二十話 ロリコンを中心に青春は彩られる
こんにちは……月見里芽衣です。
……はぁ。
ちょっと疲れが隠せなくて。
と言うのも、二千翔先輩に色々と仕込まれて……。
……。
上目遣いって何?!
首を傾げながら問いかけるって何?!
男は胸しか見てないから寄せてみろ?! 私に胸は無い! というか幼児体型の二千翔先輩も胸無いだろ?! って、その前に翔太はロリコンだから!
おいおい! 何言ってんだ私ぃ!
ん? 紫雲先輩も……ロリコンってこ――
――おっと誰か来たようだ。
話を戻して。
いつもの演技でやってみて、と言われても無理だよ……。
……恥ずかしい。
舞台上では平気なのに……なんでだろ。
それでも、頑張らなきゃ。
そろそろ、やらないとですね。
二十話……行きます!
十一月三十日。
宮代家。
「兄さん……行ってきます」
花音は大きく息を吸い込み、目を閉じながら呟いた。
二階の一室の目の前。
扉を開けるが、決して入ることは無い。
ランドセルを背負い直し、花音家を後にした。
この部屋は花音の兄の部屋。
音の無い部屋の家具は全てが埃を被り、冬の寒さを一層際立てる冷たさに覆われていた。
「翔太さん、お弁当です」
杠葉家の玄関。
「ありがと」
「今日は予定が違いますが、迎えに行きますよ」
先週決定した引っ越しの影響で、今週の食事会は杠葉家で行われることになった。
それに伴い、リリィは迎えに行かずに家で待っていれば良いはずだ。
「寒いし、無理しなくてもいいよ?」
明日はから十二月だ。
先週よりも一層気温は下がり、外で待つ、という行為は中々の苦行だ。
九歳の女の子にそんな無理をさせる訳にはいかない。
「いいえ、行きます」
リリィの瞳を見た。
この目をしている時は何を言っても聞かない。
意外にもリリィには頑固な部分がある。
こうなったら諦めよう。
「そっか。じゃあ行ってきます」
「お気を付けて」
心地の良いやり取りを終え、外へ出た。
本当に寒くなった。
吐いた白い息をその場に残し、俺は学校へ向かった。
今日は羽衣石先輩の台本の読み合わせだ。
高校生にもなってこんなにワクワクするとは……。
西宮駅。
朝の駅前。
腕時計を一瞥しながら駆けるサラリーマンや、制服を着た学生が雪崩のようにバス停に向かう中、紫雲はその光景を眺めながら時より吹く冷たい風に身を震わせていた。
「紫雲、お待たせ」
コンビニの袋を持った二千翔が紫雲のもとに駆け寄った。
「おう……飽きない?」
紫雲はコンビニの袋の中にある昆布とおかかのおにぎりと、サラダを指差しながら聞いた。
というのも、二千翔は高校に入学してからずっとこの三品を昼食としているのだ。
「ここまでくると『飽き』という概念は無いね。もう『愛』だよね」
二千翔のキメ顔。
「結婚してしまえ」
紫雲の呆れ顔。
「誓いの言葉を言えない方とは無理ね」
「俺がアテレコしてやる」
「CV紫雲は笑っちゃうから却下」
「失礼な」
唐突な即興劇はとても簡単に終わり、ふたりはいつも通り半笑いしながら一度頷いた。
「ほら、行くよー。今日は読み合わせ、ゆず君達の成長……楽しみだね」
コンビニの袋をトートバッグの中に入れ、歩き始めた二千翔は後輩達の姿を思い浮かべながら紫雲に視線を送った。
「……あぁ」
紫雲は二千翔の歩幅に合わせて歩き、自分も心の底から楽しみにしている為、肯定を返した。
そして、余計なことを一つ思い出し、
「それと、三限目の小テストもな」
意地悪な口調で二千翔に釘を刺した。
「小……テスト? やばいかも」
「よっしゃー張り切っていこー」
「おぉー……」
二千翔は全く元気のない声と共に拳を上げ、重くなった足取りを懸命に動かしていた。
西宮高校。
「とりあえず声を……いつも通りだから、うん、平気だよね……」
芽衣はブツブツと呟きながら胸を撫でる。
動悸が激しくなる。
「二千翔先輩のアドバイス通りに……うん、大丈夫」
この一週間で得たものを今日に賭ける。
うら若き少女は、青春を大いに満喫し、堪能し、最悪の結末が待っていようとも進むと決めたのであった。
一方、柊花は教室で静かに思考していた。
先週のリリィの言葉、そして自分の放った言葉。
自然と、悠然と紡がれた自分の言葉の意味を考える。
きっと茨の道を進むのが正解なのだ。
それは理解している……過酷過ぎる道で、一度進んだら戻れない道と知っている。
「ん……」
進まない選択肢もあったが、それを選ぼうとするとリリィに負けないという強い気持ちが込み上げる。
負けたくない、負けない……勝ってやる。
意思は固く決まり、その為の最善策を見つけた。
「私にできること」
柊花の覚悟は再び灯り、最高の舞台を作る道がその瞳に映った。
「うん」
バッグから台本を取り出し、集中モードで読み進める。
自分なりに舞台を描き、照明と音響を乗せる。
役者は各々の感情を宿し、世界を作る。
柊花の見る世界は未だ不安定ではあるが、核はしっかりしている為、独特の輝きを放っていた。
それは誰かの心に焼き付く輝きだ。
こんにちは、
下野枯葉です。
リアルが珍しく連休です。
なので今週はいつもより多く投稿出来ればと思っています。
さて、今回はロリコンを中心に……という題です。
昔、……を中心に世界は回っている。みたいな台詞を聞いたことがあります。
懐かしい。
意図せず、似た題になりましたが、まぁ主人公を中心にするのは必然ですね。
ちょっと、意味合いが違うか。
閑話休題。
前回の後書きでも記した通り、最近キャラクターが生き始めたので楽しく書けています。
でも、深く関わってしまうと、残酷な現実の中で動かすのが辛くなります。
その加減……慣れていきたいです。
さて、続きを書きますか。
時間はたっぷりとありますからね。
では、今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




