現在地不明。イタイ人と遭遇.1
臨死体験をしたことがあるという人たちは、神と対面したのだろうか。
だとしたらきっと、誰か一人はあの顔面を殴ってくれた人もいるだろう。
身体がどこかに落ちていくのを感じながら、そんなことを考える。
事の発端は少し前____。
誰かに呼ばれたような気がして目を開く。
見覚えのない真っ白な部屋。そこで僕は眠っていたようだ。
寝過ぎてしまったようで、少し頭がガンガンする。
ふらふらと立ち上がると、何かに当たった。
...なんでこんなところにマネキンが置いてあるんだろう。
妙に精巧に作られたそれを見て、首を傾げる。
するとマネキンの目が動いた。声にならない悲鳴を上げて、後ろに飛びのく。
む、無機物が動いた。どうなってるんだ。
動揺していると、いきなり どこからともなく無駄に偉そうな声が聞こえてきた。
「ふん、神である私に恐れをなしてしまうのは無理もないが、さっさと挨拶の
一つでもしたらどうなのだ。矮小なるものよ」
喋っているものは目の前のマネキンだった。
いや、これマネキンじゃない。生き物だ...。
あまりに整いすぎたその顔に、感嘆とも恐怖ともつかない感情を抱きつつも、
先程のコイツの言葉を脳内で反芻する。
神?矮小なるもの?イタイ人なのだろうか。それもかなり手遅れ感のある。
「すみません。不審者に遭遇したときの対処法を習ってないので、
出直してもらえませんか?」
試しに丁重にお断りの言葉を述べてみる。
しかし効果はない!
さて、困った。
しばらく両者ともに沈黙していたが、ついに相手が折れた。
「しかたない。矮小なるものは頭もちんけな出来と見える。私が直々に
ここに至った経緯を話してやろう」
そうムカつく前置きをして、神()が語った内容は、要約すると
こんなものだった。