北欧男子 In Japan エルフじゃないよ(前)
俺は爺ちゃんに「何で皆は僕をフランツって呼ぶのに、お祖父様やセバス達は僕をアランって呼ぶの?」と聞いた。
「アランはお前が自分で名乗った名前だからな」と言われて、「僕が?」と聞き返す。
屋敷に運び込まれ、二日後に目を覚ました俺は言葉が通じなかったそうだ。
誰もわからない言語で話していて、何かを言うけど意味がわからない。こちらの言うこともわからないようだったと。
身振り手振りで話しかけ、セバスが指を使ったり物を使ったりしてして「数」を示すと、指を使って自分は5歳だと伝えて来たという。
「頭が良い子だと思った」と爺ちゃんが言う。
セバスが自分を指差して名前を言い、爺ちゃんを指差して名前を言った。すると俺が自分を指して小さい声で「アルァ…ラン…ァ」と言ったそうだ。ハッキリわからなかったが、「アラン」と言うとにっこり笑ったので、「アランだろう」という事になったらしい。
爺ちゃん達は、誰かが森にキャンプに来て事故に合い、怪我をした子供とはぐれてしまったのかも知れないと、しばらく行方不明の子供について調べたが、どれだけ経っても俺に該当するような子供の捜索願いは出て来なかった。
事件性も疑ったが、やはり俺に関連すると思われる情報はなかったという。
そして、これは内緒なんだが、爺ちゃんは飛行機事故で実はフランツだけが助かったという事にして、俺をフランツ・アラン・ロートリングとして籍に入れたのだそうだ。
俺を偽物だと言ったおじさんは、この辺りのことを調べていたようだ。尚、このおじさんは自分自身が複数の不正や不祥事を起こしていたようで、爺ちゃん達による公正な調べの結果クビになったらしい。
「お前はあっという間に言葉を覚えてしまったし、色んな事を一回で覚える。そして理解力もある。普通に学校に通うよりも能力を伸ばすべきかも知れないな」
爺ちゃんのその言葉が何を意味しているのか、屋敷に戻ってからわかった。
通常子供たちは6歳か7歳で小学校に行くらしい。でも、俺は7歳になっても学校には行かなかった。そして、爺ちゃんの意向で家庭教師がついて家で勉強をすることになった。
爺ちゃんの言ったように、どうやら中々出来が良かったようで、10歳までに義務教育課程の勉強を終えて、続けて高校の勉強を始めた。
勉強は面白かった。パズルを解くような感覚で問題を解いた。
そして色んな事を知ると、疑問が出てきて、更にもっと知りたくなる事を知った。
「身体を鍛える事も大切ですよ」と、セバスが護身術を兼ねて訓練をしてくれるようになった。最初は何だか怖かったが、少しずつだけど強くなっていくのは嬉しかったし、怪我をして痛くても手当の仕方を覚えて、ちょっとの痛みや怪我ならそんなに怖がることはないんだと思うようになった。もちろん、無駄に怪我をしないように気をつける事も覚えたよ。
沈んだ車から脱出する練習はさすがに怖かったが、3回目くらいから落ち着いて行動できるようになったし、縛られた時の脱出術などは、体を使ったパズルみたいで面白かった。
普通の子供はこういうことはしないと知ったのは、もう少し大きくなってネットで顔を知らない人達とやり取りをするようになってから。
嘘つきだと言われる事もあってショックだったけど。…でもまあ、俺はこうして身体を鍛えた。
10歳の頃に爺ちゃんの所有する会社のひとつの社長が、俺をテレビCMに出したいと言い出し、何事も経験だろうと子役デビューをすることになった。
俺は妖精の役で、森の小人達が人間の子供が落としていったその会社のチョコレートを見つけて、みんなで喜んで食べてお祭り状態になっている所で、何をしているのかと興味を持って現れる。小人達にそのチョコレートをもらって食べると、そのあまりの美味しさにそのチョコレートとそれを食べていた森の小人達、そしてそのチョコレートを持っている世界中の人間達を、妖精の光で祝福するという、ベタなのか壮大なのかよくわからないコンセプトのCM。
誰もが「祝福されたい!」と思うような妖精役にぴったりだと言われた。
最初の顔合わせでは、同じ年くらいの子供たちが数人いてワクワクした。
