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PRIDE or BRIDE  作者: 下野枯葉
選択編
2/121

一話 ロリコンと舞い降りた獣と

 皆さんこんにちは。

 杠葉翔太(主人公)です。

 先日、金髪幼女一行に婚姻届けを叩き付けられたことを、エジプトに出張中の父に話しました。

 開口一番『杠葉一家に犯罪者が出てしまったか』と言われました。

 悲しいかなぁ。

 俺も驚いていることを伝えると、『犯罪者に言われても説得力ねぇなぁ』と言われました。

 もう肉親とは思わねぇよ!


 そんなこんなで、一話始まります。




 二日前。

 学校。

「さーてと……今日はもう解散かなー」

 俺は振り向きながら声を出した。

 ここは西宮高校の多目的室。そして今は部活動の真っ最中だ。

 俺は演劇部に所属し、一年生ながら部長をしている。

 三年生の先輩が先月引退し、二年生の先輩は元からいなかった。なので一年生の中から部長を選ぶことになり、俺が選ばれたワケだ。

「ぶちょー、早くないですかねー?」

 右手に小道具の剣を持ちながらそう言うのは、月見里芽衣やまなしめい

 芽衣はこの部の会計担当である。身長は小さく、ギャルゲで言えば元気っ子というやつであろう。事実、体育の成績はクラス一位らしい。(男子に勝つってどういうこと?)

「芽衣、もう六時だよ。解散の時間だ。部長を困らせてはいけないよ」

 冷静にそう話すのは星奈柊花ほしなとうか。副部長だ。身長はそこそこありスタイル抜群。我が演劇部の華、と言っても過言ではないだろう。でも、まだ三か月と少ししか部活をしていないため距離を感じる。悲しいかな。

「よーし、片付けるぞ?」

 俺はそう言って、急いで片づけを始めた。

 そういや自己紹介がまだだった。

 俺の名前は杠葉翔太ゆずりはしょうた。西宮高校に通う、ごく普通の高校一年生だ。身長体重共に平均的であり、運動は得意な方ではないがそこそこできる。勉強も中の中と言ったところだ。

「部長、そんなに急いでどうしたんだ? なにか急ぎの用があるなら、代わりに部室は閉めておくが?」

 別に急いでるつもりはなかったのだが自然と体が急いでいた。

 今日は大切な用事があるのは事実だ。

「大した用じゃないから大丈夫だよ」

 いいや。嘘だ。俺にとって一大イベントが待っているのだ。一刻を争う。

 でも、理由を説明したところで俺は批判を買うことになるだろう。

 そう! ラノベを買いに行くのだ!

「翔太、どうせラノベ買いに行くんでしょ?」

 芽衣が半笑いでそう声を出した。

「ふふぇえ?」

 思わず間抜けな声が出てしまった。

 なぜ……知っている?

「今日クラスの男子が『新刊だぁ! 俺は帰るぞぉお!』って言ってたからさ、どうせ翔太も買いに行くんだろうなーって」

 その通り。芽衣は探偵か何かかな?

 今日は大人気のラノベ『すみこみ☆ロリータ』通称『すみ☆ロリ』の発売日だ。

 主人公の男子高校生のもとに、突然ロリータが現れ住み込みでお世話をしてくれる……というお話だ。うらやましい。けしからん。

……うらやまけしからん!

「……当たりだよ」

「やっぱりか。柊花っち、翔太に慈悲はいらないよ。働かせなー」

 呆れ顔をしながら芽衣は片付けを始めた。

「そうだったのか。でも売り切れたりしたらまずいのではないか? それなら、私に任せてくれても……」

 本気で心配してくれる柊花……。優しいなぁ。芽衣とは大違いだ。

 俺にも慈悲をくれ!

