三十六話 ロリコンはシナスタジアに心を奪われる
こんにちは。
杠葉翔太です。
花音ちゃんへの劇も終幕して、一段落しました。
と、思ったか?
残念。
翌日からの学校はかなりキツかったです。
もうね、演劇部から即興劇の刺客がね、終日襲ってきますよ。
あれ? 俺、部長だよな? なんでや!
病み上がりにはいい準備運動だよね? と羽衣石先輩は言っていましたが……。
おおおぉぉぉ……反射的に役に入れないんだよなぁ。
頑張らないと、駄目だよな。
よし、切り替えていくか。
そんじゃあ、三十六話。
始まります。
十二月十四日
チャイムの音が西宮高校に響き、昼食の時間を告げる。
「さてと、お弁当っと」
退屈な午前の授業を終え、学校生活の中でもトップクラスに楽しみなリリィのお弁当を食べる時が来た。
蝶結びの紐を解き、弁当箱を取り出そうとした。
弁当箱の上に紙の感触。
「……ふりかけ?」
手を抜いたとは言わないが、リリィならふりかけではなく、そぼろを作るだろう。
そう思い『ふりかけ』に不信感を抱きながら取り出す。
「えっ」
果たし状。
「リリィ……果たし状って」
恐る恐る果たし状を裏返した。
『二千翔』の文字。
「あ」
全てを悟り、振り返る。
刹那。
殺意を感じ、途中で動きを止める。
「察しはいいようだね」
「もう少しで刎ねていたが」
二千翔先輩と天国先輩はいつの間にか俺の首を木刀で挟んでいた。
「ちょっ、木刀なんてどこから? というか、学年違うのになんで!」
指一本動かせない状況で心の底からのツッコミと、指摘をした。
「「…………」」
沈黙。
それが即興劇での次の台詞を待つものだとわかった。
「え……ここでも?」
教室という環境で役に入ることに恥を感じてしまい、そう台詞が出た。
「解散」
「だな」
あっれー?
俺が悪いのか? うん、悪いわ。
即興……ね。
演劇部による即興力を鍛えるための特別レッスン。
始まってからというもの、俺の生活は大きく変化していた。
先程のような展開が毎日連続している。
「と、それよりも弁当だよ」
やっと弁当を食い始めた俺は、その味に舌鼓を打った。
……女将を呼べっ!
おっと…………。
そして五限目が終わり、科学室から教室に戻る途中。
額に衝撃が一つ。
「ノートの切れ端?」
飛んできた方向を見ると芽衣がいた。
紙が折りたたまれ、輪ゴムを使い、パチンコの要領で放っていたらしい。
「HEAD SHOT……隙を見せたら終わりって、言ったわよね?」
わーお、ねいてぃぶ。
次こそはと、台詞を瞬時に考えた。
「風穴……か。まいったね、どうも」
額に軽く指を当てた後、血を確認するように指を見ながらそう言った。
「……」
沈黙。
「え? 良かったよね? ちゃんと反応したよね!」
芽衣の視線があまりにも冷たくて、鋭くて、自分の功績を示す。
必死だった。
周りから見たら滑稽だっただろうな。
「風穴開いたなら倒れて。サイボーグ設定は望んでないよ」
「あ」
尤も過ぎる指摘。
普通の人間は額に穴が開いたら死んでしまいます。
「解散!」
その言葉を残し、立ち去る芽衣の背中が遠く感じた。
「あぁぁぁあああ」
絶望。
認めたくないが、俺の実力は本当の本当に落ちているらしい。
嘘であってほしい。
ところがどっこい……夢じゃありません!
おやおやぁ……俺は一体何を。
放課後になり、部室へ向かう。
警戒心MAXで。
さぁ、来るなら来いよぉ!
順番的に柊花だろうな?
と考え部室の扉を開けると、案の定、柊花がいた。
「私は……」
机の上には台本とボールペンが一つ。
俺が扉を開けたと同時に振り返ったらしく、長い髪が少し揺れていた。
暖房を点けて間もないのか、まだ部屋は凍えるくらいに寒かった。
「……貴方の全てが欲しい」
儚い表情。
俺は一度深呼吸をして思考を切り替える。
(柊花。その表情、惹かれてしまいそうだ)
即興劇のクオリティとは思えぬ魅力に感嘆を漏らしそうになるが、グッと堪え、返す台詞を考えた。
「代わりに貴女の全てを頂こう」
想像する舞台は無垢な少女と狡猾な男の物語。
俺と柊花の考えは一致しているだろうか?
不安を持ちながら、視線に心を宿す。
「喜んで」
驚きから一拍置いて、笑顔を咲かせた。
一致したことを確認して、一直線に柊花に近付く。
震えながら差し出された手を前にして、跪いた。
「ほっ、本当に?」
「あぁ」
手を取る。
そして手の甲に口づけを……。
……。
口づけを。
……。
あれ?
終わらないな。
あれれ?
……。
「翔太君、まだ?」
柊花の弱々しい声が耳に届いた。
こんなにも力が無く、華奢な印象を与える声は初めて聞いた。
「え?」
視線を上げる。
うるうると瞳に涙を溜めていた。
「えっと、あの」
状況整理をするため、台詞を繋ぐ。
「……え? あっ、あれ?」
互いに困惑。
「いや……さ」
「そっか、エチュード……エチュードだよね」
俯き、
「そうそう! エチュードだよ! 今日はみんなから仕掛けられたからさ、柊花からも来るのかなって思ってさ! いや、ごめ――」
手を強く引かれ、柊花の顔がグッと近くなる。
「――続けるから」
耳元での囁きが妙に頭に響く。
そして、耳に優しいキスが一つ。
「あ……え、え?」
「言ったはずだよ、貴方の全てが欲しいって。翔太君がリリィちゃんのものだったとしたら奪ってみせる。そうでないのなら翔太君の所有権を私にする。もう、待てない。翔太君が好きだから」
柊花の脈動と香りを直接感じ、昂る。
熱く燃えるような宣言をした柊花に、真っ赤な意思が見えた気がした。
差し込む夕日だろうか?
いいや、柊花の心が見えてしまったのだろう。
この昂りが、この視界が……俺の心を揺さぶる。
どうしようもなく、俺は……。
世界を描きたい。
こんにちは、下野枯葉です。
新章に突入しました。
いえーい。
あぁ、楽しい展開沸いてきたので頑張って書いていこうと思います。
ちょっと近状報告を。
最近の暑さで心が折れそうです。
仕事中とかもう、死にかけてます。
汗が、辛い。
夏が嫌いなのでもう、うん。
早く、秋にならないかなーって。
そう思います。
さて、本編に触れていきましょう。
英断編
が開幕しました。
ざっくりと説明するとこれまでキャラクターたちが積み重ねてきた『悩み』とかを断って頂きたいと思っています。
メインは翔太、芽衣、柊花の三人です。
他のキャラクターにも動いていただくので楽しみにしていただければなと。
あー、楽しくなってきた。
続き書いてきます。
では、今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




