六十七話 ロリコンと新年度への約束
三送会から一月が過ぎて、卒業の日。
人との別れで涙を流した。
久しぶりだった。
別れたくないわけではない、笑顔で送り出さなければならないのに……涙が止まらなくなった。
ふたりからの言葉に鮮烈に色が弾け、止められなくなった。
「ゆず君に任せて良かった」
「まだ劇を続けたい」
ありきたりな別れの言葉だった。
それでも、ここまでの苦悩があったからこそ、ここまでふたりと劇を作ってきたからこそ堪えることができなかった。
嗚咽を堪え、約束を交わす。
地区大会。
嫉妬してしまう程のものを作ってみせる。
描いてみせる。
くしゃくしゃの顔を無理矢理笑顔に変えて送り出す。
絶対にこの約束は果たしてみせる。
四月十六日
新年度が始まり数日が経った。
桜も大半が散ってしまい、葉桜にも慣れていた。
そんな中俺は窮地に立たされていた。
部員が集まらない……。
新入生が慣れない校内に迷いながらも練り歩く放課後。
狂乱の部活動の勧誘が始まる。
六限で行われた部活動紹介で大方見当をつけた人もいるだろうが、迷っている人も多くいるので引っ張ろうと各部が走り回る。
演劇部としても目標は三人と決まっている為、目立つように頑張っていた。
俺と芽衣が遊撃隊として校内を走り回り、柊花が部室で待ち受ける。
部員の数が少なければ勧誘や、紹介に力を入れるのが難しく、見学に来てくれる人が少なくなってしまう……悪循環だ。
でも、それを乗り越えなければ部員は増えない!
五千兆人欲しい!
看板を担ぎ、走り回る。
何人かに声をかけたが、中々良い反応は貰えず諦めかけていた。
唯一、うまく行ったと思えたのは双子の女の子だろう。
入部してくれればいいのだけれど……。
……あの子たち、面白い反応をしていたな。
と、数分前を思い出す。
「あの」
「すみません」
背後から声をかけられ振り返る。
「ん? なんだい?」
芽衣よりも少し背の高い女の子がふたり。
顔立ちがそっくりなふたり。
恐らく双子だろう。
サイドテールが左右で別々になっており、区別は右か左でしかできない。
左右それぞれ、俺を上から下まで舐めるように見る。
「演劇部の方ですか?」
「部室はどちらですか?」
続けて左右交代で同じく眺めてくる。
「えっと、多目的室だよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「さっきの劇、すごかったです」
その瞬間、色が赤と青に分かれた。
さっきの劇とは六限での数分の劇のことだろう。
「……ありがと」
「では」
「失礼します」
ふたりは笑顔で頭を下げ、同時に振り返って多目的室に向かう。
双子と関わるのは中々ないが、こんなにも感情が分かれてしまうのかと不思議に感じた。
……。
入部してくれそうなのはこのふたりだけ。
部室に戻りづらい。
どうしよう。芽衣が五、六人連れてきたら。
面目丸潰れ。
いや、俺の矜持なんてどうでもいいんだよ。
芽衣も連れてくることが出来なかったら……。
あぁ、どうしよう。
あぁぁぁあああああ。
「杠葉翔太で間違いないか?」
廊下の隅で頭を抱えていた俺の正面から声が聞こえる。
「へ? はい……」
声の主を確認しようと顔を上げると、仁王立ちで見下す金髪美少女がいた。
顔立ちから日本人ではないと思われる。
制服のデザインは……新入生か。
「そう。貴方が」
さっきの双子よりも心地の悪い視線で俺を舐める。
見定める。
値踏みされている。
「あの……何か?」
ゆっくりと立ち上がり、看板を持ち直す。
「大したことありませんね」
「は?」
は?
え、何?
いや、ムカつくとか思わないけど……初対面だよな?
「私は認めませんよ。リリィと結婚するなんて」
リリィ。
その言葉を聞いてある程度察した。
関わらざるを得ないが、今ここで関わるのはなぁ……。
「うわぁ……」
「うわぁ。とは失礼な」
「その言葉は返したい。けど面倒なので失礼しまーす」
立ち去りつつ手を振る。
逃げるが勝ち。その通りだ。
とっとと部室に帰ろう。
リリィには申し訳ないけど
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
金髪美少女は俺の後ろからトコトコついてくる。
「今から部活なんで、後にしてもらえませんか……あれ、俺の方が年上だよな?」
どうして敬語を使っているのだろうか? と不意に思って言葉遣いを直す。
「ちょっと!」
「もー、何? もしかして入部希望?」
いつまでもついてくるので訝しんだが、ただ話したいだけなんだろうと思うことにした。
そして、冗談交じりに勧誘をする。
「えぇ」
「うっそだぁ」
「貴方を観察する為には丁度良いし、劇には興味があるので」
「おぉ、それはいい。で、名前は?」
「アンナ。アンナ・サンチェス」
「サンチェス? ロペスじゃないのか?」
「リリィのお父様が私の母の弟……母は嫁いだので性が変わっているだけよ」
「ほへー」
「聞いておいて興味無いのね」
「いやー、今はただの高校生だし。厄介事は増やしたくない」
「厄介とは失礼ね」
「まぁそんなことは置いといて……ほら、部室だ」
と、適当に話をしているうちに部室に到着し、立ち止まる。
「あ……ここが」
「ようこそ演劇部へ。歓迎するよ」
扉を開けて中へ誘う。
ここから先が劇の世界だ。
ここから先が別の物語だ。
そう語りかけるとアンナの瞳が光る。
探求心。
手を伸ばし、掴み取ろうとする感覚が芽生えた。
その瞬間に立ち会えたのが嬉しくて堪らなかった。
なんだ。
高飛車かと思ったら年相応の感情も持ってるじゃないか。
純粋な橙色が咲いていた。
新年度。
演劇部は地区大会を目指す。
その為には劇に興味があって仕方がない人間は大歓迎だ。
次の劇の為にはここに集まった全員を惹き付けなければならない。
どんな手を使おうとも。
こんにちは、
下野枯葉です。
悲叫編。
はじまりました。
それと同時に新年度が始まりました。
新キャラ投入と、既存キャラの大きな変動を行おうと思っています。
楽しみだなぁ。
特に新キャラ。
一週間考えた構想で、絡みや大筋は固まり、枝分かれする物語を選別するだけです。
でも、どれも面白い。
そして次の地区大会への劇も最高に最強。
……その分、作者は脳みそを焼きながら紡いでいます。
でもドМだから喜んでます。対戦よろしくお願いします。
次も書き始めましたが、辻褄の確認とか忙しいです。
いやー、久しぶり、新しく書く感覚。
たのちぃ。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




