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またまた  作者: よだか
第一章
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37/73

手紙3

お待たせいたしました。

お楽しみ頂ければ幸いです。



-ウルへ


吐く息も白く染まる今日この頃。

あたしもじじさまに会いたかったです。

先日ようやく我が家も冬籠りの準備を終え、一先ずは忙しさから解放されています。


今年はよく育った家畜たちが良い値で売れました。もちろん生きているものも加工され(捌い)たものも、です。

我が家の家畜は日本の動物園のように観賞用に飼育されているわけではなく、我が家の食料であり、大変貴重な財産です。この感覚が根底にあるせいか、大切に育てた家畜の売買、屠殺に関して深く気落ちしたりはしません。

やっぱり生活環境は重要だと思います。

アシュリルと湊は同じだけれど、この世界に生きるあたしは湊とは違うなぁ。当たり前だけど。

湊はグロいのは苦手でした。でもあたしは獣の捌く様子を見ていられるし、兎位の小型の動物ならナンサでももう捌いているので、あたしもそろそろ教えてもらえると思います。

これはとても大事なことです。命を絶つことへの罪悪感が薄れてしまったのかもしれないけれど、前とは比べ物にならないほど“食べ物”に対する感謝を感じています。

生きることの難しさをより一層実感しています。


随分真面目な話をしてしまいましたが、ウルにもわかってほしいのです。命の重さとありがたみを。

これはアルスにも言えることです。タクバク家ではあまり狩りをしないようだったので、我が家のような経験をする機会はそう多くないと思います。でもこの感覚をわかってもらえないなら、ナンサはアルスとは結婚できないと思う。なので、ウルの方から上手いこと伝えてあげてね。


さて、本格的な冬を前にして、我が家におけるマチェイじいさまが大活躍です。

以前よりも火魔法が大いに生活に生かされるようになりました。どうやらばばさまに上手い活用法を学んだようです。前は火種くらいしか使い道がなかったんだけど、電子レンジや暖房のような役割も担い出して、生活が便利になりました。あたしも練習中です。


練習は相変わらずです。

あたしも頑張って、春にはいいところを見せたいと思います。


雪に染まるファルク連合国家首都近郊にて、アシュリル・トウカンより-




-アッシュへ


冬は家に籠ってばかりで暇なので、あまり間を置かず手紙を書いてしまいましたが、さっさと返事を寄越してください。

お前手紙書くの面倒に思ってるんだろう。季節に一枚でいいとか思ってるんだろう。おれが出した手紙に返事すればいいやぐらいに思ってるんだろう。わかってんだからな。


相変わらずの毎日で暇です。去年はアッシュたちがいたお陰で騒がしい冬だったので、あっという間でした。今年の冬はまだ始まったばかりで、アルスも帰ってきていません。

アルスには、アッシュに言われた通り情報を流しています。手紙にとても感謝していると伝えてくれ、とありました。我が兄はまだ本気のようです。


以前手紙で獣人の魔法使用についての話がありました。

本で調べてもわからなかったので、ばばさまに聞いてみたんだけれど、それでもわからなかったんだ。そうしたら、嫌々ながらもばばさまが以前の職場のツテを頼って調べてくれました。


どうやら、獣人は身体能力も魔力に関しても、平均的に人間よりも優れている個体が多いらしい。その生まれつき優秀な能力が彼らの独立を妨げていたんだって。

つまり、個々人の能力が高いせいで軍事面から見れば最強とも言える獣人が、一つの国としてまとまってしまったら、人間は到底太刀打ちなんてできない。当時そう考えた人も多かったみたいで、ファルク連合国家の独立はなかなか承認されなかったらしい。この辺はアッシュも知ってる通り。

それで、身体能力はともかく、魔法ならあえて(・・・)使わないようにすることもできるということで、獣人は自分たちの能力を過剰に誇示しないようにしていたらしい。そんな獣人達の様子を見て、真っ先に反応したのがイファー皇国だった。

この辺の経緯は詳しくはわからないけど、協力に利点を見出したんだろうな。そのくらい図々しくないと、こんな場所で国として成り立たないんだろう。


歴史を辿ると、随分ご近所問題が根深いのがよくわかる。おれ、前は理系だったから、社会苦手だったんだけど、身近な問題なだけに、歴史ってすげー大事なんだなって思ったわ。おれも早く学校に行きたい。


練習はこっちも相変わらず。

今すぐアルスに帰ってきてほしい。相手がいなくて、とっても寂しいです。河の堤防での素振りの回数が増えました。おれも春に向けて一層頑張りたいと思います。


木枯らしが身に染みる皇都の端にて、ウルファス・タクバクより


追伸、木がないせいか、「木枯らし」っていう字面に違和感を覚える-




-ウルへ


もうすぐ年越しですね。

ここは雪は降るけど、それほど積もりません。でも日本の雪国とはいかないまでもそれなりに降ります。なので連日、ナンサと一緒に雪の中遊びまわったり、練習したりしています。

どうやらナンサはあたしのお目付役らしいです。我が家ではそれほどあたしの行動に信用がないみたいです。それもこれもタクバク家に滞在していた時のウルとの行動に原因があるようです。どうしてくれる。


もちろん外は寒いので、長時間ほっつき歩いている訳にはいきません。暖かな幕屋の中で、来春に向けてナンサが一生懸命に勉強しています。あたしもそれに便乗しています。

座学では文字の勉強や簡単な計算、それと歴史を学ぶんだけど、歴史というのが厄介です。日本みたいに、イファー皇国の歴史とかファルク連合国家の歴史のような国史やそれに関係する歴史を通史のように学ぶのではなく、我が家の歴史を聞かされるの。

