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警告の美女

モノローグ

〜人の心を海とするなら 私の恋は

水面の笹舟(ささぶね)のようなものだろう

とても弱く(もろ)曖昧(あいまい)で 取るに足らない障害さえ

足が(すく)んでしまう


きっと私は待っているのだろう

私を太平洋まで連れ去ってくれる何かを

掴み所のないさざ波のような誰かを〜




口は災いの元という言わずと知れた慣用句があるが、なかなかどうして馬鹿にしたものではない。

まさか、そんな世の何処にでもありふれた言葉が実際、自身の身にここまで重くのしかかるとは、

博学多才(はくがくたさい)のペルセウスには、知る由もなかった。


母を奴隷とされ、傲慢な郷里(きょうり)の王からその解放を望むペルセウスにとっては、

王の祝宴(しゅくえん)での進呈(しんてい)時は、踏み絵を強要されるキリシタンのような気分だった。


人生の岐路(きろ)に立たされた勇者のとった選択は、

神話史上類を見ない悪手だったろう。



「メデューサの首を献上(けんじょう)しましょう……」



メデューサ。

ゴルゴン三姉妹の一人で髪の毛の一筋一筋が蛇という醜悪な怪物。

その顔を見たものは、あまりの恐ろしさに石になってしまうという。



それでは、この数奇(すうき)な物語をここに語ることとしよう。




夜討ち朝駆けなど真の男がすることではないことなど百も承知であるが、

ことここに至って、手段など選べる余地があるはずがない。

メデューサ相手に正攻法での伯仲戦(はくちゅうせん)など正気の沙汰ではないが、

それでも一片の罪悪感を抱かないにしては、彼は少し品行方正(ひんこうほうせい)すぎた。



場面は、壁一枚を隔てデューサの寝室の前。


震える手を必死に勇め、

勇気一番、鷹のように勇ましく寝室に飛び込む。



「ペルセウル参る!!」



ペルセウスの突入した部屋には、

メデューサの姉と思われる亡骸に縋り付き泣き震えるメデューサの姿が…….。


「姉さん!目を覚まして… 私をおいて何処に行くの……

私を独りにしないで…………」



現状の把握ができず立ち淀むペルセウス。

背後の気配に気づき振り返るメデューサ。


「誰!?

お金なら一週間後には、必ず返します。

今日は… 今日のところは、どうか堪忍してください……

あぁ〜ぁ(泣)姉さん…姉さん……」


「え〜と…… 借金取りじゃないです。勇者です。

なんか……すいません。こんな時に……」


「・・・

え!? 借金取りちゃうん!?

先、言ってぇーや。

この魂震わせる号泣必至の茅野○衣さんも驚愕の神芝居が水の泡やん!

あ○花のアナ×も尻(すぼ)みやん!!」


日本全土に感動を(さそ)った最高峰のアニメを例えに出し、

態度を光の速度で急変させるメデューサ。


「私の心配と全アニメ好きの感動を返して!!

そして何気にキャラクター名に掛けて上手いこと言わないで!

登場直後に世界観を全否定する発言は、謹んで!!! 」


「で、何? 勇者? やったっけ?

縦並びでパーティー連れ回すヤツやな。

こまめにセーブしとけよ。」

「ドラ○エじゃねーよ!! どんだけ偏った勇者観持ってるの!?」



呆れながら咳払いを合図(あいず)に取り直し、


閑話休題(かんわきゅうだい)…。

あなたの命を頂戴(ちょうだい)しに参りました!!」


「ほぉ。俺を殺すと。

お前にできるかな。」



不敵に笑い、その眼には先程のものとは、打って変わって絶対的な殺意を湛え、

ペルセウスの体に奔流(ほんりゅう)のように死の恐怖が流れ込む。




「あかん!!

深夜アニメ始まる!!

え〜と…… ちょっと!! 校舎裏で待っとけや!!!!」



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