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PRIDE or BRIDE  作者: 下野枯葉
英断編
58/121

四十三話 金髪幼女は純粋をその身に受ける

十二月十七日

 山城小学校。

 リリィは申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げていた。

「咲菜ちゃんごめんなさい」

「むー……」

 先日家に誘う約束をしたが共感覚や食事会のことがあり聞き忘れていた。

 咲菜は頬を膨らまし不機嫌さを露わにしている。

 それを見て言い訳をすることを完全に否定し、正直に答える。

「ついうっかり忘れてしまいまして……」

 理由を聞き咲菜は考えを巡らせる。

 何度か横に揺れながら瞳を閉じる……まるで躍っているかのようだ。

「じゃあウチに来てよ!」

 一体どんな理論が咲菜の中で踊ったのだろうか? いや、単純に楽しいことを優先したのだろう。

 その名に恥じぬ綺麗な笑顔が咲いた。



 放課後。

 リリィは花渕家の門前にいた。

 ごく一般的な家庭の一軒家。

「リリィちゃん上がってどーぞ」

「お邪魔します」

 敷地の中に入る前にコートを脱ぎ、内側を返して腕にかけ敷居を跨ぐ。

 咲菜はこの一連の行為に対し疑問を抱いたが『変わったことするなー、外国のまなー? なのかな?』と思うだけであった。

 咲菜の母親に丁寧な挨拶をして引っ越してきて間もないことを伝える。

 娘から聞いているよと返した咲菜の母親は『晩御飯も食べてって』と優しく微笑む。

 所々にシミのあるエプロンを身に着け髪を高い位置で纏めるその姿はとても頼もしく、パワーを感じる。

 家の中は隅々まで清掃が行き届き整頓されていて清潔感を感じる。

「私の部屋は二階だよ! いこ!」

 とても幸せな家族なのだろう、そう直感的に思いながら咲菜の後についていく。

 階段を上がり一番手前の扉の中に入る。暖色を基調として明るい部屋……そして以外にもウサギやクマのぬいぐるみが多くある。

 部屋の中央にあるローテーブルにクッションを二つ置き、対面して座る。

 咲菜の母親が温かいココアとお菓子を持ってきてから事は始まった。

「それでリリィちゃん!」

「はい」

 きっかけを作る為の呼びかけに自然に反応した。

「年上の男の人と一緒にいるってほんと?」

「へぇっ?! いやっ、え、えっ? なっ、なんっ? えっ?」

 転換を作る為の台詞に狼狽と驚愕を返した。

 瞬きの回数が増え、何度も咲菜の顔を覗く。

「リリィちゃん、落ち着いて……」

「どうして知っているんですか?」

「花音ちゃんから聞いたのと、十月の終わりのほうに駅で見かけて――」

「――十月の……終わり、駅?」

 記憶を探り一カ月と少し前のことを思い出す。

 十月の終わり、西宮高校の学校祭が行われたあの日の西宮駅での出来事。

「ママと一緒に聞いちゃって、告白されてたの?」

「んー…………なんー、えぇぇぇ……」

「ん?」

「どんなことを言っていたか覚えていますか?」

「えーっと、リリィを返してもらいます。とか、愛してる。とか」

「――ッ!」

 駅の喧騒の中でも一際目立っていたとは思っていたが、投げられた台詞までもが周りに明確に聞こえていたことを知り羞恥神を煽られる。

 目を強く瞑りどんな言葉を返そうかと悩む。

「いいなぁ……大人だなぁ」

 咲菜は幼さ特有の純粋を孕んだ声でリリィの瞳を見る。

「いえ、そんなことは」

「花音ちゃんもお兄ちゃんと一時期一緒にいたし、リリィちゃんもおんなじで……なんだか私だけ置いてけぼりにされちゃったみたいで。なんだかなーって」

「花音ちゃん……」

「まだ誰かが好きとかわかんないし、年上の男の人は怖いなーって思うし――」

 数秒間、咲菜の動きが止まり数度瞬気をする。

