四十八話 シスコンはライトブルーの景色を見せる
彼岸も過ぎ、夏の暑さがめっきり薄まった頃。
唯は夏の間ひたすらに共感覚について考えていた。
調べ尽くしたがやはり感情を読み取るそれは特異で、オーラリーディングという全く別のものとして捉えられる場合もあるほどだ。
元々感情を読み取るのが得意な人間が、その感覚を色として捉えているだけではないか。
色の情報をどうして感情と紐づけて認識したのだろうか?
まず人の周りにどのような形で見え、それをその人のものであると認識するのか。
ネットを中心に調べ、様々な情報を得る。
そうしているうちに自然と筆を執っていた。
夏の終わりに完成した作品……『カラー』
その内容は共感性羞恥を擽られるような内容。
一直線……直球を投げつける恋の物語。
唯はその物語を手に部室に向かった。
叩き付けてやる。
めげることは負けたことと認識している唯の心は激しく燃え上がり、部室の扉を勢いよく開かせた。
普通の教室とは違い、物置だった部室の扉は金属製の重いものである為、鋭い金属音を響かせ、閉じると同時に轟音も響かせた。
「翔太ぁ!」
「うぉおあああ?!?!?! 何? 何? びっくりしたぁ!」
椅子から半分落ちながら胸を抑える翔太は呼吸を整えている。
「今月分よ!」
バン! と叩き付けた自作の小説。
「音が、音がさっきから凄い……心臓に良くないんだけど?」
「ドキドキしてるの?」
「これが歪んだ恋ってか? 冗談でしょ」
「それより――」
砕けた雰囲気を一蹴するように瞳を開き直した唯は、翔太の瞳を確実に捉えてから一拍開けて台詞を続ける。
「――読んで」
短くも強い言葉。
翔太も色を見るまでもなくその熱意を認め、ゆっくりと手を伸ばす。
タイトルを読み、一ページ目を捲る。
一度俯き、耳を赤く染めたが、呼吸を整え読み進める。
A4用紙を捲る音がどこか心地よい。
十数分の時が流れ、最後のページが閉じられた。
悩む表情を浮かべつつ顔を上げた翔太は言葉を丁寧に紡ぎ始めた。
「すごいね、ちゃんと調べてある。なんなら俺の知らないことまで書いてあるし、熱量も伝わってくる。そして何より、物語として人を惹き付けるだけの展開があるね」
窓の外に視線を送った翔太。
唯はそれを追いかけ、倣うように外を眺める。
鱗雲とオレンジの空。
綺麗だね。と感想を呟こうと視線を合わせると翔太は肩をすくめた。
「怖くなったでしょ」
「うん」
偽りなく答える。
それは見抜かれてしまうから。
「だよね」
「でも、私……諦めたくないよ」
笑顔と裏腹の哀愁を孕んだ涙が溢れる。
「だって好きだもん……どうしてもこの気持ちを捨てられないもん。でも、怖いよ……怖いよぉ……」
くしゃくしゃの顔を認めた翔太は、目を閉じながら思考を巡らせる。
「三つ、解決策があるよ」
親指、人差し指、中指を広げ、数を示す。
決して目は開かない。
「え?」
「一、慣れるまで待つ。二、諦める」
三つ目を答える前に翔太は満面の笑みを浮かべた。
「三、目を潰す……どれがいい?」
瞼の上から眼球を軽く押し、数回押し込む。
それが生々しくて込み上がるものがあったが、無理矢理飲み込み、最善を見る。
「三番……今すぐにだもんね。一番だよ」
「そっか、俺は三番でも良かったよ」
溜め息を一つ。
指を下げ、目を開いた翔太は視線を合わせなかった。
「本当は――」
脱力し、動かない翔太は独白を始める。
その景色には唯は映っていない。
「――この目が嫌いだ。簡単に言えば邪魔。人間関係だって、本当の心が見えてしまったが故に上手く行かない。……親しい人間であっても見えちゃいけないんだよ。誰も彼も知った途端に色が澱んで吐きそうになる。汚い期待、恐怖、好奇、嫌悪……うんざりだ。だからさ、自分で潰そうとした……でもできないんだ」
握った拳が机を叩く。
強く叩かれることだけは翔太の性格上許されなかった為、その重さのみの強さであった。
「どこかで見えることが当たり前になっていて、見えないことが怖くて堪らなくなっててさ……潰せないんだよなぁ」
「……ごめん」
「いや、普通できないよ……慣れるまで頑張って」
「…………………うん」
「泣くなって……待っててやるさ」
翔太が手を伸ばす。
それを震えながら取る唯は一瞬――
――ライトブルーの景色を見た。
こんにちは、
下野枯葉です。
いやー……珍しく三連休になると曜日感覚を失いますね。
昨日の投稿忘れちった。
閑話休題。
さて、宮代翔太と相牟田唯の物語。
過去の物語を描くのは少し大変でした。
元々描いていこうと思っていたので形はできていたのですが、矛盾とかが難しかった。
でも、深みが出るのは嬉しくて。
楽しかったです。
そして次週からは現代編に戻り、流れを戻していきます!
さぁ!
ロリコン再登場です!
いえーい! 逮捕されちまえ!
やーいやーいロリコン!
……。
なんだろ、作者も傷ついた。
勤労感謝の日なのに。
続き書いてこよ。
では、今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




