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またまた  作者: よだか
第一章
1/73

0.



世界は廻る

時は廻る

人は廻る


君も廻り

私も廻る












 今走馬灯のようなものが駆け抜けた、気がする。

 思い出とも認識していなかった、単なる日常の一コマが濁流となって押し寄せてくる。



 ああ、死ぬんだ。

 そう受け入れてしまえば早くて、強烈な痛みを感じたかと思えばすぐさま視界は暗転し、何も見えなくなる。





 誰よりも長生きしようと決意していた。



 学生時代の友の死ほど、自分で言うのもなんだが、幼い無垢な心への影響の強いものなど存在し得ないと思う。他の級友にまたもやそのような思いをさせてしまうことが、ただただ悲しい。





 もう二年になる。

 大学一年生の時の冬、雪の降る静かな夜に友人が一人儚くなった。



 高校の同級生だった。一年のときに同じクラスだった。出席番号が近かった。そこそこ仲の良い友人だった。

 訃報を聞き、葬儀に参列し、遠目に見た花に埋れた物言わぬ友人と笑っている写真を見て、友人の死を信じたくなくとも実感した。



 かなしかった。

 他の皆もかなしみを心に抱えることになった。



 死という存在の近さに気づき、打ち震え、恐怖した。この悲しみと恐怖から、ただ生きようと思った。何より生きていることを大切にして生きていこうと思った。

 普段は実感できなくとも、ふとしたときに思いだしたそれは、十分に自分を奮い立たさるものだったと思う。





 それがまさか。

 ハンドル操作を誤ったのであろう馬鹿な運転手に撥ねられるなんて。ダイヤモンドよりも固い決意が台無しだ。




 あんな思いは二度とごめんだと思ったのに、自分が人様にそういう思いをさせるようになってしまうなんて。

 あの友人の時ほど皆が皆悲しんでくれるとは思わないが、悲しんでくれる人が一人もいないだなんて思わない。

 だからこそ家族、友人、先輩後輩や近所の人、皆に申し訳ないと思う。



 先立つ不孝をお許しください。

 先に我が級友に会いに行きます。一人じゃさみしかっただろうし。

 天国という存在が本当にあるのかはわからないが、もしあるならば友人と共に皆のことを待っていよう。




 及川湊としてのたった20年の人生。

 静かに幕の降りる音が、何処か遠くで聞こえた気がした。






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