「あはは、心配しなくてもラノベが売り切れることはあんまりないから大丈夫だよ」

「ならよいのだが……」

 その後部室を閉めて鍵を職員室に戻した俺は全力疾走で学校を後にした。



「急げ! 急げ!」

 そう呟きながら俺は本屋に向かって走っていた。

 走り慣れた道のり。

 ラノベの発売日は毎回こうして走っている。

 公園を通り過ぎ、左に曲がれば本屋が見える。

 もう少しだ。

 そう思ったとき、ふと公園が視界に入った。

 公園の中央にある大きな木の下で、金髪の小さな女の子が木の上を見つめていた。

 外灯に照らされた顔は何か心配そうだった。

 いつもなら無視をしていただろう。

 でもなぜか素通りをするということができなかった。

 俺がロリコンだからか? いいや違うだろう。

 女の子に何か惹かれた。一目惚れか? 本当にロリコンって公言してしまうじゃないか。

 でも、それでも、惹かれてしまった。

 駆ける足は自然に止まった。

 公園に入る。一歩、また一歩。歩を進めて女の子に近づく。

 俺の足音に気付いたのか、ビクッとして女の子は振り返った。

 瞳が青い。

 引き込まれてしまいそうだ。

「どうしたの? 何かあった?」

 声が震えていた。美しさに圧倒されてしまったか?

「あの」

 囁くように小さく、透き通った声が聞こえる。

 女神の声なんてものは聞いた事は無いが、もし聞くことができたのならこんな声なんだろうな。

「猫ちゃんが……降りれなくなっていて」

 指さした先には、枝の先で震える猫がいた。

 やはり俺はロリコンなのだろうか。いやここまでくれば認めよう!

 幼女が困っているのだから助けねば!

「わかった、助けるよ」

「えっ?」

 俺は荷物をその場に降ろし、木につかまる。

 運動ができたのなら、簡単に上り猫を抱えカッコよく降りてこれたのだろう。

 もたもたと木に登り猫を抱えた。

 いざ降りようとしたその時――

「シャァー!」

 猫パンチ。

 あれだよね。猫パンチってテレビとかで可愛く扱ってるよね?

 いやー、俺もね「あはは、パンチすんなって。痛いだろ?」とか言いたかった。でもさ、猫ってさ、爪あるじゃん? しかも人間より鋭いやつ。肉食獣のそれだもん。

 もうパンチじゃなくてさ、クローだよね。肉引き裂いたもん。ほっぺた痛いもん。

「いってえぇぇぇぇ!」

 落下。

 俺は思いっきり尻餅をついた。ちなみに猫は着地成功。礼もなく走り去っていった。

「あはは……ごめんね、猫逃げちゃった」

「だっ、大丈夫ですか? あ! 血が! そこにいてくださいっ!」

 ふと、頬を触ると血が指についた。

 あんの猫め……やりやがって。

 そう毒づきながら女の子を見た。

 水道でハンカチを濡らしていた。

 小さな手でハンカチを絞り、こちらに駆け寄って来る。

 力がないのか、ハンカチは十分に絞られておらず、水滴がポタポタと垂れる。

 残り数メートル。女の子は宙に浮いた。

 正しくは転んだのだ。ほら、公園によくある謎のくぼみに足を取られたのだ。

「あっ!」

 俺は咄嗟に女の子を受け止める体制に入った。『ロリに触るべからず』みたいな掟があった気がするけど、これはやむなしだ。幼女が転んだのだ助けねば! 

ヘッヘ、ラッキー!

「――あれっ?」

 瞬間的に何かを感じる。

 やばいっ! 女の子の勢いが速い!

 直後、時が止まった気がした。

 女の子はそのまま俺を押し倒し、覆いかぶさる形になった。

 ハッキリと状況を掴んだ時には、もう俺達はキスをしていた。

「「――っ!」」

 触れ合う唇。

 熱と熱が伝わり、青い瞳が目の前で輝く。

 やばいやばいやばばばばばばばばばば!

 えっ?! どうしてこうなった?

「ごっ! ごめんなさいっ!」

 俺が思考を纏める前に女の子は立ち去ってしまった。

 おいおい……一体何だったんだ…?



 そして話は戻る。

「お忘れですか? 貴方様がお嬢様と交わした契約を」

 ダンディなおじさん……恐らく執事であろう男性がそう疑問を投げてきた。

「契約って? まさか?」

「はい、接吻でございます。記憶にございますよね?」

 やっぱりかぁぁぁ! ですよねぇぇぇ!

