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拾われ、拾いました。  作者: あかね
拾われました。
2/13

彼の場合



 いっぱいみどりがあるところににすんでいた。


 くさのつゆがおいしかった。


 まいにちいろんなはなをめぐった。


 そのにわにかわいいこがいたの。


 おっきなおめめからぽろぽろみずがこぼれていたの。


 かわいそうで、あたまをなでなでしたら、びっくりしたかおをして。


 とってもかわいかった。


 それからほっぺたのおみずをぺろりとなめたの。


 どこかがぴきりとおとをたてたきがしたんだ。



■ □ ■ □



 また、泣いて、庭にやってきた。

 真っ赤な目でうさぎみたいと思うけど、うさぎってなんだっけ?

 ふわふわで、かわいいように見えておそわれたっけ。


 また、頭をなでてあげた。

 がんばってるね。

 泣いてもいいよ。


 かわいい子はふしぎそうに頭にてをのせる。

 そう。

 見えないんだ。

 でも、感じるでしょう?


 楽しい。

 とても、とても。


 涙をぬぐった指に残ったものは、にがくて甘い。


 ぱきんと音がした。


■ □ ■ □


 ねぇ、君を悲しませているのは誰なのかなぁ。


 今日も君は泣いてここに来る。


 悲しみと苦い気持ちが辺りに満ちた。

 ヒトは彼らが思うよりも世界に影響を与える。発散されないモノほど、強く激しく辺りに満ちる。


 今まで気がつかなかった小さな同類が、慌てたように逃げ出す。小さな手が引っ張ってくれるが、いらないよと笑うとびっくりした顔をして逃げていった。


 タマゴから割れて生まれるひな鳥のように。

 彼女の悲しみは、僕を目覚めさせた。


 その涙をぬぐえば、悲しみが消えるならそれでも良いと思ったんだ。

 君が笑ってくれれば。


 ぬぐう度に、ぴしりぴしりと響く音が、何を意味していたか。

 まだ、知らなかった。


■ □ ■ □


「ああ、これは、変異してしまった」


 初めて聞いた声に視線を向ければ、ヒトに似た何かがいた。

 白百合のように白い髪が、風にそよぐ。風などないのに。


「今度こそ、笑う子にしようと思っていたのに。こんなにも悲しみを食べてしまって」


 闇よりも尚深き闇の目が、細められた。


「優しい子」


 頭を撫でられた。

 手のひらの暖かさがじんわりと伝わる。


「だれ?」


「うん? 親のようなモノかな。もし、力が必要なら名を呼んで」


 風の音のようにその名を告げて、その人は去って行った。



■ □ ■ □



 真っ暗闇の日だった。


「足りなかった」


 彼女は、慟哭した。両手で顔を覆い、涙をこぼす。


「私ではダメだった」


 一面を一瞬で、悲しみで染める。


 小さい者たちが悲鳴をあげている。逃げることすら出来なかった。


『どうしたの?』


 声をかければ彼女は、ふと顔をあげる。

 真っ赤になったその目が、綺麗だと思った。

 その涙をぬぐうことしかできないと思っていた。

 はじめてぎゅうと抱きしめる。

 ヒトに触れても、伝わらなくても。


 ばきりと壊れた音がした。

 内側から溢れるそれが、それまでの僕を喰らいつくす。


 彼女の悲しみを食べて、生まれた。

 その悲しみを抹殺したいと願っていたのだ。


『僕の名は復讐』



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