七十一話 金髪幼女と対のシンクロニシティ
時は遡り。
四月十六日。
「さようなら」
「「「さようなら」」」
山城小学校五年一組で帰りの会が終わり、各々がランドセルを背負い昇降口に向かう。
「ねぇねぇ、リリィちゃん」
廊下の途中で声をかけられたリリィはこの元気な声が誰のものなのかすぐにわかった。
「はい」
咲菜が懐いた犬のような笑顔でクルクルとリリィの回りを走る。
「今日って優奈さんはいる?」
「お義姉さんですか? 私はもうアパートにいるので一度連絡をしないと詳しくは……」
「そっかー……」
優奈の所在が分からないことを残念そうにしている。
「連絡しますよ?」
「ううん、大学に行ってみる!」
気持ちを切り替えて、直接会ってしまおうと咲菜は走り出す。
咲菜と優奈は何度も何度も会って、何かを成そうとしている。
それが一体何なのかを理解しているのは当の本人たちだけであるから止めようがない。
しかも止める理由もない。
「そうですか。お気を付けて」
リリィは笑顔で送り出す。
「リリィちゃんまたね!」
咲菜は大きく手を振って教師に制止されないように再び走り出した。
「はい、また明日」
小さく手を振って友人と別れ、家路に就く。
アムール宝狼までの道でふと空を見上げる。
朧雲。
薄く広がる雲に単純な美しさを覚え、季節を感じる。
春だ。
巡った季節は夏に戻ろうとしている。
孤独を感じ続けたあの日々は切り裂かれ、弾け飛んだ。
懐かしむ。
あぁ……早く時が流れないかな。
一刻も早く齢十六になりたい。
そんな十歳の嘆きは至極当然だ。
だがそんな少女に大人はきっと語り掛ける。その歳でしかできないことを愉しめと。
それはまた別のお話。
アムール宝狼に到着し、部屋に入る。
まず携帯に連絡が入っていないかを確認する。
アリサからの連絡を認め、財布と買い物袋を手に取り、外へ出た。
「お母様が……来てくれる!」
珍しくスキップをしたリリィだったが、階段まで行ったところで羞恥を感じて歩き始めた。
今日は何を作ろうか。
母親の食事の好みを最近になって知った。
そう、あの孤独を忘れた日からゆっくりと知った。
切り干し大根、ひじきの煮物、鯖の味噌煮……大好きなものでもてなそう。
そう決めて、スーパーへ。
と、振り返った瞬間、人にぶつかる。
「あっ……すみまっ」
反射的な謝罪をしたものの、リリィの方が弾かれる形でバランスを崩した。
が、瞬間的にふたりに支えられる。
「こちらこそ」
「ごめんね」
雅と光。
下校途中のふたりがリリィを支え、謝罪を一つ。
雅は優しく包むように、光は絶対に転ばないよう強く支えた。
「ありがとうございます。申し訳ありません、考え事をしていて」
「ううん、こっちも」
「君に気付かなかった」
ゆっくりと体制を戻してもらい深く頭を下げて謝罪をした。
雅と光の顔を交互に見て硬直。
「……あ」
「どうしたの」
「なにかあった?」
「えっと……双子、なんですか?」
「そう」
「双子」
「だから」
「心も一つ」
双子特有のシンクロを見せつけるように左右から語り掛ける。
「心が一つ?」
しかし、その言葉にリリィは疑問を抱いた。
おかしい。
一つ?
そう思考を巡らせる。
「それじゃあ」
「私達は行くね」
「あのっ!」
「?」
「!」
「心が一つ。と言いましたが、そのように見えるだけで、お二方は全く違う優しさがあると思いますよ」
リリィは思考の中にあったしこりの正体を暴いて声を出す。
支えられた時の判断の違い。
本質の違い。
そして応えが決して同じ言葉ではないこと。
それを告げて、出過ぎたと思ったリリィは口元を抑えた。
「え」
「な」
「今日は本当にすみませんでした。それでは」
重ねてしまった無礼に頭を下げその場を後にした。
スーパーで買うものが決まっていない今、考えを戻してスーパーに向かった。
「……一体何が」
「……面白いね」
驚愕と興味。
ふたりは目を合わせて硬直する。
たった一人の女の子にその本質を見抜かれてしまった。
しかし、もう二度と会うことは無いだろうと思い、今日の出来事を過去のものにしようと決めた。
……女の子と自分たちの繋がりなど一切わからないのだから当然だろう。
そしてこの三人が再開するのは翌日の出来事である。
こんにちは、
下野枯葉です。
今日は日本ダービーを見ました。
エフフォーリアが二着でした。
一着って聞いてたんだけど?
さて、対のシンクロニシティ。
双子を登場させた段階で綴るだろうと確信していた言葉です。
早速使ってしまうのは語彙力の無さが故です。
この双子の歪さは次回以降、もっと強く語っていこうと思いますが……。
桂とアンナとも関わらせたいと思っているので、少し遅くなるかもしれません。
そして、この物語に関してですが。
完成系が見えた今、もっと細かく、美しく、気持ちよく書かなければならないので少し煮詰めます。
一週間、もしくは二週間。
とか言って、来週、いつも通り戻ってくるかもしれません。
とにかく。
向き合ってきます。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