 ゆっくりと首が傾き、この静寂が思考を整理しているものだとわかり、リリィは次の台詞まで待つことにした。

「――あれ? 大人と子供って付き合っちゃダメじゃなかった?」

「高校生は……大丈夫? なはず」

 そう口にしたものの、背筋に冷たくて嫌な汗が流れ、法令等を再確認しなければならないと思う。

 成人してしまえば……気が急いてしまう。

「ねぇ、どんな感じなの? やっぱり楽しいの?」

 主語の無い質問が飛んできたが、何を聞こうとしているかは容易にわかった。

 戸惑い、乱れた気持ちを深呼吸で整えて言葉を考える。

「一緒に暮らしているのは翔太さんと言う方です。西宮高校に通う一年生で、部活動は演劇部の部長をしています」

 それからリリィは婚約相手との思い出を語る。

 ゆっくり丁寧に。

 自分にとってどれだけ大切で、どれだけの経験を共にしてきたのか。

 その中には勿論、咲菜の知る西宮駅での出来事……翔太と悠久の時を過ごす第一歩も含まれていた。

 甘美な時間と想い合った夜。

 その後再び訪れたふたりきりの時間。

 花音と見た劇のことも忘れることなく語った。

 語ることが無かったのは共感覚と翔太の周りに女性が多くいること。

「いいな、凄いなぁ……私の知らないことばっかり。いつかきっとそんなことが私にもできるのかな?」

「……えぇ、きっと」

 奇跡的な自分の経験と似たものをもう一つ、と考えると不可能と言わざるを得なかったが、奇跡という言葉が存在する以上、それぞれに起きても不思議ではないと思えた。

 だからリリィは優しく言葉を返した。

「となると、後は浮気しないかが不安だね!」

「うっ、浮気……」

 脳裏に浮かぶ複数の女性の顔。

「どう?」

「ない……と思います。いえ、ありません!」

 頭を何度も横に振り、考えたくないことを否定する。

 (翔太さんに限ってそれだけは絶対にありません)と脳内で唱え続ける。

「じゃあとっておきのことを教えてあげましょー!」

「とっておき?」

「翔太さんって周りから、すごく好きだよ! って言われてるんだって」

「……え?」

 翔太の事情を知っていることと、好意を寄せられているという事実……二重の驚きを受けリリィは平静を装うことはおろか、何故か腕を上下左右、あらゆる方向に振り回し始めた。

 あまりにもおかしな光景に肩を震わせるように笑う咲菜は補足の説明を続ける。

「実はね、翔太さんのお姉さんに聞いたの!」

「?!?!?!」

 繋がりの無いはずのふたりが繋がり、脳内で管理していた人間関係がぐちゃぐちゃに崩れていく。

 どうして知り合ったのかと疑問が膨らみ、視線を咲菜に合わせると、どうしたの? という視線が返ってきた。

 疑問に疑問を返すという愚行は幼さ故のものなのだろう。

 その愚直さがリリィの心を乱し、これから起こる悲劇へのきかっけとなった。


こんにちは、

下野枯葉です。


もう最近疲れが隠せずにいます。

東西南北をトン、ナン、シャー、ペーと読んだときは会社と麻雀のどっちをやめればいいのかなーと思いました。

えぇ、麻雀にハマってめっちゃやってます。

全然上手じゃないけど。


さて、今回はリリィのお話です。

純粋な心を見てもらい、その異質さを再確認してもらう回です。

翔太との関係と年齢。

普通におかしいんだよね。

なんか、作者が現実に帰ってしまっておかしいなって。

でもフィクションだからいいじゃん! って思ったんですけど、ちょっと現実に片足だけ突っ込めば今後の展開に良い影響を与えると思い書きました。

ほんと、いいなこれ。

書いてて楽しかった。

次はもっと楽しくなる予定です。


がんばおー。


では今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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