セリフがあるのはテレビドラマに良く出ている女の子と男の子だけ。
俺はセリフ無しで、チョコレートを受け取りひとくち食べて、驚いた顔をして、それからニコニコキラキラして、右手を左肩辺りから下を通って右上に「優雅に」ヒュン!と振ればいい。
撮影も楽しみにしていたが、俺はみんなとは別の所でブルーの背景の前で撮影をして、他の子供達が演じる森の小人達の映像に後から合成されるだけ。だから友達になって一緒に遊んだりは出来なかった。
妖精の衣装を着せられ、背中に羽をつけられた俺を見て、一緒にスタジオに来ていたサナエが「やっぱり似合いますね。高貴です」と言ってニコニコしていた。ふと、「そう言えば、何でサナエは俺…僕の事を高貴だって言うの?」と聞いてみた。
するとサナエが我が意を得たり!という様子で急に声高に「それは、アラン様がエルフだからですよ!」と言った。
それを聞いて周囲のスタッフ達がくすくす笑っている。
笑われても気にもとめず、俺の手を取って頬を紅潮させて言葉を続ける。
「サナエは初めてお会いした時にわかりましたよ。アラン様はエルフの王子様です!」
ああ、この人はダメな人だった…。俺は思った。
サナエはアニメやマンガが大好きで、俺も彼女の影響でマンガや映画が大好きになった。
だが、俺は子供だけど、現実とファンタジーの区別がついている。
サナエは違う。この世の様々な事をファンタジーな思考で片付けてしまう人なのだ。
俺が妖精さんを演じたCMがテレビで流れるのを見て、「ああ、やっぱり本物は違いますねえ…」と、うっとりした表情で何度も言うサナエがちょっとだけ怖くなった。
ちなみに、そのチョコレートはバカ売れして、CMから派生して2時間のファンタジーテレビドラマが制作され、俺は引き続き妖精さんの役で出演をした。今度はセリフもいっぱいあったよ。
でも、撮影はブルーバックで撮って後から合成。やっぱりみんなとは遊べなかった。そしてそのチョコレートの味はどうだったのかと言うと、妖精としては特に祝福したいとは思わなかった。
撮影で会う大人達は、屋敷にやって来る大人達とはちょっと種類が違うと思った。
すごく疲れてたり、口が悪かったり、お行儀が悪かったり、でも優しくて面白かったり、すごい色の服を着ていたり、男なのか女なのかわかりにくかったり。
俺が男の子だとわかっていて「大きくなったらお嫁さんになって」と言うおじさんは、決まってサナエに殴られていた。そして何度目かで「サナエさんは素敵だ」って言うようになった。
とにかく個性的な人が多くて人間観察にはもってこいだった。
爺ちゃんは嫌だったらやめてもいいぞと言ったけど、そのまま少し子役とかモデルを続けた。
12歳になる頃には高校の課程は修了し、このまま自宅学習をするのではなく、大学に行くべきではないかと教師達の進言があり、俺は12歳で初めて学校に通うことになる。とは言っても、この国では自宅学習は認められていないはずだから、入学資格はどうなのかというと、その辺は多分爺ちゃんが…ゴニョゴニョ。
大学に行くことになって少し仕事を控えることにしたけど、元々俺に来る仕事なんて妖精とか天使とか、あんまり現実的ではないものばかりで、だからそれほど沢山仕事があったわけじゃないし、大して生活は変わらなかった。
…これも後で聞いたんだけど、サナエが仕事の内容をチェックして、普通の子供の役などは全て切り捨てていたのだそう。お陰で俺は業界では使いづらい子役と思われていたらしい…です。
大学は面白かった。子供がいると珍しがって可愛がってくれる学生がほとんどだった。中には意地悪な学生や教授もいて、嫌味を言われたりもした。でも、嫌なことをする人がいると、必ず誰かが間に入って来て庇ってくれた。
「間違っている」と思うことには躊躇なく声を上げ行動をする。そういう学生が多かったんだ。それは当たり前の事だと今なら思うけど、最初の頃は驚いた。知らない子の為に、知らない人に意見をする。大学にはヒーローが沢山いると思った。
