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「来たわよエド!!」




「一緒に見てるから知ってる」





 学園の植え込みの影からこっそりと覗き込む。

 そこには、肩まである淡いピンク色の髪を耳にかける可愛らしい顔立ちの令嬢。

 例の男爵令嬢である。




「なんで隠れてるわけ」




「見つかっちゃうからよ!」




「見つかったら何か悪いことがあるの?」




「エドは分かってない!あの男爵令嬢は、端正な容姿の将来有望な令息にだけ近付いていくの。そして、みんなとりこにしちゃうのよ!エドもそうなったら困るの」




「誰が」




「そりゃあ私がよ!」




「それは何で?」




「今日のエドは質問ばっかりね!私の茶飲み友達がいなくなっちゃうからよ!」




「ふうん、それだけ?」




「それ以外何かあるの?」




 ううむ、とよく考えてみる。

 頭を悩ませている間にエドは私の髪に指を巻き付けてクルクル遊んでいる。何してるのよ、癖がついちゃうわ。




「はっ!」




「なに、気が付いた?」




「私はアル様の婚約者だから、他の殿方と二人きりで一緒にいるのを見られると困るわ。とても。だから隠れてるの」




「それすごい今更だと思うよ。君王宮に来る度に中庭で僕とお茶してるでしょ、みんな知ってるけど」




「……」




「……」




「とりあえず!!エドはあの子に近付いちゃだめよ」




「うん、まあ今はそれでいいよ」




 それがどれなのかよく分からないが、とりあえずこれみよがしに溜息をつくエドは置いておこう。

 今は彼女だ。

 男爵令嬢リリー・ローズ。

 今日は今からアル様もこの渡り廊下を通るはずだ。

 そして2人は運命の出会いを果たす。多分。




「あっ、来たわ、アル様よ!」




「小声で言わなくったって結構距離あるから聞こえないよ」




「しっ!」




「はいはい」




 艶やかな金髪を揺らしながら、アル様がご学友のローアル様と歩いてきた。

 そこからは、期待していた通りアル様とリリーがお互い好きになったり、リリーが嫌がらせにあったり、私なんかアル様とすれ違う度に睨まれた。

 いや、睨まれるのは昔からか。

 小説通り進まなければ悪役令嬢兼恋のキューピッドをしようと思っていたのだが、その必要はなかったようだ。順調すぎて正直怖い。




 そして、運命の日。

 待ちに待ったあの日。




「リラ・オーウェンとの婚約を破棄し、今ここに、リリー・ローズとの婚約を発表する!」




 まさかここまで小説通りとは。



 殿下とリリーの学友達が次から次へと私がやってもいない嫌がらせをでっちあげて発言する。

 ちょっと覚悟はしていたけれど、実際言われると結構傷付いた。




 他の生徒たちが遠巻きに私たちを見て、コソコソと話している中、誰かが私の横に立つ気配がした。

 それが誰かなんて、最初から分かっていたけれど。




「兄上、婚約破棄とはどういうことですか」




 ざわざわしていた会場がエドの一言で水をうったように静かになる。




「エド!聞いていただろう!この女はリリーに酷いことをしたのだ。そのようなものと婚姻関係を結ぶことなどできぬ!」




「彼女はもう兄上の婚約者ではありませんよ」





 ……は?





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