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PRIDE or BRIDE  作者: 下野枯葉
英断編
67/121

F・D 喝采無き舞台を灯せ

 体育館。

 全ての窓の暗幕が光を遮り、暗闇を作り出す。


 ◇


 緞帳よりも前に現れたのは翔太と芽衣――否、これは『星の語部』……ならば現れたのは神田と星宮。

「ご覧頂こう、ご覧頂こう」

 神田は大きく両腕を広げ幕開け前の観客席からの注目を集める。

「星の下に生まれた少年少女が織り成す、光のように真っ直ぐな物語」

 星宮も同じく声を上げた。

「時に挫折し、時に導かれた軌跡は夢を見る」

「夢を見るのならば星座と神話をその身に感じ、目を輝かせるだろう」

 堂々と見得をしたふたりは示し合わせたように視線から鋭さを消す。

 そして、小さく笑みを浮かべて瞬時に場の空気に心地良さを与えた。

「さて、みなさんに夢はありますか?」

 左右への視線と表情の動き。

 疑問を投げたと同時に注目を星宮に渡した。

「それとも……夢が“ありました”か?」

 言葉に抑揚をつけることで、簡単に意味を見せた。

「夢を追う人、捨てた人、諦めた人……」

「叶えた人、叶えた先に次の夢を見た人」

「夢とは人にあらゆる窮地を脱する力を与えます」

「夢とは人に生きる価値を与え、一歩踏み出す勇気となります」


 劇が始まってほんの数分で前提を認めさせた。

 この物語における前提条件。


「少年は星に与えられた物語を知り、新たに紡ぐことを夢とした!」

「少女は星の存在を知り、新たな星をその瞳で捉えることを夢とした!」


 この劇では演出をした者が飽きを嫌っていた。

 故に、何度も雰囲気を変え、疲れてしまいそうになる劇を望んだ。

 大きな声の余韻が消えぬうち次の台詞が放たれる。

 優しく呟く為、その差から観客がグッと前のめりになる。


「星々の神話は聞いていて心地よかった……あぁ、俺だって物語を書きたい」

「見上げた空にはいつだって星があった。誰にも知られていない星が可哀そうに思えた」


 再び転じる。


「ならば、少年は天文学を学び、星の性質と物語の繋がりに歓喜する!」

「そして、少女は愚直なまでに星を追い、闇に呑まれてしまいそうな星を探すことに昂る!」


「さァ! 間もなく幕が開きます!」

「この輝きをその瞳、その心に焼き付けて頂きましょう!」



 上手、下手にそれぞれ捌けるふたりに合わせて絞りの緞帳が開く。


 袖幕、中割幕は六間の幅に開き、ホリゾント幕は紺……星球と共にその時間を示す。

 サスからの光はかなり絞られており、簡素ながらもフィルターを付けている。

 創地が少し寒そうにしながら小さな折りたたみ椅子を持ち現れた。

 中央やや下手寄りに椅子を広げ、膝を労わる様に腰を下ろす。

「ペガスス、えーっと右下に水瓶……」

 指でなぞっていたが、ゆっくりと腕が下ろされた。

 自嘲気味に一笑いしてから脱力した。

「あー……俺だって天文学者になりたかったさ。現実を知ったら辛いだけじゃねぇか」

 再び星を見て嘆く。

 人生経験の大きさから生まれる疲れた声がおっさん臭さを醸し出す。

「天文学なんてさぁ……」

 そう呟く声が完全に消えた後、神田と星宮が舞台上に現れた。

「先生、お待たせしました」

「早速教えてください」

 創地には視線を合わせることなく、星だけを見つめ、敬う気持ちを一切持たない単調な言葉を投げつけた。

 星の話をする前に人の心や道徳を説いてやろうかとゆっくり立ち上がったが、創地は骨折り損になることを見通してゆっくりと指を空に伸ばした。


 ◇


 因みにこの劇の観客席には誰の姿もない。

 悲しいかな。送る人間は舞台上にいるのだから。


こんにちは、

下野枯葉です。


『星の語部』

書いていて楽しかったです。

元々、星が大好きな私なので、心の底から楽しみました。

あぁ楽しいな……。

今晩、星空を眺めました。

時勢に流され、ゆっくりと眺めるのは久しぶりでした。

もう、冬なんですね。

今年は天の川をちゃんと見た記憶が無くて悲しくなりました。

来年は田舎まで車を走らせて見たいなぁ。


この作品も気付けば長いこと書いていますがまだまだゴールが見えそうにありません。

もっと続けていきますので、どうかお付き合いください。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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