困っている人がいたら助けるのは、とても普通のことだけど、知らない人同士でそれをするにはほんのちょっと勇気が必要だと俺は知っている。だからやっぱり、行動出来るみんなはヒーローなんだと思った。
14歳になる頃、セバスが「アラン様も随分大きくなられた」と言って、特殊部隊で使われているシステマという武術の指導が加わった時は「俺はどこに連れて行かれるんだろう?」と思ったけど、でも身につけておいて悪いことはないと思って頑張った。
セバスが言うように俺は身長が180センチ位にはなっていて、もう子供だとは思われず、言わなければ普通に入学した学生で通用した。
まあ、そっからまた急激にでかくなるわけで、「お前は毎年何十センチ伸びるんだ?」と友達にからかわれ、「まだ子供だからね」と言うと、笑ってバシバシ背中を叩かれた。
ある時、学生寮のパーティーに誘われた。酒を勧められ「俺は18歳未満だからまだ飲めない(飲みたいけどサナエに殺されるから)」と言って、それまで普通に話していた友達にドン引きをされたりもした。
そんなこんなで年月は過ぎ、俺は17歳になって大学院生なう、だ。
そしてそして、ナント!俺はゴジラの国、日本に来ている。
何しに来たかと言うと、モデルのお仕事で。
でっかくなった俺は洋服のモデルをすることが増えた。天使や妖精よりも需要が増えたのだ。
パリにも行った。ミラノにも行った。ロンドンにも行った。
そして今回、主にサナエの希望で日本の仕事が入れられたのだった。
中々暗くならない夏の夜に家でネットをして夜ふかしをしていた俺。ネットで使っている名前「カドクラコウキ」として知り合っていた日本の友達が、日本でComiComi祭りがあって、それにコスプレで出るんだと言っていた。何人かが自分も行くと言って盛り上がっている。面白そうだなと言ったら、「門倉君は日本には帰ってこないの?」と聞かれ、行きたいけど難しいと答えておいた。
帰る以前に行ったことがないとは言えなかった。
そのタイムラインをチャットにログインして見ていたサナエが(いつの間に?!)、「ComiComi祭りにコスプレで」と張り切りだした。「丁度いい仕事がありますよ」と。
丁度いい仕事ってなんだろう?と思っていたら、ComiComi祭りと日程の合う日本での撮影の仕事があるのだという。なるほど。
ヨーロッパを離れるのは初めてなので、どうだろうか?と思ったが、爺ちゃんにはサナエが「ちょっと遠いですが、日本で撮影の仕事があります。私の里帰りと合わせて日本に行ってみるのも良いかと」と話を通した。
そして俺とサナエは東京にいるというわけです。じゃ~ん。
来ちゃった。でも不安。
何がって、ネットの友達に会ったら「門倉君って日本人っぽくないね」って言われる、間違いなく。
俺は一度も自分から日本人だとは言っていないけど、門倉でーす!って言って日本語でやり取りしてるんだから、まあみんな日本人だと思ってるでしょう。騙したな!って怒る人もいるかもしれない。
どうしよう、「カドクラコウキは日本人じゃない」って書き込みしておこうかな。いや、この書き方は何だか告発みたいで怪しいな。
そんな事を思いながら、まず仕事を終わらせる。今回のは雑誌の仕事。トラディショナル系の高級ブランドの服が多かった。1週間でスタジオと外での撮影で、外の撮影では山の方に行った。紅葉が綺麗だったよ。
本当は3ヶ月単位の滞在で仕事を入れるんだけど、今回は1週間だけ。実に仕事としての効率は悪い。だが良い。目的はComiComi祭りを友だちと楽しむ事だもんね。
仕事は済ませたが、俺は不安を解消できないままComiComi祭りの前日を迎えた。
サナエは張り切って俺のコスプレ衣装にアイロンを掛けていた。
あれ? スーパーサ○ヤ人の衣装じゃないの?
「俺はコスプレはしない」って言ったのに、「何を言っているんですか!せっかくのComiComi祭りなのに!お友達がみんなコスプレするなら、アラン様もしなきゃ失礼でしょう!」と叱られて、「じゃあ、スーパー○イヤ人にしようかな」って決めて、衣装もズラも作って、出発前に試着も済んでいる。
なのにサナエ、なんで違う衣装にアイロンをかけているの?
そして、その銀のサークレットは何?
