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PRIDE or BRIDE  作者: 下野枯葉
悲叫編
95/121

七十八話 主柱の少年と金髪美少女は『笑う』

四月二十一日


 星巌桂は部室のテレビの前で脱力していた。

 椅子に全体重を預け、喝采の音だけを聞く。

 呆然、驚愕。

 テレビに映されていたのは去年の学校祭での劇だ。

 演劇とは無縁と思っていた人が圧倒的な世界を創っていた。

「恥ずかしい……とは思わないけど、自分の姿を見るのはむず痒いね」

 柊花は頬を掻きながら翔太に小さく呟いた。

「最初はな。そのうち慣れてきて、アラを見つけ出すとまた別の感情に襲われるんだよ」

「慣れるのも考え物……」

「まぁ過去の自分を見返すのはいいことだよ。それを見て完璧と思わずに変化を求めることこそが重要なんだ。停滞は創作の最大の敵だから」

「そう……だね」

 翔太のその言葉を聞いて桂は少しだけ救われた。

 今までの自分と照らした時に感じた屈辱と敗北感。

 そしてどうしたら自分は柊花のようなレベルに、その上に行けるのかと考えた。

 それが正しいことであったと認めてもらったような気がしたのだ。

 翔太は撤収を行い、溜め息をつきながら嘆く。

「と、まぁこれが現状だな。舞台装置も使えないことはないが、人数の都合上沢山は無理。照明や音響等の使用も同様だ」

「それと演技力の向上。ゴールは無い」

 追加された言葉は柊花のもので、それを聞いた翔太は『わかってるじゃないか』と肩を少しあげた。

 芽衣も合わせて頷く。

 雰囲気が切り替わるタイミングになったが桂の心境はより深刻になった。

 どうしてこんなにも平然としているのだろうか?

 あの圧倒的な……と、脳裏で焦り始めた。

 それもそのはず。

 既に受け入れた翔太、芽衣と、劇に対する知識の少ないアンナ、雅、光。

 何かしなければならない。

 動かなければならない。

 そう頭の中で言葉が廻るが、演技力に関しては一朝一夕にはいかない為悩むことしか許されなかった。

 あぁ……。

 と、嘆息のような諦めに似た悩みを抱えた桂の表情は平然を装い乍ら、ひとり、苦悶を漏漏らしていた。

「さて、今日の部活だが――」

 翔太が場の空気を見て転換を一つ。

 練習メニューの提示と、今月の目標の再確認。

 こうしてこの日の部活は順調に始まるのであった。


 桂の心だけを置き去りにして。


 午後六時半。

「お疲れ様でしたー」

 桂は軽く頭を下げ、笑顔のまま部室を後にした。

 陽は落ち、この時間、演劇部以外使われていないこの棟の廊下は真っ暗になっていた。

 丁度良い。

 そう思った桂は頬を何度か叩き、笑みを消した。

 疲れたと、目を閉じたが景色は大して変わらず、開き直す。

 と、同時に声がひとつ。

「嘘は誰にも知られてはいけないものよ?」

 暗闇の校舎と言う状況が背後からの声を恐怖そのものに変え、桂は飛び上がった。

「あぁうう?!?!」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない?」

 腕を組み、不服そうに眉を顰めるアンナの姿を見て、桂は笑顔を見せる。

「アンナか……ごめんごめん」

「ゴースト扱いとは酷いわね」

 片手だけで謝罪の意思を見せ、並んで歩きだす。

「それで、嘘って?」

 昇降口までの会話の内容として、先程告げられた言葉の真意を知ろうと桂は質問を投げた。

「その愛想笑いよ」

 階段だけは安全上照明が点いていて、互いの表情は見えていた。

 桂は笑顔を戻していたが、アンナはきつく結んだ険しい表情をしていた。

「愛想笑い? 結構楽しいから笑ってるだけなんだけどなぁ? それに、俺は嘘なんて――」

「――じゃあ嫉妬にまみれて地団駄を踏むくらい悔しがらなかったのはどうして?」

 鋭い視線が桂に刺さる。

 アンナは数時間前の部活での一幕を指して問い詰める。

「…………」

 見透かされた。

 隠していたことを全て見透かされてしまった。

 桂は何も答えることはできなかった。

「自分の感情を隠すのは演劇部としては正しいのかもしれないけれど、人としては愚の骨頂よ」

 見下すように。

 嘲笑うように。

 正論を、真実を叩き付けた。

 あまりにも正しい言葉に桂は目を丸くした。

「スゲー審美眼だなぁ……素直に感心したわ」

 本音が漏れる。

 張り詰めた空気が一転して、柔らかさを取り戻した。

「そう? 普通じゃないかしら?」

「惚れるよ」

「冗談」

「いや本当に」

 桂の言葉の意味は本当だった。

 それが異性に対する恋愛感情によるものかどうかは定かではない。

「そう……でもお生憎様。感けている暇はないの」

「そいつは残念だ。暇が出来たら教えてくれ」

 流れるように会話が続き、ふたりは心地良さを覚えた。

「桂、アナタは本当の自分を見せた方がいいわよ?」

「悪癖だ、っていう自覚はあるんだよ。もうどうしようもない」

「勿体ないわね」

 ぶつかり合う会話は慣れた友人同士のようだった。

 楽しい。

 その感情が正解だ。

 心地の良い静寂が続き、昇降口に到着する。

「んじゃ、また明日」

 いつも通りの言葉を投げて立ち去ろうとした桂。

「ねぇ、桂」

 その背中に声をかけたアンナは悲しい瞳を浮かべる。

「ん?」

「アナタの本当の姿…………」

 頬を赤らめ、俯く。

 恥ずかしいという感情に襲われたアンナだったが、この気持ちは今見せるべきではないと飲み込んだ。

「?」

 言葉が途中で止まり続きが始まらない現状に疑問の表情を投げた桂。

 その表情を見てアンナは一度鼻で笑った。

「いたたまれないわ」

 煽り、踵を返す。

「えっ? うっそ? マジで? どの辺がいたたま……あれ?」

 どの辺が、と、言い乍ら自分の全身を見渡した桂が前を向くとアンナは既に靴を履き替えていた。


「明日はもっと見せなさい」

 右手を振りながら立ち去ったアンナは期待に胸を膨らませていた。


「はやっ!」

 慌てて追いかける桂は、転びそうになりながら靴を履き替えるのであった。



こんにちは、

下野枯葉です。


はい。

前回からわかるように、桂とアンナのお話です。

結末は決まっていますので、寄り道しながら頑張っていきましょー!

桂はいいヤツで悪いヤツなのでとても書いていて楽しいです。

それとアンナも最高に可愛くて、美しくて、切なく書けそうです。

こんな同級生がいたら惚れてたわ!


おっと……作者の学生時代は暗い道でしたね。

話を戻そう。


桂とアンナはこれから主軸を走ってもらいます。

桂と幼馴染の柊花、アンナとご近所さんとなった翔太。

そしてその二人と共にいる芽衣。

こちらも並走してもらうことになるので頑張ってぇ。

雅と光は別でリリィと楽しくしてもいます。

キャラが多くなってきて大変だぁ。

でも楽しさも増えますね。


んじゃあ、続き、書いていきますか。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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