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とある侍女のはなし

 



「お嬢様、もう出発しますよ!」




 バタバタと慌ただしく動き回る銀髪の少女に声をかけた。

 様子を見るにもう少しかかりそうかも、私はやれやれと首を振った。

 私の名前はローラ・ヒューイ。

 オーウェン公爵家のリラお嬢様にお仕えする侍女である。




「ちょっと待ってよローラ!私、変じゃないかしら?」




「はいはい、いつも通りお美しいですよ」




「そんな適当に言わないでよ……」




 少女は唇を尖らせる。

 彼女は普段実年齢より大人びて見えるが、そのような仕草をすると年相応に見えた。



「私に聞かずともお嬢様がお美しいのは当たり前のことですから、そのようなことは今更です」




 その言葉を聞いた途端、彼女は目を輝かせた。

 嘘を言った訳では無い。

 誰が見ても彼女は美人であると、そう言うだろう。




「急いでください!お約束の時間に遅れます!」




「でもエドは行くたびにそのドレスは変だとか、髪型が似合ってないとか言うの……」




 まだブツブツ言っている彼女をせかして、無理矢理馬車に詰め込んだ。

 馬車の中で不満げにこちらに何か言っているが、聞こえないふりをして、いってらっしゃいませ、と手を振った。




 さあ、彼女が帰ってくるまでにやらなければいけない仕事はたくさんあるのだ!

 今日も頑張って働きましょう!





 ――――――……





「ただいま」




「おかえりなさいませお嬢様」




 帰ってきた彼女を玄関で迎えると、何故だか憤慨しているようだった。




「どうされたのですか」




 十中八九、第二王子が何か言ったのだろうけど。

 彼女は王宮から帰ってくるといつも第二王子の話を聞かせてくれる。




「今日つけて行った髪飾りは子どもっぽくて似合わないと言われたの!だから、これを付ければ、だって!」




 と、彼女は自分の髪についている髪飾りを指さした。

 出発前に付けていったものとは別のものに変わっている。




 やはりノロケだったか……

 彼女が聞かせてくれる話は、最初は怒っていたり悲しんでいても途中から甘いものに方向転換していく。




 今日の場合第二王子はプレゼントを渡したかったんだろう。

 素直にあげると言えばよいのに、彼の言葉に一喜一憂している彼女を見るのが好きらしい。

 ……なかなかいい性格をしている。

 巷に出回っている第二王子の人物像とは少し違うように感じたが、こちらの方が好感がもてた。

 しかし、やっとお嬢様と婚約できたのに、本当に素直じゃない。

 彼と彼女の関係は以前とあまり変わりないように見えた。




 そして、その当人はあれお気に入りだったのに、とぼやいているが、私はその髪飾りから目が離せなかった。

 その髪飾り一体いくらするんでしょう。

 職業柄、装飾にも詳しくなってしまったが、お嬢様が今日王子殿下にいただいた髪飾りは、隣国の技術を取り入れたもので、最近貴族達の間で流行っている。

 細工がとても細かく繊細で、一つ一つを作るのにとても時間と手間がかかってあまり数を作れない。

 そのため完全受注製作で、お値段は目が飛び出るほど高い。

 だが彼は将来王宮で働きたくないがために始めた事業が、成功しているらしい。

 ポケットマネーはさぞかし潤っているだろうし、髪飾りの一つや二つ屁でもないんだろうな。




「お嬢様、その髪飾りとってもよくお似合いですよ」




 文句を言いながらも大事そうに髪飾りに触れる彼女に、素直な感想を述べると少女は嬉しそうに笑った。






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