六十話 ロリコンと劇団の想い
歓談。
わいわいがやがや。
小さな部屋に似合わない沢山の声。
「それでゆず君がね――」
「――あー! 先輩、勘弁してください、恥ずかしい」
羽衣石先輩の語る学校生活での俺の話。
羞恥心がここまで暴れるのは久しぶりだが、完全に止めることはできない。
「リリィちゃん、翔太は部活だけは真面目だからね。こういうことがね」
「もー! あー! 聞きたくないね!」
声を荒げ、全ての音を掻き消そうとするが天国先輩に絞められ、声を出すのを諦める。
「この前翔太に台本の書き方を聞いたら、凄くストイックな答えを返されたな」
「ストイックですか?」
柊花が興味を示す。
それも食い入るようにだ。
書き方にこれだけ反応したのに驚いた。
「あぁ。文章を書けるだけ書いて、流れを重視しつつ削っていくんだとよ」
「物量で殴ってる……」
聞いたのを後悔しているのだろうか?
いや違うな。
呆れと関心の混ざった声だった。
「それで朝まで書いていたりするんですね」
合点がいったとリリィは手を合わせる。
これまで何度もその姿を見せてきた。
勉強も一夜漬けが多いし、台本を書くのだって台本を覚えるのだって朝までかける。
「それは言わないでおくれよリリィ……」
きっと赤くなっている顔を少し隠しながら頭を掻く。
「あとは普段の部活で――」
「――もう! いじめないでぇ」
我慢ならんと大の字に倒れて天を仰いだ。
「っ……ハハハ! ハハハハハ! いやーからかうのは楽しいな」
「酷い趣味ですよ、まったく」
天国先輩は腹を抱えて笑いながらアイコンタクトを一つ。
これは『どうだ?』という意味のものだ。
「高校生としていられるのはもう残り少ないからね」
「まだまだ語るよ。次はめーちゃんだ」
芽衣を指差しニッと笑う。
積もる話は多くある、それにこれから短い間であるが積もらせることだってできる。
「へっ?! 私はいいですよ」
「その次はとーちゃんね」
「私もですか?」
「いやいや、遠慮することはない。あれやこれ、有ること無いこと語っていくからな」
「「「無いことはダメなのでは?」」」
「リリィちゃんにも楽しんでもらえるようにしますよー? ぜひ楽しんでね!」
置いてけぼりにはしないようにと、羽衣石先輩らしい心遣いが一つ挟まれる。
「はいっ!」
傍から見れば子供同士の微笑ましいやり取りだ(小学生同士)。
「なーんか」
「嫌な予感」
「するなー」
俺、柊花、芽衣が誰にも目を合わせないようにしながら連続で声を紡いだ。
確かにこのふたりの先輩が手を組むとロクなことが無い。
「まずは芽衣だな」
が、そんな不安が瞬間的に消えた。
目にいたずらな子供心が消えた。
「めーちゃんはね初めて会った時驚いたよ。その演技力をこの少ない部で使うのが勿体無いと思った。どうしてウチに来ようと思ったの?」
「えーっと……私は演劇しか能が無いし、先輩達と一緒に劇したいし」
「俺も芽衣と色んな劇ができて良かった。掛け合いをする度に、もっと色めきたいと思えた」
目を伏せながら過去を遡る。
悔いはないと片目を開いた。
青。
寂しさだ。
「紫雲先輩。やだな……もっとふざけながらだと思ってましたよ。もう、もう……」
「ごめんな、大会とは無縁で。でも、諦め得ずに続けてくれ。大学や就職したとしても劇と続けてみてくれ。きっと芽衣に惹かれる人が多くいる。そして芽衣自身が劇に惹かれるだろう」
「……はいっ」
もう、色を見るまでもない。
芽衣の気持ちはこの場にいる全てが理解していた。
「次はとーちゃん」
「はい」
場の流れは完全に先輩ふたりが握り、それを崩さずに柊花は姿勢を正した。
「とーちゃんは劇、初めてだよね。裏方をずっと続けてたけど、引退してから主役をやってビックリしたよ。うん、最高だった」
「未知。その言葉が的確です。お二方の演技は魅力的で惹き付けるのには十分でした。そして芽衣と翔太君と四人で舞台を彩るのを見て憧れを覚えたんです」
「それに演出や台本も書き始めたんだろう? どうだ?」
「えぇ、楽しいです。この上なく」
「ならば突き進め。芽衣も翔太も支えになってくれるだろう。一から全て創ってみろ」
「とーちゃんの世界はもっと広がるよ」
「はい」
先への希望と期待を膨らませる瞳。
柊花と天国先輩は共に努力家だと俺は思う。
それだけに『突き進め』という言葉が柊花の心に深く届いた結果なのだろうと思った。
「そしてゆず君」
順が回り、俺はゆっくりと一度頷いた。
それが返事であるのは明白だ。
「君が見る世界の続きが気になって仕方がないよ」
掛け値なしの誉め言葉。
それが恥ずかしく、誇らしい。
「俺は翔太が彼の劇作家を超えていると思っている。何処を目指す? 何を見せる?」
一方の天国先輩は問いを二つ。
でもどうして悲しい顔で聞いてくるんだ。
どうして先程よりも深い青を纏っているんだ。
色が見えたってまだまだ分からないことがある。
だから俺は、素直に答えを脳内で探した。
「目指す場所はわかりません。でも見せるものは決まっています」
「……それは?」
「その時の最高です」
「刹那主義、悪くない」
「でしょ?」
俺は天国先輩と同じアイコンタクトを投げた。
つまり『どうですか?』と投げた。
一度、静かに頷いて色が紫を経由し、ゆっくりと桃色に変わっていった。
「私も嫌いじゃないよ」
「それで先輩たちは目指す場所……あるんですか?」
「卒業間近だよ? 何もないよ」
小さい体を天国先輩の内に埋めるように、胡坐の上に座り込んだ。
ふたりは目を合わせ肩を竦めながら、視線を流した。
「ダウト」
短く呟いた。
呆気にとられたふたりはクスっと笑った。
そして羽衣石先輩は楽しそうに頭を揺らし、天国先輩は肩を落としながら溜め息をついた。
「あぁ、声が漏れてしまうよ。翔太にはかなわないな」
「じゃあ聞かせてくださいよ」
「それはね――」
こんにちは、
下野枯葉です。
花粉シーズン到来。
目がかゆい鼻がつまるボーっとする。
ココが地獄か。
さて、今回はクリスマスパーティーです。
パーティーでは楽しい話は勿論。
積もる話もあるということです。
そんな積もる話を展開しつつ、劇へ繋げます。
現段階では、新年の食事会に向けてクリスさんとの会合が控えています。
それと劇ですね。
あとは……新年度。迎えたいですね。
まだまだ続けます。
まだまだまだまだ……やってもらうことが沢山あります。
(あ、日曜日終わってる……やべ)
では、今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




