1話:転生
まだ短いです。
真っ白な……何も無い空間。
そんな場所に彼、征刃 龍一は漂っていた。
姿は光の塊。よく見ると、少しだけ光の強弱が変わっていて点滅しているようだ。
「こんな所にいたのですか」
その男は何もなかった空間に突如現れた。
黒一色のスーツにズボン、手袋、山高帽子。身に纏うもの全て黒ずくめの異質な存在。
「誰です?」
唐突に現れた男に驚く事すらせず、感情が見えない冷たい声で龍一は異質な男に尋ねた。
「おや?驚かないのですか」
少しだけ、ほんの少しだけ驚きの感情が声に現れた。
「驚きには慣れている。それに元々、俺に感情は僅かしかない。
そして質問に答えろ」
男は少しの間、沈黙した後口を開いた。
「……私は神です。
ところで、あなたは死にました。ですが転生してもらいます」
そう、龍一は死んだ。死の後は、無だけだ、と龍一は思っていたのだがどうやら違ったようだ。
その証拠に龍一は体こそ失ったが、自我や意識はあり、自由に動ける。まぁ、どこに行こうが真っ白な空間以外なかったわけだが。
「何故?」
「あのお方の命令だからです」
男は少し困惑しているようだ。
本来、神は人が死んでも関わらない。だが、男は上司に命令されたのだ。
征刃 龍一を見つけて、事情を話し、転生させろと。
その時上司は言っていた。これはあのお方の命令だ、龍一に失礼な態度をとると殺される、と。
あのお方。それは神々の観察している世界の一つの地球で生まれた神を超える存在。
この世が出来て、神が出来たその後何百兆年。いろんな世界を神々は造った。
その世界でいろいろな生物が生まれ、死んでいったが、神を超える存在は現れなかった。だが神々からしたら僅かな時間。16年前に、それは生まれた。
それが生まれた星の名前は地球、それは神々が237番目に造った世界の中にあった。
その世界は宇宙と名付けられた無の空間。計るのさえ気が遠くなるような広さがあった。それを神々は僅か1メートルに圧縮した。神々(そと)から見ればたった1メートルだが、中に入ると気が遠くなっても端が見えない広さなのだ。
その宇宙に数多く存在する星の中で唯一生命が存在する星、それが地球である。
今から16年前に生まれた女の子は突然変異の存在、神を超える存在だった。
神々は自分達を超える力を持つ存在を消そうとしたが、出来なかった。その力の大きさは神の力の何百倍から何千倍。
そのほとんどは、器の小さい星だったおかげで未覚醒のままだった。
その女の子は16年間生き、ある男の後を追って自ら命をたった。
だが神を超える存在がそう簡単に死ぬわけがない。神々が住まう世界、神界に来て転生という手段があると知るとその女の子は神々に命令した。私と彼を転生させなさい、と。
「あのお方っていうのは誰か知らないけど、痛くないように頼む」
龍一がそう言った途端男が指を鳴らし、光の塊は消えた。
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