 俺は頭を抱えた。

 隣で姉が一族の恥を見るような目で見ながら、開いた口を手で塞いだ。

 事故なんだって……。

「あのですね? まず俺は……その子……えっと」

 金髪幼女に視線を移動した時、名前を知らないことを思い出し、セリフが詰まった。

「申し遅れましたっ! 私、リリィ・ロペスと申します! 九歳です!」

 九歳ぃ?! 落ち着け。

「リリィさんのこと何も知りませんし、そのー……接吻の方も事故でして」

「はい?」

 声のトーンが明らかに下がり、鋭い視線が刺さる。

「不慮の事故と言いますか、意図しないこ――」

「ほう? それはロペス家伝統の契約方法を、侮辱すると言うことでよろしいですか?」

 明らかな敵視。

 視線を合わせるだけで寿命が削られるような、魂を吸い取るような敵視だ。

「えっ……えっと」

「リリィお嬢様の『初めて』を奪っておいて事故ですか?」

 『初めて』が明らかに強調され、姉が蔑む視線を送ってくる。

「そっ! その言い方には語弊が!」

「ロペス家を敵に回す……と言うことで?」

 その時、俺の肩を姉が叩き携帯の画面を見せた。

「翔太、あんた死ぬわよ?」

 先程の蔑みの視線といつもの威勢はどこへやら。震えた声でそう言ってきた。

「は? なになに?」

 携帯の画面には『ロペス家、遂に世界を手に』という記事があった。

 あぁ、ロペスか。聞いたことがある。ていうか姉が使ってる携帯も、俺が使ってる携帯も確かロペス社の製品だ。

 『ペンからジェット機まで』それがロペス社のキャッチフレーズであり、ありとあらゆる物を製造販売している。

 おいおい待てよ。よく考えろ。この茶の間にあるテレビも、お勝手にある冷蔵庫も調理器具も照明もインターホンも、俺の部屋にある本棚もノートパソコンも机も布団も……全部ロペス社の製品だ。

 それで? 

 敵に回すのか。

 ハッ!(嘲笑)

 死んだなぁ!(泣)

「ではお嬢様、帰りましょう」

 無駄のない動きで立ち上がり、リリィに手を差し伸べた執事はチラリと俺を見た。

「まままままっ、待ってくだひゃい」

 死にたくない一心で最後噛んじゃったよ。

「どうかなさいましたか?」

「そのっ、結婚のお話なんですがね。僕はまだ十五歳でして、リリィさんも小学生と言うことで……結婚できないのですが? この話は不可能ではないかと」

 極めて無礼の無いように、やんわりと話をなかったことにしようとする。

「婚約という形でお嬢様が十六歳になるまでの六年と少しを一緒に生活をして頂きます。ご安心ください」

 そんなセリフ。

「なるほどぉ……」

 安心したよぉ。

 そうかぁ。年齢を待つ間は一緒に生活かぁ。

「んな! 一緒に生活ぅ?」

 このジジィ、さっきからわけわからんことしか言わんぞ? 頭おかしいのかね?

「貴方がお嬢様との婚約をされるのであればすぐにお部屋は手配致します」

 考えろ…俺……。この幼女は九歳だ。年齢一桁の子と一緒に暮らすとか通報される。

ましてや婚約してまーす! とか笑えないぞ? 六年……。六年もあればこの子の気が変わるかもしれないし、何かしら状況が変わるかもしれないな……。てか、それに賭けるしかないよな。

「わ、わかりました。婚約の件、受ければいいんでしょう?」

「嫌々婚約されましても……」

「喜んで! リリィちゃん! さあ! 同棲開始だ!」

 リリィという幼女はパッと笑顔になったが、姉の目は人間を見るそれではなかった。

 後悔はない。だって死にたくないもん。『すみ☆ロリ』が完結するまで死ねない!

 ロリコンだけどさ、嬉しいって感情よりも困惑が大きいよ?

 しかも相手は世界を股に掛ける一族だ。普通に相手したら死ぬかもしれん。

 ……俺の人生。どうなるのかなぁ?


こんにちは、

下野枯葉です。


こういったギャグ系のお話を書くのは初めてで、すごくワクワクしながら書いています。

えぇ、楽しいですね。


さて、このお話の主軸となるのは主人公と金髪幼女です。

作者は金髪幼女が大好きで、こんなお話を書いています。

なので、金髪幼女が嫌いになったらお話は終わってしまいます。

ちなみに、そんな未来は訪れないですが。


次回から様々なイベントと、ギャグを取り入れながら書いていこうと思います。


では、今回はこの辺で、



最後に、

金髪幼女は最強です。

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