誰それがいつ婿に来ただとか、いつ結婚して子がどこで何人産まれただとか、誰がいつ亡くなっただとか。そんな話に交えて国の歴史を学びます。それもその当時いた国のことを当然よくわかっている訳だから、時代によって教えてもらう国もバラバラ。わかりにくいったらありゃしない。


でも一つ所での生活を営まない遊牧民にとって、滞在する地域の安全と快適さは大切でも、国の歴史があまり必要ないって考えられていたのかも。それとも、後々に残す必要がないって思っていたのかもしれないね。


これを話してくれるのはイドリースじいさまでね、代々伝えていくものらしいよ。

これを歴史の授業だと思わず、物語を淡々と聞くだけだと思うとそれなりに面白いかな。我が家は騎馬遊牧民としても活躍してたみたいだから、英雄譚のような話も色々あって、心底そんな時代に生まれなくてよかったと思いました。

まぁでも、歴史の勉強にはならないね。


ナンサと共に練習は順調です。

ナンサは体術が一番得意みたいで、全然勝てません。柔道みたいに軽やかな動きに翻弄されます。きっとアルスよりも強いので、かなり頑張る必要があると思います。あたしもウルもアルスもね。


年の瀬間近のファルク連合国家首都近郊にて、アシュリル・トウカンより-




-アッシュへ


あけましておめでとう。

こうやっておれは新年早々手紙を書いているけれど、きっと返事がくるのは春も近づいてからなんだろうなぁ、って思ってます。

いいんだ。気にするな。そういうものだってわかってるし、家族にこの文句を言ったら、可哀想な目で見られたから、もうおれは何も言わない。


ところで、今年も新年の運試しをしました。

今年は、ばばさまが狼二匹と天馬と龍を魔法で作って、動ける家族全員でやりました。

ばばさまの作ったものがあまりに精巧だったせいか、信じられないスピードでそれらは駆けて行ったので、誰一人捕まえることができませんでした。今年も頑張ろうと思います。そして来年こそはとナーシャと一緒に決意しました。


ちなみにばばさまに聞いたんだけれど、我が家みたいに魔法でやる場合って、魔法で作ったものは自然と魔力の強いところに向かいやすいんだって。それで運悪くぶつかる人もいるらしいよ。だからなんだっていうこともないらしいんだけどね。実際害のない魔法だからなんともないしな。


我が家でも本格的にナーシャの入学前準備が着々と進んでいます。

最近はアルスに学校のことを色々と教えてもらっているみたいです。この二人はナンサに会いたくて仕方がないみたいです。ついさっきも、ナンサから貰った手紙の量がナーシャの方が多いっていうので、ナーシャが勝ち誇った顔をしてました。まさしくドヤ顔だった。それを本気で悔しがってたアルスがいて、それはそれで心配になったよ…。俺の兄は大丈夫なのかなって。


アルスが帰ってきてからは練習も順調です。

どうやらアルスもおれもそれなりに魔法を使えるようなんだけど、うちには凄い人が二人もいるせいで、全く実感できません。

アルスも学年では魔法だと敵なしらしく、学校で見ても上位五人には入ると言っています。今年の春から第三学年になるアルスだけど、第五学年まである学校でその実力は十分すぎると思います。

それでも帰省してきて、改めてばばさまや母の魔法を見て、自信を打ち砕かれたようです。帰省以来、アルスはとても熱心に練習しているので、俺の相手もしてもらいやすいのでツイてます。


練習相手は同じくらいのレベルの人の方が切磋琢磨できていいな。アッシュはナンサとだろう。今年からすんげー寂しくなるぞ。

この世界がそうなのかもしれないけど、かなりの時間を家族と過ごすせいで、いないっていうことになかなか慣れないんだよなぁ。

やっぱり家族って大切だよな。


雪が降り続く皇都の端にて、ウルファス・タクバクより-




-ウルへ


あけましておめでとう。

最近は暖かくなり始め、雪も徐々に溶けてきています。我が家は明日イファーに向けて出発します。

やはり、そちらへの到着はナンサの入学ぎりぎりになりそうです。アルスも寮に帰るのを少し遅らせたほうがいいと思うよ。皇都のに着いてからナンサの足りないものを買いに行く予定なので、運が良ければ一緒に買い物にいけるんじゃないかな。


ナンサも学校に通えるのを楽しみにしているみたいです。我が家でも頻りにその話題がのぼります。特にナンサは意外にも人見知りなので、知り合いのナーシャとアルスがいることに随分安心しているようです。


ファルク連合国家の首都近郊を家畜に合わせて遊牧してきましたが、それも今日で終わりです。連日長距離移動の日々がまた始まるので、それなりに忙しくなります。ナンサと羊に餌をやりに行ったり、馬を駆けたり、糞を集めて燃料にしたり、色々です。

なので、次に会うまで手紙を返せるかどうかわかりません。一応ちゃんと伝えておきます。


滞在期間はまだ未定だそうです。その後の目的地もまだ決まっていないみたいなので、それが決まったら、また連絡すると思う。


雪解けの始まったファルク連合国家首都近郊にて、アシュリル・トウカンより-


お読みいただきありがとうございました。


すみませんが次回の更新は、来週(19日)か再来週(26日)か未定です。

早めにできれば来週に更新したいと思っています。


これからもよろしくお願いします。

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