6 精霊召喚
更新できず、すいませんでした。
遅くなりましたが、更新させてもらいます。
(…君は、フェードで良いのかな?)
思念でコミュニケーションを試みる。流石にずっと喋ってるところを両親に見られるわけにはいかない。
そんなところを見られてしまったら、俺たちの、私たちの子供は天才だー、よー!って叫びながら村を五週くらいする人が居るからだ。
「酷いですわ、お父様。お父様が与えた名前を確認するなんて」
(それは謝るけど、仕方ないだろう。さっきまでフェードは姿がなかったんだ。確認はしないと)
「慎重なお父様。けれど、なんて凛々しいお姿…フェードはお父様の姿を見ているだけで、興奮が抑えられません」
真顔でなんてことを言っているんだ。こちらとら産まれて1年くらいの赤ん坊だぞ。
フェードは今姿を得たばかりだと言うのに、12,13歳くらいの少女の姿に視える。
そんな子が2歳の赤ん坊を見て凛々しいと口にするなんて、どんな冗談だ。
しかし、フェードの姿を見れば冗談で無いことがわかる。
だらしなく、締まらない表情。恍惚とし、上気するほど熱い呼吸が感じ取れる。
え、この子産まれたてなのにどれだけ感情豊かなの?
「…新たな精霊が産まれたわね。潜在能力だけなら私も上回るかもしれなわね」
今まで黙ってみていたシルフィがフェードを見ながらそんな言葉をこぼした。
「…あら、黙っているから消えているかと思ったけど、なにかしら。お父様を守護するのは一人で十分よ。あなた、消えて良いわよ」
フェードは喧嘩腰でシルフィに言葉を返す。
「うふふ、あら、まだ幼い幼虫にも満たない程度の存在の虫けら未満のあなたが私に喧嘩を売るの?それと、一人?数え方を間違えているわよ。精霊の数は柱。もしかして、あなたは自身のことを人間だとでも思ったの?とんだお笑い草ね」
笑えない冗談ねとシルフィも売り言葉に買い言葉を返す。
「…やはり気に入らない。見た瞬間に相容れないと理解できたわ」
「一応、彼が父親なら、私が母親に当たるはずなんだけど」
フェードは深い息を吐く。
「だからじゃない。私にとってお父様は至上の存在。それなのにてめぇのようなババァに汚されたとなったら許せる訳ないだろうが」
口調が変わっているよ、フェード。
そして生まれてこの方、最大の殺気を肌に感じる。
シルフィの顔を見た瞬間に戦慄する。
あぁ、人はここまで怒ることができるんだと感じさせられた。
「成る程、納得の理由だわ。なら、かかってきなさい。私が世界を教えてあげるわ」
「死ねや」
清楚な姿に反して、シルフィに容赦のない言葉を投げかけるフェードは
「…すいませんでした」
わずか五秒後に謝罪することになった。
「素直なところは父親に似てよかったわね。私に似ていたら血で血を洗う戦いになっていたわ」
怖いよ。一切口を挟めないよ。
フェードを椅子代わりにして、紅茶を楽しむシルフィの姿は美しい彫像のようだった。
…この彫像を作った人は大分性癖が歪んでいそうだけどね。
「すいませんでした。シルフィ…さん」
「あら、お母様でも良いわよ」
「誰が呼ぶか」
そこは逆鱗なのだろうか、再び好戦的な表情を取り戻すフェード。
ただし、シルフィが上に乗ったままなので、一切様にはなっていないが。
「可愛い子ね。さすが私たちの子にして、新たなる真祖」
(真祖?後なんで、僕たちの子になってるの?)
「あら、知らないふりをするの?可哀想なフェード。あなたは認知されていないみたいよ」
「お、お父様ぁ…」
途端、フェードは涙を浮かべる。涙目ではなく、涙が既に頬を伝ってこぼれ落ちている。
水の精霊なのかと思わせるほどの大滝である。
「この子、フェードはね、私とあなたの魔力や残留思念から産まれた精霊なのよ」
(僕らの…魔力や残留思念?)
「そうよ。本来、自然発生する真祖は世界の影響を受けて、発生する。私もそうだったしね。けれど、この子は違う。世界ではなく、私とあなたの力の影響を受けて産まれた子。この世界で初めての、世界からの影響を受けずに産まれた真祖」
(そもそも、真祖って何?)
「そこから?…そういえば教えた覚えがない。仕方ないわね、簡単に説明してあげる。真祖というのは、自然発生した精霊や存在を指すの。魔力の吹き溜まりとか、強い残留思念から産まれる世界の意思のことね」
シルフィは人差し指をぴしっと立てて
「例えば、人間同士が番になって産まれた子は真祖ではない。真祖というのは親と呼ばれる存在が普通は存在しない。真祖は、無から産まれたモノということだからね」
シルフィはこちらを見つめて
「私は真祖だけど、通常通りの世界の意思から産まれた真祖だから、この子、フェードとは異なっているわ…違うわね、フェードと異なっているというよりも、フェードが私たちと異なっているという方が正しいわね。この子はこの世界で初めて、世界を親としない真祖として産まれたんだから」
シルフィはフェードに手を伸ばした。
「フェード、あなたは父親である○○に力を貸しなさい」
「わかっているわ。当たり前じゃない」
フェードは力強い瞳で、シルフィを睨み返す。
「…それで良いわ。あなたは…本当に私に似ている」
「巫山戯るなばばぁ」
この日二度目の妖精対戦が始まり、十秒後には再びフェードが椅子となっている姿を見てしまったが、さして重要なことではないだろう。
二人とも楽しそうにしている、椅子になっている方も、椅子にしている方も。
微笑ましいものだと、笑ってしまっている己の感性にも苦笑を禁じ得ないが、満更でもないものだ。
だが、生後数分の我が子(仮)を椅子にしてしまうのはいかがなものかと思う。一応父親役としては母親をなだめる必要を感じる。そんな教育は良くないのではないかと。
(シルフィ、フェードを椅子代わりにするのは止めよう)
「お父様…。結婚してください」
何を口走っているのだ、我が子(仮)は。
とりあえず無視することにした。
「フェード、それと僕のことをお父様と呼ぶのは止めてくれ」
こちとら生後1年の赤ん坊だ。どうやって子供を作るというのだ。
「それでは、なんと呼べば?」
「僕の名前は、アレックス。アレックスと呼んでくれたら良い」
ようやく主人の名前を初公開。
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