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71話 マンなホール

 俺は長くて丈夫な板を手に入れ、そこへロープを括りつけ、更にそのロープと丸いストーンのロープを繋げることにした。ブランコのようなものだ。

 繋げた丸いストーンは2つで、これに俺とゆーな、ごくまろとくしまシュシュが乗る。落下速度はなかなか速いが、着地で耐えられないほどじゃない。もしものときは俺が直前に他の丸いストーンへ飛び移る。

 やはりひとり1個の石よりもずっと速い。あっという間にさっきの場所を越えて行った。


 途中でレクシー様やちとえりとすれ違った。あいつなんか文句言ってたが無視だ。

 この分だと予定よりも早く楽に到着するだろう。




「勇者様、底が見えました!」


 20分交代で下を見ることにしていたところ、当番のとくしまが叫んだ。


「やっとか。底ってどうなってんだ?」

「……すみません。底ではありませんでした」

「どういうことだよ」

「水面が見えます」


 おっとそれは……良いとも悪いとも言える。着地のダメージはなくなるが、ずぶ濡れになってしまう。


「あー……勇者様、私わかっちゃいました」

「ほう、とくしまの意見を聞いてやろう」


「下にあるのは多分、浮航水の元なんですよ」

「ほう?」

「それで丸いストーンの内側にはそれと反応すると浮航水になる成分があるんですね」

「……なるほど。それで石に水が吸われ、内側まで達したら浮きだし、上へ行くほど乾いていきやがて落ちると。さすがとくしまは賢いな」


 頭を撫でてやると嬉しそうな顔をした。やはりファッションMか。


「ゆ、勇者様! 私だって今気付きました!」

「そりゃとくしまが言ったからだろ」


 ごくまろが恨めしそうな顔をとくしまに向ける。だがとくしまはそちらを見ないようにした。


「とくしま! こっちを見なさい!」

「今勇者様に撫でられて忙しいんです」

「忙しいというのは仕事をしている人だけが言っていい台詞です! それともあなたの仕事は勇者様に撫でられることなんですか!?」

「はい」


 ごくまろは驚愕した。こいつ、さらっと俺に撫でられることを仕事にしやがった。さすがとくしま恐ろしい子。

 そしてごくまろは悔しそうな顔を俺に向ける。そんな顔をされても知ったことじゃない。


「なんだよ。なにか言いたそうじゃないか」

「勇者様が悪いんです! なにを馴れ馴れしくとくしまを撫でてるんですか!」

「馴れ馴れしいのはお前だろ。だってこいつもお前も俺のメイドなんだぞ」

「メイド相手だからといって馴れ馴れしくしていいなんて法はありません!」

「は? メイドは物なんだろ?」


 ごくまろはミッフ○ーみたいな口になった。でもあれって実はVが鼻なんだっけか?


「そんなことよりもう着くぞ。とくしまは確か泳げなかったよな?」

「はい」

「んじゃ玉を上手いこと横穴へ向けて飛び降りてくれ。シュシュは?」

「浮くことくらいしかできませんわ」

「それ以前にその恰好じゃ泳げないか。ゆーな、泳げるか?」

「あしつかないといやー」


 俺以外全員駄目か。

 仕方なく俺は板にぶら下がり、足を大きく振ってブランコの要領で横軸へ移動させる。落下速度と横方向への移動を単純に計算したところ、あと一振りでいい具合に穴へ着ける。


「させないねえええええぇぇぇ」


 謎の音とともに、上からもの凄い速度でなにかが丸いストーンへ直撃。パァンという衝撃音と共に赤黒い液体が飛び散った。


「なんだぁ!?」


 なんだもなにも、きっとちとえりが落下してきたんだろう。残骸しかないから確実ではないが。

 てか今の衝撃で丸いストーンが1つ割れてしまい、バランスを崩した。


「やべぇ、みんな掴まれ!」


 ごくまろたちはロープや板にすぐしがみついた。だが丸いストーン1個じゃ俺たち全員の重量に耐えられない。かなりの速度で落ちていく。

 こうなったら水に落ち……駄目だ、水面が汚染されている。飛び込んだとしても、あの汚物を口に一切入れず水から出て来られる自信がない!


