二十五話 ロリコンの一手、ロリコンへの一手
十二月二日。
朝、目を覚まして天井を見た。
匂いと光景の違いに戸惑ったが、状況を思い出して安心した。
俺の人生の中で一番居心地の良い場所だ。
「翔太さん、おはようございます」
上体を起こした俺に声を掛けたのは、エプロン姿のリリィだった。
幸せを噛み締めたとき、瞳に涙がっ……!
おはようと、
エプロン姿に、
涙する。
嗚呼、一句詠めた。
「どうかなさいましたか?」
数百年前の詩人のような、悟った顔をしていた。
そりゃあ心配されるよな。
「いいや懐かしいなって思って。……始まったね」
部屋を眺めて一息。
大好きな光景だから、すごく沁みた。
「はい、始まりました」
布団の上で胡坐をした俺の隣にリリィは座った。
同じく部屋を見渡す。
「改めて、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
笑いながら頭を下げる。
まぁこの時の俺は何も知らなかったから、こんなに笑っていられたんだろうな。
「それとさ、花音ちゃんのことなんだけど」
「はい」
「まず初めにリリィに頼みたいことがあるんだ」
俺は目先の問題に向けて動き始めた。
とても簡単だが、とても勇気が必要な一手を提案する。
それは解決のための一手だ。
「?」
疑問を浮かべた表情に真剣な眼差しを突き付けた。
◇
「ゆず君も罪な人だよね?」
西宮駅の駅ビルにあるファミレスで二千翔と紫雲は朝から駄弁っていた。
話題は自然と学校での出来事から、部活の話へ。
そして、翔太へと移行した。
「……と、言うと?」
「リリィちゃん、だっけ? 一人に絞るとはねぇ……」
ストローを齧りながら一昨日のことを思い出した。
リリィという女の子。
「……」
紫雲は何も言葉を発することなく、ただ俯いた。
「あっ……ごめん」
二千翔は『一人に絞る』という言葉を思い出し、反省の言葉を漏らした。
「いいや、俺も翔太も同じってことだから」
そう、翔太と紫雲は同じなのだ。
翔太はリリィを。紫雲は二千翔を選んだ。
その気持ちの強さはふたりとも負けず劣らずだが、紫雲の気持ちは翔太とは全く違う方向で歪み、捻くれていた。
「と言いつつ、私は何もしてもらってないよ?」
気まずい空気を誤魔化すように、冗談交じりに台詞を漏らす。
「契約だろ?」
「……うん」
紫雲からの反応の空気の違いにしょんぼりとした。そして、現実を思い出して唇を噛み締めた。
「やめだ、やめ。そんなことより、台本だろ?」
自分のも非があるのを認め、話を変える。
思い出したくないことは誰にでもある。
「うん。ゆず君のセンス……羨ましいよね」
「天才ってのはアイツのことなんだろうな。自覚が無いのが心に刺さる」
事実。
紫雲が学校祭の台本について褒めたとき『俺じゃ磨ききれないですよ』と言っていた。
「アドバイス貰おうかな……」
「いいのか?」
「んー……先輩の、意地が……」
頭を抱え、机に突っ伏した。
翔太にアドバイスを貰えば、今回の台本がより良いものになるだろう。
しかーし……考えている。そう、二千翔は葛藤をしていた。
「まったく、翔太の実力を見込んで引き入れたのは二千翔だろ?」
「ぐぬぬ……聞いちゃう? 聞いちゃおっか? しかしそれはプライドが許さない」
「そんなプライド捨てても笑われないぞ?」
ニッと口角を上げて、提案をする。
「むー…………物語る……チカラ。ね?」
翔太のそのチカラが羨ましくて仕方がない。
演劇を始め、素人の脚本家として数年間を過ごしていたのだ。
たった半年と少しの後輩に、実力の差を見せつけられた。それは、屈辱と表現するには十分だった。
でも、翔太の見る世界、魅せる世界を知ってみたくなり、一手を講じることにした。
こんにちは、
下野枯葉です。
先週は緊急事態宣言の解除に伴って、リアルがバタバタして投稿できませんでした……無念。
その代わり、ネタはドクドク沸いてきました。
さて、今回は『一手』がテーマです。
転、と位置付けられるんでしょうか?
勉強不足ですね。
一手。
翔太はどうなるんだろう。翔太はどうされるんだろう。
乞うご期待!!!
かみんぐすーーーん!!!
では、今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