「エルフの正装はこんなものでしょ?」と、いい笑顔でサナエが言う。
はい?
「スーパーサイ○人に憧れる気持ちはわかりますが、やっぱりこっちの方が自然ですから」と、俺の知らない間に方向転換をしていた、というか最初から狙っていた?
俺の髪は大きくなっても相変わらず白に近い金髪で、ヘアカット係のサナエの意向で肩のあたりまで伸びていて、普段は後ろで縛っている。
そして、自分で言うのも何だが俺はとても美人だ。多分俺の実の両親はかなりの美男美女なんだろうと思う。
髪は淡い色だが、眉とまつ毛は茶に近い濃い目の金髪なので、金髪にありがちな「眉なし」には見えない。結構キリッとした眉で気に入っている。
そんな俺にエルフの衣装を着せたがるサナエ。
えー、やだ。
そうだ、サナエには言わずに、会場に衣装は持っていくけど着替えない。これで行こう。
とりあえず、今回参加するという皆に、無事に日本に着いている事を伝え、明日を楽しみにしていると伝えた。
そして考えた末に、一番良く話す史朗にだけ、俺が日本人じゃ無い事を伝えた。史朗は中高とアメリカに留学していたそうで、今は日本でサラリーマンをしているそうだ。25歳だと言っていた。
「大丈夫だよ、みんな怒らないよ。むしろ面白がって喜ぶんじゃないの?」と言ってくれた。
俺と、今回集まる「チーム☆フェルナンド」(どうしてフェルナンドなのかはわからない)は、全員ComiComi祭り会場の近くで待ち合わせることになった。チームと言いつつ、全員が初対面らしい。
それぞれに自分の目印を伝え合う。俺は「金髪です。ゴジラ柄のTシャツにゴジラの背びれ付きバッグで行きます」と伝えておいた。
着ていくゴジTとバッグは、昨日新宿のゴジラショップで買ったものだ。このショップは実に良い。他にも色々買った。帰国前にまた行こうと思っている。
当日の朝サナエが、何故ホテルから衣装を着て行かないのか?と言う。
「だから、ずっと言ってるけど、着いてから更衣室で着替えるの!もう更衣室先行入場チケットも買ってあるの!」と言うが、納得できない様子。
とりあえず、衣装は持ったよ。会場でクロークに預けちゃうけどね。
開催地の駅に着いて会場に向かう。
待ち合わせ場所に着いた。早過ぎたようだ。
1人でソワソワしていると、3人の女の子達が来た。
「あの外人、見て」
「うわ!超カッコイイじゃん。なんかキラキラしてる〜」
「キレイ、人間じゃないみたい」
「人間じゃなかったりして!」
「あははは!」
「でもあのゴジラシャツはないわ」
「何でゴジラにしたかな」
「てか、ボディバッグに背びれ付いてるんじゃね?」
「わかった!『ゴジラファンの人間のふりをしてるエルフ』だ」
「あはは、それっぽい」
「人間のコスプレ、うける!!」
楽しそうに笑いながら歩いて行った。
そしてちょっと離れた所から、そっと写真を撮られた。
なんか居たたまれない。
人間のコスプレなんかしてないし。
てか、人間だし。
ふと顔を上げると、キャンディピンクの髪にティアラを着けたおば…女の人が来た。あの目印はミュリエルさん?
見てると目が合った。けど、すぐに目を逸らし横を向いて首を傾げている。そしてまたそっと俺を上から下まで見て首を傾げる。多分ミュリエルさんなんだろうと思う。俺が日本人に見えないから悩んでいると思われる。どうしよう。
チャットにログインしてみると、「今、待ち合わせ場所に到着しましたー!あのさ、門倉君が金髪でゴジラT着て来るって言ってたじゃん。正にその格好の外人がいて、もうアタシどうしていいかわかんない。むっちゃきれいな人なんだけど、笑っちゃダメだよね、くるしい」と、ミュリエルさんが書き込んでいた。
どうしよう。
困っていると、また1人男の人が来た。緑のシャツに青い靴、そして赤いキャップを被っている。田中さんかな?
