七十五話 金髪幼女は未来に触れる
四月十八日
リリィは放課後、まっすぐアムール宝狼に帰り……優奈とお茶を飲んでいた。
「いやー、ゴメンね突然。母さんがいきなり言うもんだからさ」
優奈は緑茶を飲んで一息ついた。
机の上に置かれた菓子折りは、翔太の母からアリサへのものだという。
新年度。
心機一転するのと同時に、挨拶に行けないことへの謝罪や日頃のお礼や……諸々の意味を込めてということだ。
「いえいえ、わざわざすみません。早めに仰ってくだされば私が」
「いいのいいの、丁度コンビニにでも行こうと思ってたから」
私が取りに行く。という言葉を遮った優奈はぐるり、ぐるりと部屋を見渡す。
「リリィちゃん、大変でしょ? 翔太は掃除も何もしないから」
整理整頓され、一目で何がどこにあるのかがわかる部屋を見ての言葉。
呆れつつも、どこかに寂しさを感じさせるような言葉だった。
「大変なんてことはありませんよ。とても気を遣ってくださいますし」
「アイツ、ネコ被ってるわね」
「あはは……。それよりも昨日は咲菜ちゃんとは会えましたか?」
「んん? 会えたよー。一緒に遊べたし」
「それは良かったです。……ところで優奈ちゃんとお義姉さんはどういった関係で?」
「あ、えーっと……友達?」
腕を組みながら考えを巡らせて、絞り出した答え。
しかも疑問形の答えだった。
「は、はぁ……」
曖昧な回答しか返せずに気まずい空気になってしまう。
「まぁ正直に言うと、私の研究に興味を持ってて、よく見に来るんだよね」
「研究ですか?」
「そう、未来視の研究をしていて」
「未来……視?」
はてなマークを複数個浮かべたリリィに対し、優奈は切り出す。
「百聞は何とやら、だね」
窓を開けて空を見上げた優奈は、携帯端末を取り出して目を閉じる。
呼吸は止まり、優奈の周りの空気に異質さを感じる。
八秒。
静寂が包んだ時間。
そしてその後、震えながら優奈は声を出した。
「あのさ、リリィちゃん」
「はい」
「大変聞きづらいんだけどね」
「はい」
「……翔太って浮気とかしてない?」
こんなことを聞いた優菜には理由がある。
未来視によって見た景色は、翔太がアンナと寝ている光景だった。
優奈はアンナのことを知らないので、金髪美少女と寝ている弟という光景に衝撃が走った。
因みに、現在の状況では数時間後の光景しか見ることができない。
「浮気、ですか?」
「いやっ、心当たりがないならいいの。ホラ、翔太って意外と優しいところあるからそういうことが起きなくはないかなーってちょっと心配してね? いや、本当に心配だけなんだけどねリリィちゃんがいるのにそんなことをするハズはないと思っているんだけどね?」
「お義姉さん、杞憂ですよ。翔太さんは絶対に浮気なんてしません」
「そっか、そうだよね。…………じゃあさ、リリィちゃんは夜だけ成長したりする?」
「え?」
まず最初にリリィが急速成長をするという案が浮かんだ優奈は、ちょっとだけバカな娘なのである。
「ゴメン今のはナシで。リリィちゃんはお姉さんとかいる?」
「姉はいませんが、姉のように接している従姉妹なら」
「ちなみにその方は今どこに?」
「今年から西宮高校に入学しまして、ここの下、一〇三号室に」
「…………」
同衾相手はその子だろうと確信した優奈は、家庭内不和、婚約破棄等、最悪のエンディングを想像した。
それはマズいと思い、大きく深呼吸をした。
「あの、お義姉さん?」
「リリィちゃん。いい? 今日は一緒の布団で寝るのよ」
真っ直ぐな瞳、真面目なトーンと口調、年上としての威厳でそう忠告をした。
「えっ……あの、はい」
耳の先まで赤く染め、羞恥を露わにしたリリィは小さく頷いた。
まさか、義理の姉にこんなことを言われる日が来ようとも思ってもいなかった。
それに、親族にそういったことを知られるのはかなり恥ずかしい。
「それじゃあ頑張って! また今度!」
「あっ、はい。お気を付けて」
どうしてそんなことを言ったのだろう?
と疑問に思いながらも、今晩は自分から誘わなければと思うリリィは身を捩り、胸の鼓動を落ち着かせようとしていた。
時は流れ。
食事会が終わり、帰宅をして、就寝の時間となった。
人事への配属が決まった翔太は、放心状態のまま戸締りをして布団を敷いていた。
「あのっ……翔太さん」
一つの布団が敷き終わったところでリリィは声を絞り出した。
「ん?」
「今日は共寝をなさりませんか?」
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――する!」
こんにちは、
下野枯葉です。
一年の折り返し地点に立とうとしています。
何も生活は変わらない日々です。
でもそれがいいなと思ったり、もっとこれを書いていたいと思ったり。
そんな日々です。
さて、今回はリリィが未来に触れます。
最後のシーンはとても良いものだと思います。
さぁ、未来に触れてください。
未来を変えて……いいえ、今を変えるんです。
今ですよ。
ね、クリスさん。
次回。
お楽しみに。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




