エクスカリバーはとってもおもいとおもいました.2
剣の説明を一通り済ませた王は、僕に剣を抜くように促した。
選ばれた者はその剣を抜くことが出来るが、そうでないものはいくら力を持っていても
絶対に剣を抜けないらしい。
「早くしていただきたいのだが」
苛立ちを紛らせた声で大臣が言ってくるけれど、僕は今動けないでいた。
『いたずらにこの剣に触れるものには、必ず災厄が訪れるだろう』
デカデカとエクスカリバーと書かれた、あの気の抜ける看板。
よく見ないと分からないんだけど、とても小さな文字で怖いことが書いてある。
「あ、あの、やっぱり僕辞退していいですか?」
振り返ってそう言ってみるが、無論誰も首を縦には振ってくれない。
王は少し怪訝な顔をしているし、大臣の眉は今やギリギリと上に引きあがっている。
ミケさんとミーシャさんは...あっ、目を逸らされた...。
こうなったらしかたない。覚悟を決めて剣の柄を握ろうとする。
しかし、その時ふと考えた。
剣を触るフリをすればいいのではないか、と。
...いや、近くにこんなに人いるんだし、ちゃんと触ってないって絶対にばれるんだけどね。
大真面目に馬鹿なことを考えた僕は、エクスカリバーが刺さっている位置より
ずっと左にそれた方に手を伸ばした。
「...これは!?」
大臣の困惑した声に驚き、怖くて細めていた目をちゃんと開く。
あ、それたつもりだったけど、やっぱり剣に触っちゃったんだな。
自分の手がひんやりとした剣の柄を握っているのを見て思わずため息がこぼれてしまう。
でも、赤い石なんて柄に埋め込んであったっけ...。
「どういうことだ、剣が二本あるぞ!!」
その声に思わず自分の手元を二度見する。
一振りの剣を持っていて、そしてその右側に...剣がもう一本?
「フミヤ殿、一度こちらに戻ってください」
緊張した声でミーシャさんが言う。
その後ろでは、王達が本物の剣がどちらか議論をしている。
改めて見てみると、最初に刺さっていた剣よりもこちらの方が装飾が華美な気がする。
あ、それよりとにかくここから離れないと。
柄から手を放そうとした。しかし、自分の意思とは裏腹に手に力が入る。
そして、そのまま勢いよく上のほうに引き上げられた。
困惑する僕をよそに、ピシリと足元で音がする。
剣が刺さっていた岩に一気に広がっていく亀裂。
止めようにも止める方法がなく、そしてその結果、
「あの、剣...抜けちゃいました」
ずしりと、武器の重量を腕で感じながら僕は情けない声でそう言った。