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PRIDE or BRIDE  作者: 下野枯葉
英断編
55/121

四十話 ロリコンは演者に踊らされる

 どうもこんにちは。

 天国紫雲です。

 休日が開けて部室に行くと二千翔と翔太が話してまして……どうやら台本に加筆して題を決めたらしいです。

 二千翔は加筆に対して何も思わなかっただろうか?

 加筆は改善という捉え方もできるが、その作品の否定と捉えられるものなんです。

 しかも二千翔は以前、宮代翔太に台本を書いてもらいその差に驚愕と劣等感を感じているはずなんです。

 どうして引き受けたんだ?


 でも渡された修正済みの台本には惹かれる力があった。

 見続けたい。

 結末を知ってもその先の景色を見たくなった。

 杠葉翔太の演劇に対する天性の才と、それを描き魅せる才が噛み合ったようだった。

 引退したが……まだ努力しないといけないみたいだな。

 負けたくないから。



 四十話始めます。



十二月十七日

 午後五時を過ぎ、演劇部の部室では練習が続いていた。

柊花は上手と下手から囁く声を出しつつ、現実を叩き付けていた。

 

悲しいことは何もない。

 夢を見ているだけでは何もない漫然と過ぎる世の中に押し潰されてしまう。

 それが死となることもしばしば……そこまで行かずとも気を狂わせるのには十分で、泣く声は幾数も重なり当たり前となって誰の心にも届かない。

 だから現実を教える。

 悲しいことは何もない。


 世界観に惹き付けられながらも柊花は演じる。

 羽衣石先輩と俺が描いた『星の語部』に魂を吹き込む。

 俺は柊花の演技に圧倒される。

 当然のように放たれる台詞に心が動かされる。

 本当に現実を認めて夢を諦めてしまいたくなる。

 描いた世界が本当に眼前にある。

 そこに芽衣と天国先輩が演劇としての魅力を掛け合わせる。

 天国先輩が演じる教師『創地』は生徒ふたりが現実を見せられた事実に、嘆息を一つ。

 その嘆息のリアルさ。実際に聞いた瞬間に練習を中断するものだと勘違いをしてしまった程だ。俺は一瞬考えを巡らせ、集中を欠いたことへの指摘が入ると思い怯えて脈が妙に早くなってきた。

 あぁ……ワクワクしてきた。

 俺が想像し得る最高のメンバーでの舞台だ。


 これを送るのはたったふたりだと思うと少し残念だ。



 順調に練習は進み、加筆部分も上手く纏まりそうだ。

 大きな矛盾は無いものの話の流れや演出を決める中で変更した方が良いものが所々浮き出てきた。

 照明、音響の使用はすべきなのか?

 三送会は体育館のステージを借りて行うが、裏方は顧問に頼もうとしていた為最低限の動きにしようと考えていた。

 しかし、もっと動かしてもいいのではないか?


 というか、送られる側が舞台上にいるのがイレギュラー過ぎて何もかもコントロールできないんだけど!


 そんなことを考えながら部室の鍵を職員室に戻し、手袋を着けた。

 一段と冷えるようになってきて陽もとっくに落ちた。

 帰路に就く前に持ち物の確認と、スマホに通知が無いか確認する。

 リリィからのメッセージが一つ。

 友人の家に遊びに行き、そのまま夕食を御馳走になるらしい。

 これでもかと夕食を用意できない謝罪の文字が並んでいた。

 俺は『友達を大切にしないとだよ』というメッセージを送り、帰りながら外で済ませてしまおうと考えた。

 久しく行っていないファストフードの店に行こうか? それとも最近開店したラーメン屋にでも行こうか? ……等と考えていると柊花が昇降口の風の当たらない場所で立っているのが目に入った。

「翔太君、相談があるんだ」

「相談?」

「この後付き合ってくれない?」

 白い息と共に出た声と、その姿の周りに見えた薄い紫が凄く綺麗だった。




 駅近くのファミリーレストラン。

 値段が安い為学生からの人気も高く、周りを見ればチラホラと制服姿の学生がいた。

 そんな中に俺と柊花はいる。

「……」

 気まずい……とかそんなレベルじゃない。

 婚約相手がいるのに女性と一対一での食事は即撤退レベル。

 しかし相談事とあっては撤退することは許されない。しかも部員とあってはもっと許されない。

「翔太君、決まった?」

 柊花は俯く俺の顔を覗きながら注文の確認をしてきた。


 睫毛が長い、瞳孔がほんの少し開く、瞬きが不規則に三回、薄紫の色。

 ねぇ、どんなことを思っているの?


 その言葉を仕舞って平然を装い返事をする。

「えー……ドリアとドリンクバーで」

 メニューを眺めていたものの内容が全く頭の中に入らず定番にしてしまった。

「ポテト、一緒に食べない?」

「おう、いいよ」

「……ねぇ、恋人みた――」

「――いだけど違うからね?」

 なにそれ怖い。

 反射的に否定をする。しなければならないから。

 少しでも気を抜けば引っ張られてしまいそうな瞳と台詞が目の前で踊る。

 いつもの柊花は何処へ行ってしまったのだろう?

「んー……翔太君は攻める女性は嫌いなのかい?」

 一転。

 纏っていた雰囲気が消えた。

「え?」

「今日は色々と試してみようと思ってるんだ。それが今日の相談内容で」

「あ……はぁ、なるほど、ねぇ?」

 その時、柊花の言っていた『もう、待てない』の意味を理解した。

「とりあえず注文しちゃうね」

 呼び出しベルを鳴らす柊花を見ながら次の一手を予測する。


 さあ、気の抜けないドキドキな夕食が今始まる。


こんにちは、

下野枯葉です。


急げ!

日曜が終わる!

ギリギリでの投稿!


間に合わせてやる!(間に合ってない)


今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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