プロローグ:幼馴染み
俺こと征刃 龍一と幼馴染みの夏森 悠子はいつも一緒にいた。それを望んだのは俺ではなく、幼馴染みの悠子である。
悠子と俺が出会ったのは0歳の時、同じ病院で生まれ同じ病室で過ごしたらしい。勿論、俺は覚えていないのだが、悠子は覚えているらしい。
そして同じ病室で過ごしたという縁で俺と幼馴染みの両親が仲良くなり、家が隣だった事もあっていつも一緒に遊んでいた。
入った幼稚園は3クラスあり、運悪く俺と悠子は別々のクラスになった。クラスが違って一緒に居られない事が分かると、幼稚園に入学する時に買ってもらったオニューのハサミで悠子は自分の手首を切ったのだ。それはもためらいも無くすっぱりと。血がドクドクと流れ出て、悠子は自分の両親と先生を睨みつけながら気を失い、それを見ていた俺も気失った。
気がついたのは真っ白な病院の一室。隣を見ると幼馴染みの悠子がニコニコとこっちを見ていた。
その後、幼稚園は異例のクラス換えを行い、俺と悠子は一緒なクラスになった。
今思えばそれが一番最初の悠子の症状であり、一番軽い症状だった。
悠子の俺への依存はその日を境に加速していった。 4歳になる頃には俺がそばにいないと眠れないようになっていたし、小学校に入る時には俺がそばにいないと何も出来なくなり、俺と一緒じゃなきゃトイレも出来なくなっていた。
もうその頃には、悠子の依存を無くそうと両方の親が頑張っていたが諦め、悠子を俺の家に預けるようになっていた。
トイレも一緒となると俺も恥ずかしさがある。何しろ大きい方も見られるし見なければいけない。見たくないなら顔を背ければいいと思うだろうが悠子は、俺が悠子を見てないと気にくわないらしい。
それに悠子はとてつもなく可愛い。それはもう街を歩いていたらロリコンでなくても誘拐したくなるほどに。なので俺はそれだけでも勘弁してもらうため悠子に土下座したが、コンマ1秒以外の速度で却下された。
小学校では両親が校長にお願いして同じクラスに入れるようにしてもらったし、一緒にトイレをするために教職員用トイレを使っていいとの許可を得た。
小学校に入った時から悠子は天才になった。俺と一緒にいるという条件で。
授業中ずっと俺をニコニコしながら見ているにもかかわらず、テストはいつも百点満点。俺は頑張って勉強したから百点満点。同じ百点という数字を見て、お揃いだねと俺をニコニコして見ていた。
そんな平和な日々が終わり、事件が起こったのは5年生の時、俺はクラス内で悠子の次に可愛い女の子に告白された。俺的には悠子がいるので断ろうかと思ったのだが、すぐ断るのも可哀想かと思い直し、後日返事をすると言って、その日は別れた。
その日、珍しく(というか初めて)悠子は俺を先に帰らせた。
俺はその時珍しいなぁと気楽に考えながら家に帰った。
事件が起こったのはその日の夕方。俺に告白してきた女の子を連れ、悠子は帰って来た。
その女の子は悠子の一挙手一投足に怯えながら、俺の名前を様付けにして呼び、震えて泣きながら俺に告白した事を謝った。
その時も悠子は俺を見ながらニコニコとしていた。
その次の日から俺と悠子は教室で(もともとだが)浮いた存在となった。
悠子が人間を止めたのは中学校に入った後の事だった。
悠子は俺のためなら人間には出来ないことさえも出来るようになった。
俺が、空を飛んでいる人を見てみたいなと、ある小説の影響でそうポツリもらしたら、その次の日に悠子は飛んでみせた。
またある時、念力に憧れていた時にも次の日に悠子は手を使わずに物を浮かせてみせた。
中学校を卒業する頃には、悠子は拳で鉄を砕き、パンチは音速を超え、20階建ての建物から落ちても無傷で、炎を中で眠れ、蹴りで海さえも割った。
そして高校受験に受かった直後、俺と悠子は死んだ。俺は事故で、悠子は俺の生き絶え絶えの姿を見て、自分で自ら命を絶った。
そして、気がつくと俺は転生し、生まれた。悠子という名の双子の妹と共に。