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解剖、ダメ、ゼッタイ.1

ふいにミケさんがにこりと笑う。


「動物とお喋り...なんてフミヤ殿は可愛らしいですね。

さて、そろそろ王都に戻る準備をしましょうか」


そして拍子抜けするほど普通の口調で、僕にそう言った。


そこではたと、ミケさんの前でアイレとも喋ったことを思い出す。

そうか、また独り言の多い奴だと勘違いされただけか。


ホゥと息を吐き、準備のためにロワと一緒に家に戻る。



「旅なんてしたことないから分からないけど、準備はこれくらいでいいよね」


必要そうなものを自分なりに選んで詰めると、しきりに部屋のものの匂いを嗅いでいたロワが

顔を上げる。


『フミヤ、さっきは大丈夫だったみたいだけど気を付けなよ』


もちろん、と頷く。けど、そこまで過敏になる必要はないんじゃないか、というのが本音だ。

初めてロワと喋った日、僕はそのことを両親に話したけれど大して驚かれなかったし、

この世界で動物と喋るのは別に珍しいことではないだろうから。


そう暢気に考えていた僕は、次のロワの言葉で真っ青になることになった。


『僕らと喋れる人間なんてフミヤだけだからね』



「準備終わったみたいですね」


ミーシャさんと一緒に何かを話し合っていたミケさんが、僕に気付いたのか声をかけてくる。


「......はい」


消え入りそうな声でそう答える僕に二人とも怪訝な表情になるけれど、それを気にする余裕は

今の僕にはない。

まさか僕以外に動物と喋れる人がいないなんて。

しかも、それに驚いた僕を見たロワは呆れたように、


『自覚してなかったんだ...。人間は自分達と違うものがいたらすぐに切り刻んで殺すんだろう?

気をつけないと』


と妙にシビアな口調で言った。

僕があまりにも怯えたものだから、そんなことが絶対に起こらないように守る、

と言ってくれたけど、やっぱり怖いものは怖い。


号泣する父を慰め、衣食住の心配をしてくれる母に礼を言い、僕たちはいよいよ家を出た。


アイレと待ち合わせをしていた森に着くと、ほどなくしてアイレが出てきた。


『あれ、あの気色悪い格好するのやめたんだ』


『森の中ではあれの方が動きやすいが、そのままでは人間の都に乗せていけんのでな。

...して、何故お前がいる。そのみょうちきりんな姿も気になるが』


二人のやりとりを黙って見守る。

すると、アイレが今度は僕に話しかけてくる。


『和解できたのはまぁ、おめでとうと言っておこう。しかし、何故この獣はこんな姿を

しているのだ?』


説明をしようと思ってアイレの目をじっと見るけれど、もちろんそれでは伝わらない。

何も言わない僕を不審に思ったのか、アイレがまた何度か声をかける。

しかし、さっきロワが言っていた言葉がちらつき、答えることが出来ない。


ちらりとミケさんとミーシャさんの方を見る。

この二人の前ではさんざんアイレと話した。それでもここまで大丈夫だったし、別に今急に黙る

必要ないんじゃないか。

ちょっと待て、アイレに乗せてもらった理由には納得してもらってなかったみたいだし、

やっぱり喋るのは危険かもしれないな。

いや、そんなことを考えるってことは二人を疑ってるってことだ。この二人が僕を

こ、殺したりなんてするわけ...。


「見つめあっている所申し訳ないのですが、いい加減出発しませんか?」


あまりに待たせたせいか、少し困ったようにミケさんが声をかけてくる。

別に何か他意があっての言葉というわけではないだろう。それなのに、僕の緊張は一気に高まって

しまった。

そして、


「解剖はイヤだぁーッ!!」


僕は思わずそう叫んでいた。

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