三十九話 ロリコンが星空に見た色
こんにちは。
杠葉翔太です。
最近起こったことをありのまま話すぜ!
共感覚を得た。
世界レベルの大企業が主催する食事会への参加決定。
婚約相手の誕生日を直前で知る。
同級生に再度告白され、逃げた。
台本が書きたい。
こんなところですね。
どーしようね?
とりあえず休日は台本を読みつつ自分の書きたい台本を書いていこうと思います。
いや、羽衣石先輩にぶつけたら面白く化学反応を起こすのだろうか?
先輩たちには最高の舞台を届けたいからなぁ……それもアリだな。
週明けにでも聞いてみるか。
柊花は……逃げるべきなのか、向き合うべきなのか。
……でも見たいよな、柊花の世界。
食事会は。
気合で!
リリィの誕生日は長考が必要だ。俺の最善を以って向き合う!
よし、決定!
んじゃあ行くか!
三十九話始まります!
十二月十五日
「あああぁぁぁ……」
声を漏らしながら部屋で寝そべる。
畳の匂いが鼻腔を刺激する。嫌いではない……むしろ好きな匂いだ。
心地良さが全身を包んで睡魔が襲う。
まだやり残したことがある……眠るわけにはいかない。
……このパソコンもなかなかの働き者だ。
二週連続での徹夜稼働を果たしたのだ。
そう、二週連続で俺は徹夜した。
昨日の晩、二千翔先輩に台本の相談をしたところ『加筆してくれるの? じゃあお願い!』と返事があった。
その為、熱中して書き続けてしまった。
朝六時。
土曜と言うこともあってか外から聞こえる音は少なく時折鳥のさえずりが聞こえるだけだ。
まだ陽も昇っていない為外は暗い。曇った窓を手で拭いて景色を眺めた。
冷たい。
指先の熱は窓硝子に吸い取られ、不快さを感じる。
と同時に背後から襖の開く乾いた音がした。
リリィが目覚まし時計を使うことなく起きた。
これからリリィの休日は始まるが俺はやっと平日が終わった。金曜の三十時という表現もまた一つだ。
書き終えた台本を思い出し動悸が囃し立ててきたが眠気が勝り、表にはしなかった。
俺が眠る為の準備を整えるリリィを横目に台本の表紙に『星の語部』と題を記した。
さぁ……。
煌々と輝く世界をこの手で創ってみせる。
十二月十七日
『星の語部』が演劇部の部室で演じられていた。
登場人物に正式な名前が付けられ、より気持ちが込めやすくなった。
今回の加筆修正に対して羽衣石先輩は満足そうに頷いてくれ、他の部員からも高評価を得ているように思える。
物語の大筋は固まった。
天文学を志す男女。
過去の挫折がふたりの脳裏に浮かび、再び天文学を諦めようとする。
そこからの転機。
今、演じているのは挫折を刻んだシーン。
◇
草原にシートを敷いて空を眺める。
舞台のセンター下手寄りの位置に座り、スポット。
ホリゾント幕は真夜中を映し、星球と呼ばれる照明が灯る。
少年、神田は純粋な眼差しと夢を持って語る。
「満天の星空を見た。この視野の全てが星で埋まる……いや、視野の全てが語り継ぐべき物語で埋まっていた。誰の思想だ? 誰が紡いだ? どうでもいい……俺はその全てを知って、語りたい」
上手からの囁き。
夢を否定して正しい現実を叩き付ける囁き。
「そんなことより勉強しないと先生に怒られちゃうよ?」
「……そんなこと? 俺の生きる意味だ!」
激しい憤りを隠さず叫んだ。
対してセンター上手寄りの位置に少女、星宮が空を指しながら佇む。そして神田と同じくスポット。
将来への道……その理想を膨らませ、祈るように言葉を紡ぐ。
そしてそれを己の道と確信し貫く。
「満天の星空を見た。私の見た星はほんの一部にすぎない。見えない星がある……その事実を知って悔しかった、強い信念が灯った。私はこの空が知りたいだけなの!」
下手からの囁き。
信念を妄想と笑い、どうしようもなく当たり前の現実を無理矢理焼き付ける囁き。
「そんなことよりお手伝いしないとお母さんに怒られるよ?」
「……そんなこと? 笑うな……笑うな!」
涙を流しながら声を荒げる。
「でもさ、現実を見ないと崩れ落ちちゃうよ。いいの?」
ふたりの間から目潰しと呼ばれる客席に向けての強烈な照明。
囁く声は酷く正しい。
◇
ここから神田と星宮の挫折を醜く演じる。
夢は早々に切り上げるべき……その考えを軸の一つとして修正を行った。
高校生如きが現実を語るなと一喝されてしまうと逡巡したが、逆を考えた。高校生だからこそ描けるものがある。俺だって夢を見て、現実を見たことがある。
純粋な心で描いてもいいだろう? 詰まらなくなるわけがないんだ。
俺はもう見えるから。
こんにちは、
下野枯葉です。
やっべ、日曜に間に合わなかった。
昼寝とかキメてる場合じゃなかったよ。
さて、今回は再び劇を登場させます。
本編と台本を書く所業は結構大変です。
でも楽しくてやりたくなっちゃうんですよね!
新しい台本には二千翔と翔太の想いを乗せつつ、下野の想いも乗せさせてもらいました。
と、いうのもこの台本はとても思い入れが強くなったものとなっていまして……私情を入れたくはなかったのですが、どうしても……となりまして……。
でも本編的にも最高の台本となっていますので、どこかで公開できればなと思っています。
そして、ちょっと謝罪、と言いますか、訂正したいことを一つ。
前回、共感覚について記載し、下野自身もそれを持っていると書きました。
ですが間違いだったかもしれません。
感情に色が見える、と言うのはもしかしたらオーラリーディングと呼ばれるものなのかもしれません。
オーラリーディングを共感覚と同一とする考えもあるようなので、完全なる間違いではないようですが、一応話しておこうと思います。
そこで、話を統一しようと思います。
下野と、翔太君の持つ色を見る能力に関しましてはこれまで通り、共感覚と認識していくことにします。
詳しいことがわからない情報ですので、慎重に扱いたいとは思います。
でも、下野自身の体験したことはストレートに描いていこうと思っています。
と、上記した通りにこれから書いていきますのでよろしくお願いいたします。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