「勇者様! 揺らさないでください!」

「もうやぶれかぶれだ! 全員死ぬ気でしがみつけ!」


 もっと壁に寄って壁へ足を付けて減速させる。それしか方法はない。

 ぐっ、靴底がやばい。足が耐えられるかどうかも不明だ。だけどそれはあとでレクシー様に治してもらえるからいい。あの汚水にだけ入らなければ……。


 と、突然水面が盛り上がり、ざばあと音を立ててなにかが現れた。


「あなたが落としたのはこの金の肉片ね? それともこっちの銀の肉塊ね? さもなくば──」


 俺は飛び降りちとえりの顔面に蹴りを入れ、その反動で横穴に着地。俺がいなくなったことで減速したごくまろたちをキャッチし穴に引き入れる。


「な、なにすんね! ひとが折角──」

「お前のせいだからな! 折角もクソもあるか!」

「セッ○スにクソがあってもいいと思うね!」

「そんな趣味ねえよ!」


 ほんとこいつどうすれば死ぬんだ? 地獄のガンマンにでも撃ってもらわなきゃ駄目かね。



「それで勇者殿、これからどうするね」

「決まってんだろ。レクシー様が降りてくるのを待つんだよ」


 レクシー様は今きっとひとりで心細いはずだ。そして降りて来たところで俺を発見。嬉しさのあまり丸いストーンから飛び出す。それを俺がキャッチし、熱い抱擁。


「勇者殿、またなんか変な妄想にひたってるね」

「んなわけあるかよ。ひとりだけで心細くないかなって心配してんだ」

「いくら心細くても勇者殿に飛びついたりはしないね」


 ちっ、そんなことわかってんだよ。わかっているからこそ妄想の中くらい好きにさせてくれよ。


 ……ん? 今更だが、よく見ると壁に巨大なホチキスの針のようなものが壁に並んで刺さっていることがわかった。

 梯子のようなものだろう。あれで数十キロ登れるとは思えないが。


「なんかマンホールみたいな感じのがあるぞ」

「まんの穴ね?」

「ちげえよバカ。マンとホールで分けるんだよ」


 ひとが出入りする穴という意味だっけな。


「ひとの穴……やっぱまんの穴ね!」

「ひとが通るための穴だ」

「まんの穴だって赤ん坊が通過するね! 大人だって体の一部を」

「もう黙ろうな!」


 余計な話をするんじゃなかった。だけどあの梯子がどこまで続いているのか少し気になる。

 レクシー様が降りてくるまで予測ではまだ時間があるから、ちょっと行けるところまで行ってみよう。


「ごくまろ、任務をやろう」

「つーん。私はモノなので聞こえませーん」


 だからつーんってなんだよ。それに今どきの物はちゃんと人の言葉聞いてんだぞ。尻とかエ○パーたんとか。


「しゃあない。とくしま」

「私の仕事は勇者様に撫でられることだけです」


 このやろ、とうとう限定しやがった。てか撫でられるだけでいいってどんな愛玩動物だよ。

 しかしこうなるとやはり自力で調べに行かないと駄目っぽいな。


「おほほ、ここで真打ちの登場ですわね」

「じゃあお前ら待ってろ。ちょっと見てくる」

「ここはわたくしの出番ではなくて!?」

「やだよ。だって絶対エロいことしろとか条件付けるんだから」

「当たり前ですわ! この機会を逃してたまるかというものですわ!」


 だから最初から省いたんじゃないかこの色情魔め。


 これ以上こいつらと話して時間をかけても意味ないから、無言で梯子状のものへ手をかけた。


「勇者殿、ほんとうにひとりでイクね?」

「誤解を生むようなこと言うなよ」


 さて、なにか面白いものでもあればいいけどな。

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