽はすごいな。将来は料理学校でも開けるんじゃないか?」

「えへ、ありがとー♪ でも、わたし、たろーちゃん専用コックさんだから♪」


 そう言って、由芽は頬を赤くして、俺のことを熱っぽく見つめてくる。

 正直、この潤んだ瞳で見つめられると、心臓が苦しくなるレベルだ。

 今すぐ抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。


 でも、なぜか俺は由芽との関係をもう一歩進めることに――明確な彼氏彼女の関係になることに――躊躇していた。


 今までも由芽といい雰囲気になったことは一度や二度ではない。

 俺は、由芽のことが好きだ。それは、向こうも同じだ。相思相愛に疑いはない。


 ……だが、これ以上進んではいけない気がするのだ。

 根拠はないのだが、心の中で警鐘が鳴るような……そんな気がするのだ。


「ほら、あとは自分で食べるから。由芽もご飯食べないと。昼休みも、そんなに長くないんだから」

「うん、そうだね。じゃ、いただきます♪」


 そうして、俺と由芽はその後は他愛のない話をしながら、昼食を済ませる。

 陽光が暖かくて、昨日の悪夢と授業で疲れていた心身はすっかりリフレッシュできた。



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