七十七話 ロリコン、浮気疑惑
四月十九日
「お話、しましょう?」
冷たい言葉が脳で処理された瞬間、ゆっくりと目を閉じで覚悟を決めた。
事実を正しい順序で整理し始め、今後の展開を構築する。
「わかった。……とりあえず、アンナを起こそうか?」
小さな声で話し合っていたが、状況が転ずることはないと思い提案を一つ。
「……はい」
感情の変化のない返事を受けてゆっくりとアンナの肩を掴んだ。
「おーい、アンナ。起きろ」
「んんー……ん、んんん?」
パチパチと何度か瞬き。
夢から覚めようとしていた。
「どいてく――」
「――変態!」
変態と
殴られ叩かれ
デジャブ感
一句詠めました。
右頬と左目の下が赤く腫れあがる中、ゆっくりと茶をすする。
「いやー……まったく」
重たく静かな空気を否定するように短い言葉で音を出した。
「んー……」
リリィは相変わらずの笑顔で一切動かず、アンナは腕を組みながら考え込んでいる。
「なーんでリリィの部屋に来ちゃったの? 昨日の夜は……えーっと」
蟀谷を押し乍ら記憶を探っているが、パッとした表情が見えないあたりを見るにこいつは昨晩のことを忘れているらしい。
「ゆーっくり思い出してくれ。修羅場だぞ」
ゆっくり。という言葉とは反対に、煽るような口調で現状の解説をした――
「あっ、阿修羅と帝釈天が戦った場――」
「――おいこらぁ。流れで殴っちゃうぞぉ」
――が、こいつはいつまでもふざけるつもりらしい。
「殴ったら忘れるでしょ?」
「コイツ……」
一つ、毒を吐こうと言葉を選んでいると、リリィが湯呑を叩き付けるように机に置き、笑った。
「それでどうしてアンナ姉様は玄関で翔太さんを押し倒して寝ていたのですか?」
「……」
「……」
震えが止まらない。
風邪かな?
「何か理由があると思うんですよ」
「えーっと、確かー……」
「早く思い出せって」
小声で煽る。
俺とアンナは冷や汗を滲ませ乍ら、動揺を隠しきれないでいた。
「確かコンビニに行って、それから……階段を上って」
「何でお前は階段を上ってるんだ?」
成〇堂君もビックリするくらいの鋭い眼光。
閉廷!
「あぁ……じゃあ私のミスね! 申し訳ないわ」
「「…………」」
あっけらかんとしているのはお互いで、唖然としているのは俺とリリィ。
けろりとしているのはアンナだった。
「それじゃ」
右手を小さく上げて立ち上がったアンナは玄関に向かって歩き始めた。
「まてまてぇ。タダで帰れると思うな。謝罪がないぞ? おぉん?」
ここまで騒がせておいて。と、怒りを露にしながら引き止める。
「陳謝。じゃ、これで」
「おんまえなぁ?!」
両手をパチンと合わせてウィンクを一つ。
足早に立ち去った。
「おーぉぉぉぉいいい!」
いきなり立ち上がることができず、這うようにアンナを追いかけたが出て行ってしまった。
「……翔太さん」
背後からの静かな声。
「はい」
姿勢を正し、リリィと相対する。
「……とても不安でした」
「リリィ……」
冷徹さや、怒りの感情が見えない。
薄い水色も、燃えるような赤も無い。
「翔太さんが浮気なんてするとは少しも思っていませんでした。でも、それでもアンナ姉様との姿を見て苦しくて、苦しくて仕方がなくなってしまって……醜い感情だとわかっていても嫉妬の念は全く消えなくて」
震える唇は恐怖を現している。
「どうしたらいいのでしょう? 私、私は……こんな気持ち」
自分の抱いた感情を扱い切れていない。
余る感情は強く、鋭く、誰をも傷付けてしまうと思っているのだろう。
「いいじゃないか、嫉妬したって。激しい感情が出るってことは、それだけ想いがあったってことだから」
安心させたい想いから、そう言葉にした。
そして、嫉妬を感じる。
これ程までインスタントに感情を爆発させることができる嫉妬を、久しく俺は経験していない。
物語を紡いで表現をする者として、感情の起伏は刺激的であるが、それを体験することは少ない。
つまり、嫉妬に嫉妬している。
と、自分勝手な感情を頭の中で放ってからリリィと目を合わせた。
「そして何より、その想いの相手は幸せなはずだよ」
咲いた黄色。
「そうだと……嬉しいです」
一時は修羅場を見たが、なんてことはなかった。
静かに、静かに見つめ合い乍ら土曜の朝を噛み締めた。
こんにちは、
下野枯葉です。
大変お久しぶりです。
約一か月ぶりですかね。
色々とありまして、この作品を書けない状況が続いていましたがやっと書けるようになったので再開していこうと思います。
さて、
復帰してすぐに、浮気。がテーマです。
いけないことです。
時代や国が違ったのなら極刑も免れないことです。
と、言いましたが、実際はリリィの年齢を思い出す為のお話でもあるんですよね。
あと、優奈のことと、アンナの心境の変化を現す為のちょっとしたことです。
リリィはたったの十歳です。
十歳の時にみなさんは何をしていましたか?
私はポケ〇ンと遊〇王をしながら鼻水垂らしてました。
でもそのくらいが普通だと思うんです。
だから、リリィは少し子供らしさを思い出させてあげたいなって。
そりゃあ大人な子供として描いてはいますが、完璧なわけではありません。
だから今回はこれで良かったなぁと思っています。
そういえば……。
共感覚とかに関して色々と調べていたのですが、意外と身の回りにいるんですね。
ビックリしたなぁ。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