「すみません、ミュリエルさんですか?」「あ、田中さん?」という会話が2m先で交わされている。そして、チラッとこっちを見てから2人が無言になる。手元が動いている。
チャットを見ると「うおー、ホントだ。門倉君、早く来て。君と同じ方向の外人さんがいる。こ・こ・に、いる!やばい」「でしょ、でしょ!田中さん来てくれて良かった。もう1人でどうしようって思っていた。わはは」という書き込み。
…現在進行系で「1人でどうしよう」って思っている俺がここに居ます。門倉です。
史朗、早く来て!
そう祈っていると、史朗がチャットに誰へともなく「がんばれ」って書き込んだ。
そうだ、ここまで来ちゃったんだし、どうせこれからバレるんだし、思い切って声を掛けてしまった方がいい!そうしよう!よし!
そう思って、…そう思って俺はチャットに書き込みをした。
「門倉です。現場に居ます。金髪でゴジラTのでっかい外人です」
ミュリエルさんと田中さんが固まった。無言で会釈をする俺。
ミュリエルさんと田中さんも無言で会釈をしてくる。そして手元が動く。
チャットに「おわ、門倉君て日本人じゃなかったの?」「びっくりしたー。ごめーん!」と田中さんとミュリエルさんが書き込む。
「こっちこそ黙っててすみません」と俺が書き込む。
史朗が「ぷ。」と書き、レンさんと彩音ちゃんとモモハラさんが「まじかー!」「もうすぐ着く!しばし待たれよ」「えー、外人さんなの?どうしよう英語出来ないよ」「いや、ずっと日本語で話してるし」「あ、そっかー」と続く。
そして、史朗とレンさんと彩音ちゃんとモモハラさんが到着した。
「チーム☆フェルナンド」全員集合だ。やっと文字ではない会話が始まる。
俺がデカい外人なのも驚いていたけど、それよりも「彩音ちゃん」が40代後半のおっさんだった事の方が皆の衝撃は大きかったようだ。彩音ちゃんは「当日会って驚かせようと思ってたのに、門倉君のドッキリに負けた〜!」と悔しがっている。いや、大丈夫、あなたの勝ちだから。
「チーム☆フェルナンド」の名付け親はミュリエルさんだそうで、「いやぁ、あたしの勘はさすがだわ!」と言い、なんで?と聞くと「だって、AB○Aじゃん。A○BAの国じゃん門倉君。ABB○にフェルナンドっていう曲あるでしょ?繋がってるじゃん!」と力説をする。この人はサナエと気が合いそうだ。
レンさんが「こじつけだろ!」と笑い、モモハラさんは「あれ?忘れ物してないよな、アタシ」と言っている。自由だ。チャットと同じ感じ。大丈夫だった、来て良かった。
史朗が笑いながら「な、大丈夫だって言っただろ?」と言って、「それにしてもデカいね」と俺を見上げた。
入場して、皆は着替えに行ったが、俺はそのままクロークに荷物を預けて、魅惑の自販機で飲み物を買う。日本の自販機らぶ。温かい緑茶を飲みながら空いている所に座って待つ。
沢山の日本人の中で緑茶を飲みながら座っている自分。ここまで来たんだなあと思いながら周りを見ていると、さっき通り過ぎた女の子達がいた。むこうも俺を見つけて「あ、さっきの『ゴジラ好きの人間のコスプレをしてるエルフ』だ」と言ってまた笑っている。
「やっぱカッコいいじゃん、声かけなよ」
「え、あたし英語出来ないって」
「あー、勉強しておきゃよかった」
「フレンド、ピクチャーOK?で通じるんじゃない?」
「いやいやいや」 等と言っている。
彼女達の声が大きかった為、その場にいた人達も俺の方を見る。そして、「人族のコスプレしてるエルフだってよ」「おおお、見える!」「目のつけ所が渋いな」「究極の地味コス」等と声が聞こえる。
皆俺が日本語わかってないって思ってるんだろうな。全部わかってるよ。
そこに着替えた「チーム☆フェルナンド」が戻って来て「おまたせー!」「あれ?門倉君は着替えないの?」と言う。ので、俺は「うん、今日はゴジラ好きの人族のコスプレだから、これでいいんだ」と答えた。
「ひえっ」と言った女の子達と、「あははは!」と笑う人達。
ふふふ。なんだか面白い一日になりそうだ。
俺の国では飲酒は18歳からです。 by アラン