この生活にも慣れてきまして.3
ロワと初めて会った次の日、わくわくしながら森へ行ってみると
ロワは少し驚いた顔をしていた...気がする。
ある程度だったら分かるけれど、やっぱり動物の表情って分かりにくい。
この森にはもちろんロワ以外の動物達もいて、時々ではあるけれど
一緒に話したりしている。
今まで自分が動物と話をすることができるなんて知らなかったから、
毎日一緒に話したりするのはとても楽しい。
ちなみに、本当は村にいる牛や豚とも話をすることはできる。
出来るのだけれど...ちょうどある豚さんと話をしていた翌日に
その豚さんが食肉として捌かれた。
不幸か幸いか、牛や豚がいる小さな牧場は村の端にあり、
それ以来僕はそこに行っていない。
体が成長すればこうやって幼児の思考に翻弄されることもなくなるのかもしれない。
そうしたら、食べるという行為も割り切ってすることができるかも。
が、今は無理だ。
『ロワ様がこんなに穏やかな気を放っていらっしゃるのは何年ぶりかしら』
『随分と珍しいことだわねぇ』
奇抜な色をした兎に似た生き物が、鼻をモヒモヒさせながら何か話している。
嬉しいことなのだろうか。心なしか、声が弾んでいる気がする。
「ロワのことはなしてるの?」
花輪を作る手を止めて聞いてみると、耳が垂れている方の兎が、
『この人の子のおかげだわねぇ。良いことだわねぇ』
とまた嬉しそうに話す。
ロワは本当にこの森の皆に好かれているんだなぁ、と嬉しい気持ちになりながら
その兎達を撫でていると、いつの間にかロワが後ろに来ていた。
『ねぇ、そいつら撫でるより、僕を撫でてよ』
少し拗ねたような口調がなんだか可愛くて、ついつい顔がにやけてしまう。
まだ作りかけの花輪を頭に乗せてやると兎達が、
『美味しそうな花だわねぇ。食べたら駄目かしら』
『私たちが食べちゃったらロワ様はがっかりしちゃうんじゃないかしら』
とモヒモヒ相談を始めて、それがまた面白くてロワを撫でながらケラケラと笑った。